フィオナ・タン まなざしの詩学
中之島の国立国際美術館で開催中の展覧会、「フィオナ・タン まなざしの詩学」を見てきました。彼女は中国系インドネシア人の父とオーストラリア人の母のもとに、インドネシアで生まれオーストラリアで育ったそうだ。その後ヨーロッパに移住し、現在はアムステルダムを拠点に活動する映像作家。そんな複雑な自身のアイデンティティ探しをするドキュメンタリー『興味深い時代を生きますように』は、どこへいっても異邦人の感覚が抜けないと言うタンの初期の代表作です。これが60分。ほかにも50分や30分の作品など計17作の展示・上映なので、じっくり見られる時間をつくって行く必要があります。さまざまなイメージを丹念に織り上げてつくりあげるフィオナ・タン。鑑賞する私たちも丹念に見たいものです。
なかでもぜひ見ていただきたいのが、2009年ヴェネチア・ビエンナーレのオランダ館で発表された「ライズ アンド フォール」。ナイアガラの激しい水の流れと対比して、年老いた女性と若い女性の二人のなにげない日常生活を淡々と描く。記憶の断片を重ねたような構成は、喜びも苦しみもたくさん経験する山あり谷ありの人生を暗示する。そして動きの少ない静かな映像が、よけい私たちの想像力を刺激する。さまざまな記憶の中に生きる老いた女性と、まだ先の長い、つまり将来に味わうであろう悲しみも苦しみも知らない若い女性。とうとうと流れる水の勢いには逆らえないように、自分の意志ではコントロールできない大きな力の存在に気づくのは老いてからなのでしょうか。時間、記憶、運命・・・。具体的には何も言っていないけれど、深く考えさせられます。
フィオナ・タン まなざしの詩学
国立国際美術館
開催中 2015年3月22日(日)まで
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