高山植物園でのアート三昧
六甲山と言えばイノシシでしょう。山の中だけではなく、阪急電車の線路を越えてまで出没する身近な存在。人間に害を及ぼす半面、かわいくもある。だから「エサをやらないでください」の看板がいたるところにある。そんなイノシシ界の王が高山植物園にあらわれました。久保寛子の作品『Sleeping Guardian』。体長8mぐらい、ひざまずいても体高3mもある巨体は、青いネットでできている。獣害対策に使われるブルーの金網。皮肉でしょ。悠然と構えたこのイノシシは、人間どもをどう見ているのでしょうか。中に入ることもできるので、イノシシ目線の一端を感じられるかも。
毎年おもしろい大型作品が設置される場所に、今年は楢木野淑子の『あるべきようわ、ムコの山』がドーンと存在している。作品名からは何を意図しているかわからないが、古代マヤ遺跡のような堂々とした風格だ。さまざまな風景や動植物が柔らかい色で浮き彫りされた、陶のオブジェをたくさん組み合わせて高さ2mあまりの円筒に形作られている。その大きさと重量感から遺跡のような第一印象を持ちましたが、近づいてディテールが見えるようになると、華やかで、豊かで、生命力あふれる「生のエネルギー」が満ちていた。
植物園の中ほどの池には、白い舟が浮かんで(半分沈んで?)いる。杉原信幸の作品で『むこのみなと ― 貝の花舟』。あれ?また「むこ」が出てきた。やっと気づきました。武庫(むこ)は古事記などに出てくる尼崎から兵庫にかけての古地名。だから作家さんたちも「ムコの山」や「むこのみなと」などと作品名をつけているのだ。ところでこの作品、舟の外も打ちも瀬戸内海で集めた貝殻でおおわれている。そして中には水も溜まっている。つまり内も外も、海も山上の池も、現実も夢幻も、すべての境界があいまいで、観ている自分の存在も揺らいでくる。
六甲ミーツ・アート 芸術散歩 2017
2017年9月9日(土)~11月23日(木・祝)
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