アンジェリカの微笑み、の魅力
新開地のアートビレッジセンターで、ポルトガル映画『アンジェリカの微笑』を観ました。これはマノエル・ド・オリヴェイラ監督が101歳の時に製作した、耽美的で不思議な愛の物語。
若くして亡くなった美女の写真撮影を依頼された写真家がカメラを向けたとき、その奇跡は起こる。白い死に装束に身を包んだ絶世の美女アンジェリカが写真家に微笑みかけるのだ。幻か?現実か? 一瞬にして恋に落ちた写真家は、この世とあの世を行き来しつつ、苦悩の日々を送る。人間が肉体で存在する世界と、魂で存在する世界。その境界は越えられるのか? 生死を超えた純粋な愛は存在しえるのか?
ちょっとよしもとばなな的なストーリーが、美しい映像美とショパンの音楽にのって静かに進行する。ワイナリーのブドウ畑で働く肉体労働者たちとの対比。象徴的に扱われる下宿の大家が飼う小鳥。生と死、枠に囚われた肉体と魂の自由な飛翔。聖書やルノアールやシャガールのイメージも取り込み、官能的な幻想譚を見事に終幕に持っていく。
世にも美しく、世にも奇妙なアンジェリカとイザクの物語。あまり広く公開されていませんが、機会があればぜひご覧になってください。
マノエル・ド・オリヴェイラ監督作品
アンジェリカの微笑
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