ラ コリーナは近江八幡の原風景
明治5年(1872年)に近江八幡で生まれた和菓子の「たねや」が、創業の地に作っているユートピアが『ラ コリーナ』。La Collina はイタリア語で丘を意味する言葉だそうです。八幡山のふもと、ゆたかな自然と一体になってショップやカフェやレストラン、菓子工房やパン工房が点在する。まだ進行中のプロジェクトのようですが、すでに十分魅力的だと思います。日本古来の植生、生物の多様性。ここが目指すものは、私たちが孫子の代まで大切に守らなければならないもの。
お菓子とその素材を提供する農業、そして幸せな暮らしを考えた場づくり。50年後100年後を見すえると、まずそれらを取り巻く自然環境を整えないといけない。そんな哲学が感じられる施設です。しかも決して理屈っぽくはなく、子供から大人まで楽しめるスペースになっている。「たねや」という企業の強い信念と高い文化度が伝わってくる。方向性は違いますが、ベネッセの直島アートサイトと同じ感動を覚えました。
敷地内にはバッタもいる。蝶も飛んでいる。秋の虫もうるさいほどの声で鳴いている。驚いたことにラ コリーナの真ん中には田んぼがあるのだ。刈り終えた稲束が懐かしい姿で干してあった(地方によって異なるがイナキ、ハサ、ハデなどと呼ぶらしい)。ここでは田植えや草取り、稲刈りなどの体験学習もしているそうだ。見るだけではなく、参加できる行事があるっていいですね。
あぜ道にはツユクサやオミナエシが咲いている。木々だけではなく雑草と呼ばれるような草まで植栽して、それこそ絶滅危惧種になりつつある日本の原風景を復活させている。この日も畑や田んぼの世話をしている人を何人も見かけました。昔は日本中どこでも見られた光景にちゃんと戻すための大変な苦労と努力。名画の修復作業に似ているかな。
ラ コリーナ 近江八幡
滋賀県近江八幡市北ノ庄町615-1
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