高谷敏正「奥の細道」ワールド
この時期、毎年楽しみにしている展覧会が高谷敏正さんの陶展。今年もGALLERY北野坂で開催されています。なるほど、建築家が作る陶の作品って一般の陶芸家とは一味も二味も違うんだ!オリジナリティあふれるアートになるんだ!といつも感心させられる。そう思いながら、いただいた名刺をよく見ると肩書には『陶芸アート』と書いてある。「建築家が作る」なんていう紹介の仕方は今回でもう最後にしなくちゃいけない。しっかりと独自のスタイルを確立し、独創的な陶芸作品を作る陶芸アーティストなんだから。
さて今回の展覧会のテーマは松尾芭蕉の「奥の細道」。江戸から奥羽、北陸と芭蕉がたどったルートになぞらえて並べられた49作品。それぞれの作品には「奥の細道」の一節が彫り込まれている。深川を出発、「行く春や 鳥啼き魚の目は泪」と詠み、美濃の大垣で「蛤の ふたみにわかれ 行秋ぞ」と終わる約150日間の旅。芭蕉の言葉や土地土地の歴史や自然の情景からインスピレーションを得て生み出されたこれらの作品は、単独で見ても美しい造形の花器である。とは言え、やはりすべてそろってこそ面白さは数倍になる。スケールの大きいその構想力。完成に至るまでの労力と精神の持続力。頭の下がる思いです。
49作が描く地図の中に置かれた「風に誘はれて」など、大きな3点のテーマ作品。これはまた具体的なイメージをカタチにしたというより、芭蕉の思想哲学に共鳴して生まれた作品だと思う。いくつかの句を壁掛けオブジェにした作品などと共に、「奥の細道」ワールドが21世紀の感覚で私たちの前に現出している。
あるテーマのもとにまとまった世界観を提示する、こんな素晴らしい展覧会を観ると自分でも何か作りたくなる。表現したくなる。いい刺激をいただきました。
高谷敏正 陶展
2016年9月20日(火)~9月25日(日)
GALLERY北野坂
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