,森山大道、神戸を撮る
9月25日(日)まで、兵庫県立美術館のギャラリー棟3階で開催されている森山大道の写真展。サブタイトルが「仮想都市~増殖する断片」で、仮想都市にシャングリラとルビがふってある。英文のタイトルは、DAIDO MORIYAMA Photo Exhibition "Shngri-La"です。シャングリラは英国の作家の小説に登場する理想郷の名前で、ヒマラヤの奥にあるという想定だ。この展覧会のタイトルは英文のShangri-Laが先に決まって、後から「仮想都市」という日本語を当てたのだろう。(ま、そんなことはどうでもよろしい)
森山が50年以上にわたって表現してきた作品群を集大成してみようというとき、その独自の世界をシャングリア(仮想都市)の構築になぞらえたのだ。
この展覧会は写真作品約120点、シルクスクリーン作品約30点、それにカルチェ財団現代美術館で展示した映像作品で構成されている。森山は「アレ・ブレ・ボケ」という技術論からの形容で語られることが多いが、被写体の選び方そのものが森山大道なのだ。その方向性は代表作の『三沢の犬』から変わっていない。首尾一貫している。こちらを振り向いて不気味な目つきでにらんでいる犬。犬というより邪悪な一匹狼。あの有名な作品で、今回も展示してある。
ピントが合っている、トーンが美しいといった従来の写真の常識にサヨナラしただけではない。整理整頓より雑然、バランスより破たん、効率より多様な異端、清潔より猥雑,日向より日陰・・・近代社会を進歩させてきた価値観の数々をも覆した先に、彼なりのシャングリラはあるのだろうか。
今回の展覧会のために森山は神戸の街を撮り下ろしている。東門街やモトコー、南京町やはしけの桟橋。ガード下や路地の奥。これらの断片も当然シャングリアに連なっている。そしてこれらはリアルな現代を生きている神戸なのだ。
森山大道写真展
仮想都市~増殖する断片
2016年8月27日(土)~9月25日(日)
兵庫県立美術館 ギャラリー棟3F
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