篠原奈美子のリスとウサギ
ピンク色のもごもごした物体! 波打つふさふさ! これは篠原奈美子の作品「Rainbow Risu」です。もったいぶった見せ方になりましたが、じつはFRP(繊維強化プラスチック)で作ったリスの彫刻。高さは2mあまりと巨大なリスで、しかも尾っぽを思い切りデフォルメしてデカくしているので、普通イメージするリスとは別物に見える。ピンクという色も、因幡の白うさぎじゃないけれど、皮をはぎ取られたようで妙に生々しい。いや、痛々しいと言ったほうが適切か。
尾のデフォルメに対し、顔や毛並はとてもリアル。そのアンバランスさが、可愛さを通り越して不気味な印象を与える。まるで100万年後の哺乳類のようです。つぶらな瞳は青や赤。「まぁ、リスってなんて可愛いの」、などといった類型的なモノの見方を冷たく拒絶しているかのよう。自分の眼でしっかり見なさい!とゲキを飛ばされている感じ。なにものも、なにごとも、固定観念を捨てまっさらな目で見てみると新たな発見や素晴らしい感動がある。いくつになっても教えられることばかりだ。
篠原のもう一つの作品がグランドホテル六甲スカイヴィラに展示してある。こちらはウサギ。作品名は「垂れ耳」。これも高さ150cmぐらいの巨大なウサギで、自慢の耳はなぜかダラリと垂れている。物憂げな眼、宇宙のかなたを凝視するかのように天を見上げた姿は、哲学者かそれとも故郷の月を見て悲しんでいる月からの使者か。私たちに身近なリスやウサギをモチーフに、奇妙な世界へ連れて行ってくれる篠原奈美子。新しいアートの可能性を感じました。
六甲ミーツ・アート 芸術散歩 2015
2015年9月12日(土)~11月23日(月・祝)
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