もっともっと暗い闇のY字路
過剰と拡散と異次元。横尾作品の特長は、ありとあらゆるモチーフが散りばめられ、それらが化学融合しスパークし、画面に見えていないモノまで見せてくれるところにある。現実には描かれていない世界まで、観る者を連れていく。たとえば観客自身の心の奥い記憶の中の世界。そんな横尾さんが2010年から2011年にかけて連作した「黒いY字路」シリーズがおもしろい。それもこれまでとは異質なおもしろさ。
暗い中にうっすらぼんやり、なにかあるかないかの境い目でY字路が描かれている。これはまた、どうしたことか。絵に対する考え方が大きく変わったのか、それとも他に理由が?
理由はよくわからないが、これらは今までとはまったく違うアプローチだ。「見えないものまで見せる」絵画から、「見えるものも見えなくする」絵画へ。ご本人はある種の実験と言っておられるが。見えないとよけい熱心に見てしまうのが、人間の性。心霊写真に写ったもやもやしたものを何とか理解しようとする態度に似て、わたしたちは目を凝らす。これらを展示する3階の部屋は、照明をずいぶん落としているのも、作者の意図をくんでのことでしょう。
そして黒いY字路シリーズの後半には、Y字路の前面に泰西名画の静物画のような果物がごろごろと置かれている作品が続く。はて? これでまた私たち観客をとまどわせるのか。なんかよくわからないけれど、不思議なおもしろさがある。いや、正確に言うと気になって気になってしかたない、もどかしい気分にさせられるのだ。
開館3周年記念展
横尾忠則 続・Y字路
2015年8月8日(土)~11月23日(月・祝)
Y+T MOCA 横尾忠則現代美術館
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