画壇の仙人、熊谷守一
明治13年(1880)岐阜県生まれ、昭和52年(1977)に97歳で亡くなった熊谷守一。没後40年の展覧会が神戸御影の香雪美術館で開催されている。油彩画をはじめ水墨画や書など約70点が展示されている。「お前百まで わしゃいつまでも」という書もあるように、ひょうひょうと長生きした画家だ。その作品は元祖ヘタウマとも呼ぶべき素朴なスタイルで、ネコやカエルやアリなど身近な生命や、石ころや雨滴など自然の中の小さなモノに視線を注ぐ。
ベニヤ板に油彩で描く。シンプルな輪郭線と平面的な色彩面で構成する。そんな独自の作風が確立されたのは、70歳を過ぎてから。ずいぶん遅咲きですね。生活は困窮を極めたが、自分の道を黙々と進む。文化勲章を辞退して「画壇の仙人」と話題になったこともある。純粋、無垢なスタイルと生きざまは、いまもファンが多い。
書も十数点展示されているが、絵とまったく同じ世界観だ。「ふくはうち」、「かみさま」、「花よりだんご 九十七才」などなど。ヘタなのかうまいのか、私にはわかりません。ただし、すごく味わい深い書だと思う。もちろん絵とは違うけど、それぞれのビジュアルが目に浮かぶような字なのだ。あくまで画家の字で、書家の字ではない。観客も絵と同じスタンスで鑑賞しているのでしょう。
熊谷守一には『へたも繪のうち』という本がある。その中に「なくなった坂本繁二郎さんは、若いころから名誉とか金とかには、全く関心のない人でしたが、いい絵を一生懸命に描かなければならないという感じは持っていたようです。しかし、私は名誉や金はおろか、『ぜひすばらしい芸術を描こう』などという気持ちもないのだから、本当に不心得なのです。しかし、不心得だが、それがいけないとは思っていません」と書いている。まさに仙人ですね。
没後40年
熊谷守一 お前百まで わしゃいつまでも
2017年3月11日(土)~5月7日(日)
香雪美術館
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