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2017年10月 7日 (土)

セザンヌとゾラの奇妙な友情

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 マティスが「絵の神様」と崇め、ピカソが「我々の父」と敬愛したポール・セザンヌ。没後110年トいうことで映画『セザンヌと過ごした時間』が作られた。まぁ110年はこじつけでしょうけど、おもしろい映画でした。セザンヌがこんなに激しく野卑でプライドの高い偏屈人間だったとは。パリの画壇から身を引き、生まれ故郷のエクス=アン=プロヴァンスで隠遁したような生活を送った画家。きっと物静かで哲学的思考に耽るタイプだと思っていた。大間違いでした。でも作品からみると、このほうが納得です。

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 大成功した小説家のエミール・ゾラと、名声を得たのは死後だった近代絵画の父セザンヌ。二人は小学校のころから共に遊び激しくケンカをし、芸術家として励まし合い傷つけ合いながら数十年友情を育んだ親友だった。お互いの家族のこと、家庭のこと、喜びも悲しみも・・・他の誰にも理解できない天才同士の奇妙な距離感と親和力で結びついていたのだと思う。そして結果として、二人とも偉大なことを成し遂げた。

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 印象派が生まれたころからの美術史をなぞりながら、観るのも楽しい。モネ、ピサロ、ルノアール、モリゾ、絵具屋のタンギー爺さんや画商のヴォラールまで出てくる。監督・脚本のダニエル・トンプソンが15年間の膨大なリサーチで歴史的事実を発掘し、長年の夢を映画化したこの作品。オリジナルタイトルは日本語にすると『Sezanne et Moi (セザンヌと私) 』。なので、主にゾラの視線からセザンヌを描いている。わたしたち観客はまるでゾラの横で眺めているようなリアルさで創造の苦悩を一緒に体感することになる。時空を超えた感覚。演出の力ですね。

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 プロヴァンスで撮影された映像がまたすばらしい。まぶしい陽光、赤土の崖、松やオリーブの木々、そしてサント・ヴィクトワール山。セザンヌの名画そのままの世界がスクリーンに再現されている。初めてパリへ出た時のモノクロの雨のシーンも効果的だった。撮影のジャン=マリー・ドルージョもすごい力量だ。もちろんセザンヌ役のギョーム・ガリエンヌ、ゾラ役のギョーム・カネをはじめ、フランスの実力派俳優たちの熱演があってこその映画の成功。これを観たらセザンヌの聖地をめぐりたくなってきました。

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