ウェルヴェの現代性

オランダのアーティスト、グイド・ヴァン・デル・ウェルヴェの展覧会。前回お伝えように二条城のそばの@KCUAで開催されています。ポスターで取り上げられている作品は、第8番「心配しなくても大丈夫」。英語のタイトルは「Everything is going to be alright」。氷におおわれた冬の海をウェルヴェが一人歩いている。その真後ろから砕氷船が氷を割りながらゆっくり迫ってくる、ただそれだけの10分あまりのシンプルな作品。状況はチョー特異だが、きわめて日常的な雰囲気で歩く。このギャップは結構おかしい。日常に潜む恐怖、あるいは、楽観主義の勝利。いやいや、何事にもつい意味を考えてしまう人間の習性を笑っているのかもしれない。

第9番「世界と一緒に回らなかった日」(The day I didn't turn with the world)という作品もおもしろい。作家が北極点に立ち、24時間かけて地球の自転とは逆方向に一回転する様子を定点カメラで記録した映像作品。

この説明を読んだだけで、ナンセンスさがわかるでしょ。極寒のなかでよくやるよ!と驚きあきれながらも画面に引き込まれる。もちろん何もドラマは起こらない。白夜だから24時間太陽が沈まない。光の方向や雲の様子は変わるが、北極点に立った彼は向きが少しずつ変わるだけ。

いろいろな作品を観ていると、ウェルヴェの行為は禅の修行に似ていると思う。この展覧会の日本語タイトル『無為の境地』を考えた人も、きっと同じ感想を持ったのでしょう。彼は自分の肉体を使って修業し、何の感情も意味も思想も加えずただ記録する。それが現代アートの最先端かもしれない。
写真や映像が発明されてからの永遠のテーマ、記録性と表現性。この展覧会で見るべきは、記録性を極限まで突き詰めると新しい表現法が生まれる、という発見。写真や映像に、新たな可能性を見出したアーティストだと言えるでしょう。
グイド・ヴァン・デル・ウェルヴェ個展
無為の境地 killing time
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
2016年2月20日(土)~3月21日(月・祝)
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