作品名は「海、山へ行く」
「海、山へ行く」というタイトルを聞いて、どんな作品を想像されるでしょうか。月原麻友美が陶製のパーツで創造したアート世界は、六甲の山の上に海辺の世界が侵入したというおもむき。フジツボのような、イソギンチャクのような、ヒトデのような、白い小さな物体が足元の草むらやせせらぎの中、岩の上からさらには高い樹の幹にまで、歩くにつれて無数に現れる。気にせずに歩いていると見過ごしてしまいそうなほど、周囲に溶け込んでいる。
しかし一度気付くと、この不思議な光景は、小さな異物が平和な日常に入り込んだ時に感じる違和感が、だんだん成長し増殖してやがてコントロールできなくなる怖さに似ていると思う。海と山。人間とロボット。生物と無生物・・・。まったく別物と考えてきたものが、じつはそれほど差がないんじゃないのか。タイトルのおもしろさにひかれて注目した作品が、こんなことまで考えを深めてくれました。
もうひとつタイトルのおもしろさでは、「空の池」という作品もある。水草が生えた池に不定形の雲形の鏡(アルミかな)が浮かんでいる。
そこに空や周りの景色が映り込んで、天と地の関係が逆転する仕掛けの作品だ。季節によって、天気によって、時間帯によって、見る角度によって、それはさまざまに変化して見飽きない。単純だけれどとてもおもしろい。環境と一体になって、しかも周囲の環境をより強く意識させる効果がある。韓国の趙さんというアーティストの作品です。
ここで紹介した「海、山へ行く」と「空の池」。どちらもタイトルのおもしろさも抜群ですが、六甲山の自然の中でこそその美しさが生きるアート、という意味で素晴らしいと思いました。やはりアートは図録などで見るものではなく、その現場へ行って観る体験に価値があるのでしょうね。
六甲ミーツ・アート 芸術散歩 2015
2015年9月12日(土)~11月23日(月・祝)
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