横尾忠則、「幻花」の挿絵展
幻花 幻想幻画譚。展覧会名に『幻』の文字が3つも入っている。横尾忠則現代美術館で開催中の展覧会です。これは1974~1975年に東京新聞に連載された瀬戸内晴美(寂聴)による時代小説「幻花」の挿絵を一挙に見せるおもしろい企画。貴重な原画全371点を展示している。新聞小説用なので、ヨコ14cmタテ8cmぐらいの小品だ。しかしその小さなスペースの中に、細密な線描で自由奔放にイメージをふくらませ、独特の横尾ワールドを展開。決して小ささを感じさせない。
ただし展示としては小品を整然と並べてもインパクトがない。いくら内容が濃密で完成度が高いといっても、広い美術館をもたせるのはむずかしい。だからポイントポイントに横幅4m以上の巨大な拡大版が配置されている。精緻な原画だから、こんなに拡大してもまったく粗く見えない。これも驚異的。むしろ原画では見逃しがちだった凝ったディテールまで見えてきて、さまざまな新しい発見があってとても楽しい。
小説は室町時代の後期、京の都が舞台。足利義正や日野富子などが登場する。天災や疫病、内乱が頻発するどろどろした人間関係、横尾さんの挿絵は、小説に従属するのではなく、対等に勝負してそれ自体が独立した世界を構築している。キリストやUFOも出てくる自在な表現。まさに幻想幻画、自らが「イラストレーションの総決算」と述べるだけあって、ほんとうに素晴らしい作品シリーズです。
横尾忠則 幻花 幻想幻画譚
Y+T MOCA 横尾忠則現代美術館
2015年12月12日(土)~2016年3月27日(日)
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