ヨーロッパへ進出したY字路
故郷の西脇市で始まり、那智勝浦や下田、広島や湯村温泉など日本各地で展開していたY字路が、ヨーロッパへも進出しました。石畳のY字路やCafeの看板、ちょっと乾いた空気。日本の、それも土俗的な情念を感じる表現が多かった横尾さんだが、じつは西洋近代主義の影響は極めて大きい。とうぜん明治以降のそういう教育を受けてきた世代だし、刺激的な展覧会も欧米のものが多かったはずだ。骨格は西洋で、血肉は日本固有のもの。そんなところでしょうか。だからヨーロッパでY字路に向かい合っても不思議でもなんでもない。むしろ近代合理主義のかたまりのような場所で、近代以前の土着の文化がにおってくるところが横尾さんらしくていい。
一つ興味深い絵があった。『農道時間』と題された段ボールに油彩、スプレー塗料で描かれた索引です。180×240cmの大作だ。
Y字路の前で祈るミレーの晩鐘の農夫。その周りをステンシルで描かれた十六体の骸骨が取り巻く。骸骨のそばには名札が。ポール・セザンヌ、ホアン・ミロ、ジョルジョ・キリコ、マン・レイ、ルネ・マグリット、M・デュシャン、パブロ・ピカソ、アンリ・マティス、マックス・エルンスト、アンディ・ウォーホール、マックス・ベックマン、フランシス・ピカビア、マーク・ロスコ、P・クレー。これらは横尾が敬愛するアーティストたちの愛しい骸骨なのでしょう。そして西洋近代美術の延長線上に自分のアートがあることの表明でしょうか。
開館3周年記念展
横尾忠則 続・Y字路
2015年8月8日(土)~11月23日(月・祝)
Y+T MOCA 横尾忠則現代美術館
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