王国の創造者、聖アドルフ
アドルフ・ヴェルフリの作品中にはやたら自画像が出てくる。偉大なる王、神聖なる聖人、全能なる神として。彼が創造する世界は過剰なる自意識にあふれている。いや、「他人という視点がない」というのが正しいのかもしれません。観た人がどう感じるか、誰がどう評価するか、など意識の外。まさに自分だけの王国です。
そして数字に対する異常な愛。100年ほど先まで利子を計算した数字を並べた作品を作ったり、億や兆などでは表せないとてつもない大きな数を表す架空の単位を創り出したり、とても執着が強かったようだ。音符にも同じことが言える。つまり彼は単なる画家ではなく、あらゆる分野に熱情をもってのぞむ総合芸術家なのだ。あるいは世界の創造者か。
それにしても世界中のヴェルフリ研究者たちの執念にも頭が下がる。彼が描くさまざまな図章や形体を分類し、意味づけ、彼の膨大な作品群を理解する指針を作っている。その情熱はまるでヴェルフリが乗り移ったかのようだ。そのおかげで私たちはこんな立派な展覧会を観ることができるのだ。しかも研究対象としては無限の可能性を秘めた広大な宇宙のようなもの。
これからもますます評価が高まることが予想されるアドルフ・ヴェルフリ。次に観る展覧会はまた新しい発見がいろいろ反映されるでしょうが、今現在の最前線の研究の成果が活かされたいい展示だと思います。
アドルフ・ヴェルフリ
二萬五千頁の王国
2017年1月11日(水)~2月26日(日) 月曜休館
兵庫県立美術館
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