個人的な思い出のHANGA
横尾忠則 HANGA JUNGLE 展は、いろいろ個人的に思い出すことが多かった。申し訳ございませんが、しばしお付き合いのほど。
まず少年マガジンの表紙。「巨人の星」と「あしたのジョー」を使った画期的なデザインが、30年近く後に、シルクスクリーンの作品になっていた。もちろん少年週刊誌サイズよりずっと大きい。この表紙は私たち前後の世代がみんなビックリ!驚き!喜んだ!ものです。こんなことができるんだ!と勇気づけてくれて、この後のデザインの世界がずいぶん自由に変わったんだから。雑誌は置いとくと場所をとるのでどんどん捨てるんだけれど、これだけは永らく取ってました。いまはもう処分してます。
もう一つはTV番組のタイトルバック制作を横尾さんに依頼したときのこと。もちろんポスターや新聞広告もお願いしてるんですが、表現がまったく別なので、これはTVの話です。収録の当日横尾さんが持ってきたポスターが「性風景」というシリーズ。これをスタジオに並べてTVカメラで撮影すると言う。TV局のプロヂューサーやディレクターがあわてて「これはちょっとマズイですぅ~」と悲鳴。でも「大丈夫です」と取り合わない。(展覧会で実物をご覧ください)
じつはタイトル名も出演者名もぜんぶ横尾さんが書いた筆文字を黒バックに抜いて、横パンで撮影した映像をそこに映し出すという構想。だから強い色がチラチラするだけでアブナイ絵は見えない。40年以上も前の話。横尾さんもビデオ編集なんて初体験で、「こんなことできる?」、「こーしたいんだけど」と、5分足らずのタイトルづくりを15時間もかけて徹夜で楽しんでおられました。私も朝まで付き合いましたよ。さすが天才!アイデアがいくらでも湧いてくるんだと感心したのを思い出します。
こちらはリサ・ライオンです。こんなムキムキの女性を見たのは初。彼女は社会現象にもなりましたから、ある程度の年配の方なら覚えておられるでしょう。それで当時の会社の同僚が、横尾さんにリサ・ライオンを使った神戸ユニバシアード大会の公式ポスターを依頼したのです。
六甲山の山中で横尾さん立会いのもと撮影した写真の上に、デッサンの描線を重ね、そこらじゅうの色を変えて仕上げるようにという暗号のような指定原稿。どんな仕上がりになるか想像できない印刷屋さんが作ってきた校正刷りが、「まったくダメ、全部やり直し」と横尾さん。平凡な印刷屋さんは常識的に「空は青く、肌の色は肌色で」と懸命に直してきた。指定通りにやるとゼッタイNGに決まってると。ま、何とか完成しましたが傍から見ていても大変そうでした。
横尾忠則
HANGA JUNGLE展
2017年9月9日(土)~12月24日(日)
Y+T MOCA 横尾忠則現代美術館
| 固定リンク
「展覧会情報[2017]」カテゴリの記事
- ボストン美術館から珠玉の名品(2017.12.16)
- 目にするもの、すべて国宝! (2017.11.21)
- オルゴール館も展示会場です(2017.11.03)
- 高山植物園でのアート三昧(2017.10.31)
- 六甲山上アートの一発芸(2017.10.28)
コメント