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2017年3月

2017年3月30日 (木)

絹谷幸二、創造の喜びと楽しさ

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 大阪の街や海や山を見晴らす、絶景!梅田スカイビルのタワーウエスト27階に、絹谷幸二 天空美術館がオープンした。「美の力、芸術力によって、人類を元気にする新たなる芸術文化発信の拠点を目指します」とうたわれている。観客はまずシンボルゾーンの3D映像で度肝を抜かれ、展示ゾーン「青」と展示ゾーン「赤」の作品群を観てまわる。

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 カラフルで、曼荼羅的で、キッチュで、生命力にあふれた絹谷ワールド。数十点の平面作品と、とてもユニークな発泡スチロールを使った立体作品が迫力で迫ってくる。ヨーロッパの教会壁画で使われるフレスコ技法で描かれているので、色鮮やかでありながらマット調。油彩画のようなテカリはなく、独特の質感を出しているのがおもしろい。

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 富士山や風神雷神など日本的なモチーフから、古代ギリシャやルネサンス美術をリスペクトした西洋の彫像や天使からキュビズム風の人物像まで、時間と空間を自由自在に飛び越えてイメージの翼を広げている。いやぁパワフルなアーティストです。でないと「人類を元気に!」なんて言えないでしょう。1943年奈良県生まれ、まだまだ現役バリバリ! 創造を心から楽しんでいるようです。

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絹谷幸二 天空美術館
梅田スカイビル タワーウエスト27F
10時~18時 火曜休館
(金・土は10時~20時)

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2017年3月27日 (月)

ヨーヨー・マと仲間たち

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 現代最高のチェロ奏者のひとり、ヨーヨー・マ(馬 友友)は1955年パリ生まれニューヨーク育ちの中国系アメリカ人です。このドキュメンタリーは、ヨーヨー・マを中心に結成された革新的な国際的音楽家集団シルクロード・アンサンブルの活動を記録したもの。「ヨーヨー・マと旅するシルクロード」。原題は「The Music of Strangers」。

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 チェロやヴァイオリンやクラリネットやバンジョーなどの楽器に加え、アラビアのウード、中国琵琶(ピパ)、ペルシャのケマンチェ、スペインのバグパイプ、日本の尺八など西洋音楽とは違う異文化の伝統楽器を演奏する才能あふれる音楽家たちが参加している。彼らのルーツもイラン、中国、シリア、アゼルバイジャン、スペインのガリシア地方など多彩。戦争、弾圧、自由の欠如。故郷では演奏活動が困難な人たちもいる。そんなメンバーがそれぞれのアイデンティティを見つめ、普遍的な音楽の喜びを創り上げていく。

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 古代から東西文明が交差し、ヒトが、モノが、文化が行きかったシルクロード。いまヨーヨー・マとシルクロード・アンサンブルが目指しているのは、国境を超越し、政治体制や宗教を凌駕する、新しい普遍的な音楽文化の創造と進化。そしてこの文化力こそが平和で豊かな未来を開くと信じているからだ。歓びのハーモニーを求めて旅する『異邦人たち』。文化の多様性とお互いの歴史的政治的背景を認め合って、究極の音世界を共に生み出していく。まだ将来に希望を抱いてもいいのだ、と思わせてくれる。

 

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2017年3月24日 (金)

メイプルソープ、静かな挑発

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 美術としての写真を考えるとき、もっとも重要なアーティストはロバート・メイプルソープでしょう。1946年生まれ、1989年AIDSにより死亡。40歳代前半に亡くなった当時、エッまだ若いやろ!という驚きと、やっぱりね!というあきらめが同時に気持ちの中にわいてきたものだ。妖しく、美しく、かの時代に咲い大輪の才能。いま銀座のシャネル・ネクサス・ホールで「Memento Mori ロバート・メイプルソープ写真展」が開催されているので行ってきました。

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 彼がたくさん残した素晴らしい肖像写真。生と死。男性と女性と性的マイノリティ。フィルムに定着させる被写体の個性(特にゲイの男性)は、本人よりはるかに鮮明に現れていると思う。70年代から80年代、スキャンダラスな社会問題となりながら進行していた「性の革命」。メイプルソープはそのシンボル的な作家のひとりでした。LGBTのデモやお祭り的集会が日本でも開かれるなんて、まったく思いもしなかった。時代の変わりようは予想よりはるかに速くドラスティックだ。

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 ハッとさせるモチーフのとらえかた、古典的ともいえる構図の見事さ。ゼラチンシルバープリントの超絶美しさ、モノクロームの深い表現力。20世紀後半の芸術シーンに大きな影響を与えたメイプルソープの作品が、まとめて91点も鑑賞できるいいチャンスです。花で、肉体で、著名人の肖像で、私たちを静かに挑発する作品の数々。写真が記録から美術になったこと、そして彼以後写真が変わったことを、ぜひご覧ください。

Memento Mori
ロバート メイプルソープ写真展 ピーター マリーノ コレクション

シャネル・ネクサス・ホール
2017年3月14日(火)~4月9日(日)
12:00-20:00 無休

 

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2017年3月21日 (火)

草間彌生の凄さは何だろう?

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 草間彌生はアーティスト人生としては、もう最終章に入っていてもおかしくないと思う。でもでも、年齢を感じさせるどころか、ますます若々しく過激にエネルギッシュになっている。北斎もマティスも優れた芸術家はみんなそうだが、老いてますます盛ん。年とともに枯れるどころか死ぬまで現役。どんどん自由にパワフルになってくるのは興味深い。たぶん芸術家はいつまでも、「これは面白い」、「もっとこんな作品を創りたい」と好奇心と野心にあふれているのでしょう。

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 展覧会の会場は、そんな作家の情熱を感じてか熱気にあふれている。しかも若い人たちがとても多い。少女時代からの水玉や網目の強迫観念に追われて制作していた頃の作品より、もっともっと自分自身に正直になっていると感じる。だからものすごいスピードで真のアートを量産しているのだ。それってスゴイことだと思いませんか。われわれ凡人でも年齢とともにエネルギーが落ちてくるのに、はるかに精神集中と緊張を強いられるアート制作にエネルギッシュに取り組んでいる。

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 それが天才としか言いようがない草間彌生たる所以。フィレンツェのヴァザーリの回廊に展示してあった自画像の迫力たるや、西洋のそうそうたる巨匠の自画像を圧倒しておりました。この人の場合、いま自分が表現したい世界と世間の人々の意識がぴったりマッチしたサイコーの時を迎えているのでしょう。時代との幸せなマリアージュ。
 ミュージアムショップの売れ行きがこんなにすごいアーティストはかつていなかったんじゃないか。それにこんなにグッズにしやすい作家も。日本の宝ですね。

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草間彌生 わが永遠の魂
国立新美術館
2017年2月22日(水)~5月22日(月)

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2017年3月18日 (土)

やっぱり草間彌生が好き

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 六本木の国立新美術館で開催中の「草間彌生 わが永遠の魂」。松本市美術館の常設展示(地元・松本の子供たちは白地に赤の水玉をみて、毒キノコだと恐れるそうだが)と、2年前だったかな、大阪の国立国際美術館で開催された展覧会をミックスして、思い切りパワーアップした感じの素晴らしい展覧会です。切符売り場の行列やミュージアムショップのキャッシャーに殺到する人並みは、想像以上。日本人の草間彌生好きが現れているな、と思いました。

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 学生時代の初期作品からニューヨーク時代の有名なパフォーマンスの記録映像やネット絵画、5年ほど前から精力的に描き続けているタテヨコ約2mのタブローまで、約150作品が広い展示会場の壁一面にかけられている。これらを観ていると、若いころから過激さと先鋭さとパワーにおいて日本人アーティストではナンバーワンだった草間さん。ますますパワーアップしたタブローを毎日毎日エネルギッシュに制作し続けている。しかも常に新しいアイデアとチャレンジを取り入れながら。

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草間彌生 わが永遠の魂
国立新美術館
2017年2月22日(水)~5月22日(月)

 

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2017年3月15日 (水)

画壇の仙人、熊谷守一

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 明治13年(1880)岐阜県生まれ、昭和52年(1977)に97歳で亡くなった熊谷守一。没後40年の展覧会が神戸御影の香雪美術館で開催されている。油彩画をはじめ水墨画や書など約70点が展示されている。「お前百まで わしゃいつまでも」という書もあるように、ひょうひょうと長生きした画家だ。その作品は元祖ヘタウマとも呼ぶべき素朴なスタイルで、ネコやカエルやアリなど身近な生命や、石ころや雨滴など自然の中の小さなモノに視線を注ぐ。

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 ベニヤ板に油彩で描く。シンプルな輪郭線と平面的な色彩面で構成する。そんな独自の作風が確立されたのは、70歳を過ぎてから。ずいぶん遅咲きですね。生活は困窮を極めたが、自分の道を黙々と進む。文化勲章を辞退して「画壇の仙人」と話題になったこともある。純粋、無垢なスタイルと生きざまは、いまもファンが多い。

Photo_3  書も十数点展示されているが、絵とまったく同じ世界観だ。「ふくはうち」、「かみさま」、「花よりだんご 九十七才」などなど。ヘタなのかうまいのか、私にはわかりません。ただし、すごく味わい深い書だと思う。もちろん絵とは違うけど、それぞれのビジュアルが目に浮かぶような字なのだ。あくまで画家の字で、書家の字ではない。観客も絵と同じスタンスで鑑賞しているのでしょう。

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 熊谷守一には『へたも繪のうち』という本がある。その中に「なくなった坂本繁二郎さんは、若いころから名誉とか金とかには、全く関心のない人でしたが、いい絵を一生懸命に描かなければならないという感じは持っていたようです。しかし、私は名誉や金はおろか、『ぜひすばらしい芸術を描こう』などという気持ちもないのだから、本当に不心得なのです。しかし、不心得だが、それがいけないとは思っていません」と書いている。まさに仙人ですね。

没後40年
熊谷守一 お前百まで わしゃいつまでも
2017年3月11日(土)~5月7日(日)
香雪美術館

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2017年3月12日 (日)

善きアメリカ、 LA LA LAND

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 夢を追う、希望を信じる。それに向かって邁進する姿は美しい。アメリカン・ドリームを象徴する都市、LA。サクセス・ストーリーを体現する場所、ハリウッド。ここを舞台に展開するミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」は、時代遅れの若きジャズ・ピアニストと売れない若き女優の物語です。苦しみ悩みながらもチャンスをつかもうと必死にがんばる。と書くと、よくある青春ドラマのようだけれど、全然ありきたりではなく本当に素晴らしい。

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 希望のないトランプ支持層が多く住む中西部とはまったく別のアメリカが、まだ生きていると感じられるのもうれしい。ついこの間まで世界中の人があこがれた国(でも今や幻影になったのか)を、半分かもしれないけれど信じてもいいのだいう思い。ハリウッドの関係者が絶賛するのは当然だ。

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 クラシカルな映像のトーン、うっとりする美しい音楽、過去の名場面を思わす演出のディテール。どれをとっても懐かしいけど新しい。それがすごい! セリフと歌、演技とダンスが、境い目なく違和感なくごく自然につながっていく主人公たちの演技力もすごい! ミュージカルの革命と言ってもいいかもしれない。あまりにも自然だから気付かないけれど。50年以上前に観た「ウエスト・サイド・ストーリー」以来の感動だ。

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 1980年代のアメ車のコンバーチブルとトヨタ・プリウスに乗る彼らの物語。夢のようにロマンチックなよそおいながら、リアルでシリアスなお話です。砂糖をまぶしたビターチョコレート。甘くて苦い大人の味です。驚きのラストに思わず涙が出ました。それはとても爽やかな幸せな涙でした。たぶんあと2~3回は観に行くでしょう。何度でもこのラ・ラ・ランドの空気に浸りたいから。

 

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2017年3月 9日 (木)

ハッピーな騎士団長殺し

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 村上春樹の話題の新作「騎士団長殺し」。読んでいる途中に風邪をひき、2日間まったく進みませんでした。ハナミズはたれる。身体のふしぶしが痛む。ついウトウトする。しかも熱のせいか、村上ワールドから抜け出してきたような奇妙な出来事(たぶん夢でしょう)が、デジャブのごとく現れたり。宙に浮遊するような数日間でした。
 死んでいた2日間を除くと、あっという間に読んでしまうおもしろさ。ハルキ教の信者としては「早く先が読みたい」と「読み終わったときの寂しさ」のはざまで、いつものことですが苦悶するのです。今回はあいだに風邪が挟まったおかげで、一拍おいて楽しめたのは幸いとしましょう。

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 肖像画家を主人公にしたこのお話は、美術に限らず音楽も文学も、芸術家には同じ種類の産みの苦しみがあるのだなぁと感じさせる。自分自身のための創作と営業の作品。アイデアが舞い降りる瞬間と、どの時点で作品の完成とするかの決断。そのあたりがとてもおもしろい。
 そして今作は邪悪な人も出てこず、マイルドでハッピーな物語。もちろん怖さを感じたり、困惑したり、謎が謎を呼んだり。そんなミステリアスな世界は存分に展開される。しかし読み終わってとても穏やかな気分になる。風も完全に治っていました。
 ところで主人公の新たな創作スタイルを、私はフランシス・ベーコンの人物作品を思い浮かべながら読んでいましたが、さてどうでしょうか。

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2017年3月 6日 (月)

今も現役!アレシンスキー展

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 ベルギーの現代画家ピエール・アレシンスキー。知りませんでした。1927年ブリュッセル生まれだから90歳ですか。今もなお現役でエネルギッシュに活動を続けている。このアーティストの作品を、国立国際美術館で開催中の展覧会で初めて観ました。「おとろえぬ情熱、走る筆」というサブタイトルが示すように、制作意欲旺盛なアーティスト。約80点からなる大規模な回顧展です。

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 じつはこの作家、日本との縁がとても深いのです。第二次世界大戦後パリで活動中に出会った日本の前衛書道の奔放さに共感し、1955年に来日。映画『日本の書』を制作したという。彼の作風も、ヨーロッパの重厚な油彩画から抜け出し、墨、水彩、アクリル絵の具を使った軽快で自在な筆使いで幻想的ヴィジョンを描くスタイルへと変貌。印象派の画家たちの時代とはまた別の、ジャポニズムが感じられておもしろい。
Photo_2 何ものにもとらわれない自由な精神。見たこと、経験したこと、世界のあらゆるものを表現したいという欲求。そんなアレシンスキー独自の探求が、コマ割りにした画面に樹や怪物や海などを描いたり、版画も交えた幾種もの技法を駆使したり、下地にアンティークの地図や手紙を使ったり、といった多彩で豊かな作品群にあらわれている。常に変貌を続け、衰えることのない創作意欲。観てよかったです。
 
おとろえぬ情熱、走る筆。
ピエール・アレシンスキー展
2017年1月28日(土)~4月9日(日)
国立国際美術館

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2017年3月 3日 (金)

春を告げるフクジュソウ

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 鮮やかな黄色が目にまぶしいフクジュソウ。いま六甲高山植物園で花盛りです。漢字で書くと、幸福と長寿をあらわす福寿草。おめでたいのでお正月の鉢植えに入れられたりする。
 根には強心作用や利尿作用があり、民間薬として利用されるそうだ。ただし毒性が強く、間違って食べると死に至ることもあるという。ホント、毒と薬は紙一重。山菜採りに出かけた人がフキノトウと間違って摘んでくることがあるというから気を付けないといけない。時季も同じだし、芽が出たばかりで花が咲く前はよく似た姿をしているかららしい。

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 今年は暖冬で高山植物園には雪がまったくない。まだ雪が残っているところから顔を出すフキノトウ、というイメージがあったけれどちょっと違いました。春うららのタンポポのようですね。とはいえまだ園内の池には氷が張っている。小便小僧も手作りのコートをかけてもらっているが、もちろんオシッコ(噴水)はお休み。冬ごもり中です。

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 この時季に高山植物園で見られるもうひとつの黄色い花がマンサク。これも春を告げる花。細いヒモのようなこの花は、フクジュソウより黄色が濃い。オレンジ色に近い花弁と赤褐色の雄しべが特徴的で、色味のない早春の山の中ではよく目立つ。漢字は万作や満作と書く。語源はよくわからないようだが、「まず咲く」が訛って「まんずさく」に、そして「まんさく」になったという説に親近感を覚えています。
 六甲を代表する樹の一つであるアセビも、陽当たりのいい場所からつぼみが膨らんできている。もうすぐ春ですね。

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