2014年12月20日 (土)

震災 記憶 美術 という展覧会

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 もうすぐ阪神淡路大震災から20年。BBプラザ美術館では13人と1組の作家たちによる展覧会「震災 記憶 美術」が開かれている。震災に真摯に向き合って制作された平面、立体、インスタレーションなどの44作品が展示されています。WAKKUNさんの作品でできた入口を入ると、震災の年の夏ごろタウン誌「神戸っ子」に掲載された司馬遼太郎さんの感動的な文章が掲示されている。ギャラリーPAXREXにもよく来ていただいていた堀尾貞治さんや榎忠さんの作品もあります。それぞれの咀嚼の仕方、定着のスタイルはさまざまですが、テーマがテーマだけに重い。決して悲惨でも深刻でもないけれど。

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 参加しているアーティストは井上廣子、榎忠、金月炤子、古巻和芳+あさうみまゆみ+夜間工房、栃原敏子、中岡真珠美、西田眞人、秀島踏波、堀尾貞治、吉田英智、吉田廣喜、吉野晴朗、吉見敏治、WAKKUNです。アートが震災の記憶をどのように受け止め、どうかかわっていくのか。じょじょに記憶が風化し、特に東日本大震災が起こった後ははるか昔の出来事のように感じられる今だからこそ、この展覧会の意味があるのでしょう。そしてこの展覧会は『結論』を示すのではなく、『きっかけ』を与えてくれているのだと思います。

震災から20年  震災 記憶 美術
BBプラザ美術館
2014年12月16日(火)~2015年3月8日(日)
10時~18時 月曜休館日

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2014年12月11日 (木)

ド派手な棺桶と祖先の像

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 民博の『イメージの力』展でいちばん衝撃を受けたのが、これ。ライオンからジェット機まで、ド派手な色とカタチが並ぶコーナーはアフリカのガーナ、棺桶のオンパレードです。これらは死者の職業や趣味にちなんで遺族が発注して作るという。ライオンやヒョウの棺桶は生前ハンターとして知られていた人物の葬儀で用いられた。イカや魚の棺桶は元漁師のもの。ベンツに乗っていた人、あるいは乗りたいと願っていた人物にはベンツの棺桶。世界を飛び回っていた国際的ビジネスマンの棺桶は、ブリティッシュエアウェイのジェット機というぐあい。

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 写真でご覧になるとオモチャのように感じられると思いますが、人を寝かせて入れるのだからそれなりの大きさがあります。リアルな存在感があります。死者を称賛する、葬儀を盛り上げる、死者にあやかって残された者の権威を高める・・・いろんな意味があるのでしょう。ま、それにしても直接的で欲望むき出し、すごい迫力です。日本人の死生観とはずいぶん違う。どちらかと言えば、古代エジプトのファラオが死後も不自由しないように船や武器、装身具や財宝を一緒に埋葬したのと似てるかもしれない。

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 そして世界中どこでも同じなのだが、美術・文化・宗教の発祥は誕生と死。誕生とはその民族の祖先は何か?ということ。人型の祖先を神とあがめるパターン。強い動物、たとえばワニなどを祖とする系譜。また太陽や海など自然の事物から生まれたという民族。それぞれがそれに見合う神話を持っている。表現方法も具象もあれば抽象もある。そのどれもが極めて高度な知性とイマジネーションでできているのが驚きだ。

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 ピカソや岡本太郎をはじめ、20世紀以降の芸術家がこれらにインスピレーションを受けて、素晴らしい創作をしたのもよくわかる。これからも、アーティストは自己の表現に行き詰ったら原点へ戻れ、じゃないけれど民博のコレクションを観に行くといい。その根源的なパワーに触れることによって、きっとあたらしい道を見つけるヒントに出会えることでしょう。
 『イメージの力』展はもう終わりましたが、これらは民博の収蔵品ですから、今後も別の切り口で順次展示されるはず。またの機会をお楽しみに。

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2014年12月 8日 (月)

民博、イメージの力

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 万博公園の民族学博物館へ『イメージの力』展を観に行ってきました。9月から始まっていたのに、開催期間が終わろうかというぎりぎりのタイミングで。国立新美術館で東京の人たちを大いに驚かせた話題の展覧会が、関西に帰ってきたものだから見逃すわけにはいかない。まぁ関西人としてはこんなコレクションが千里にある、ということをちょっぴり誇りに思いながら。

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 これは国立民族学博物館ができて40周年記念の特別展です。民博が所蔵する膨大なコレクションから約600点の造形物を精選して展示。「人間はその歴史を通じてさまざまなイメージを生み出してきたが、イメージのつくり方や受け止め方に、人類共通の普遍性はあるのだろうか」という問いに対する答えをさぐる、そんな展覧会だとチラシに書いてある。

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 仮面から彫像、衣服や道具にいたるまで、世界中の民族が作ってきたさまざまなカタチ。それらは神であったり悪魔であったり、人間を超越したパワーや日常からの解脱をめざして表現している。生命力の賛歌や死の恐怖からの解放を、真剣に愚直に考えているのだろう。決して受けねらいではなく、祈りにも似た純粋な情熱。芸術の目的とは何か、という問いに答えてくれるような気がします。と言っても、堅苦しくて息が詰まりそうなものではない。むしろおおらかな印象で、理屈抜きに核心をぎゅっとつかむ骨太な表現になっている。

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 人類共通の普遍性はあるか?という問いには、あると答えたい。生命の喜び、死後の心配。魔除けと利益への願望。それらをどうイメージ化するかは、気候風土や民族の歴史によってずいぶん違いがある。それが固有の文化だ。しかしその底に流れるものは、とてもよく似ていると思う。似ているということは、見方を変えれば、それが地球上に住む人類のイマジネーションの限界だ、と言えるのかもしれません。
 

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2014年12月 2日 (火)

ジャン・フォートリエって誰?

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 中之島の国立国際美術館でいま開催中のジャン・フォートリエ展。やっと行くことができました。サブタイトルに没後50年、戦後のパリを震撼させた抽象表現の先駆者に迫る、とあります。彼は「アンフォルメルの源流」と呼ばれているそうだ。アンフォルメル(非定形という意味)は第二次世界大戦後にフランスを中心にヨーロッパ各地で起こった前衛的な美術運動だ。でもちょっとなつかしい、もっと言えば古臭い感じ。ちょうど日本で具体が活動した時代に聞いた言葉だからかな。現代から見れば、歴史の一場面のよう。ジャン・フォートリエの名も歴史の霧の中に消えかけていたのが実情だ。

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 戦前のモンドリアンやカンディンスキーなどの幾何学的な抽象とは違って、油絵の具を厚塗りにしたり引っかいたりして、素材感やマチエールを重視。人物や静物、風景など対象があるものを単純化したりデフォルメしたりすることによって抽象的な絵に見える、というジャン・フォートリエの抽象表現主義。厳格に言うと抽象絵画ではない。Photo 悲惨な大戦争による人間不信や存在の不条理を痛感したことによる、不安定な心のありようを表現したのかもしれない。
 同じころのアメリカでジャクソン・ポロックやフランク・ステラが描いた抽象的な絵画、あるいは描くという行為の意味を追求した姿勢とは共通するものがあると思いました。また同時に、美術の主流はすでにアメリカに移っていたのだ、と改めて感じた展覧会でもありした。

ジャン・フォートリエ展
2014年9月27日(土)~12月7日(日)
国立国際美術館

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2014年11月29日 (土)

向井理依子さんの額装展

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 フランス額装家の向井理依子さんの個展、いつものことながらほんとうに素晴らしい。ギャラリーという仕事柄、額装といえばつい「アート作品を飾るための入れ物」と思ってしまう。でも、展示されている向井さんの作品を見ていると考えが変わる。「アートを飾る」ためよりもっと広く「思いを飾る」ために額装はある、と。自分の好きなものがたまたまアートであっても、海辺で拾った貝殻であっても、思い出の写真であっても・・・周りのモノから区切って特別扱いしてあげることなんだなぁ、と。それらマイ・フェイバリット・シングスが時間、空間に埋没していかないように、いつまでも輝きつづけるように、ベストな居場所を作る達人なんだ、向井さんは。

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 ここで見られるのはクラシックレースや100年以上前の結婚式の招待状など、フランスのアンティーク。中世の楽譜や古い絵はがき。ウニの殻やヒトデなど自然からのもの。それぞれが自分に一番似合う衣装を着せてもらって、そっと微笑んでいる。そんな風情だ。Photo_5
 もちろんそれらは向井さんが見つけたものたち。彼女のセンスと美意識が凝縮されている。でもマネをする必要はありません。「思い」は一人ひとり違うのだから自分自身の「思い」を額に入れて楽しむのがいいのでしょう。記憶はどんどん薄れていく。だからこそ大切な「思い」は特別に囲っておかないと風化する。時間は残酷ですから。と言われても技術がないからなぁ、あきらめるしかないか、と思った人は向井さんにお願いして作ってもらうという手もある。ただし忙しい方だから、受けてもらえるかどうか。まずはこの展覧会をご覧ください。
 

向井理依子 額装展
11月25日(火)~12月7日(日)
期間中無休 12時~18時
MARUNI
神戸市中央区栄町通3-1-7
栄町ビルディング4階

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2014年11月26日 (水)

篠山紀信 vs. 横尾忠則

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 1968年の三島由紀夫にはじまり、1970年代半ばまで。嵐寛寿郎、高倉健、鶴田浩二、手塚治虫、美輪明宏、深沢七郎、浅丘ルリ子、瀬戸内寂聴、唐十郎、カルロス・サンタナやポール・デイビスなど、横尾忠則が憧れた映画スターや作家、デザイナーなどと共演(?)した篠山紀信による写真集『記憶の遠近術』から、約70点が展示されている。

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 共演相手に合わせたコスプレやキャラクター性の強調など、人物はもちろん撮影の場そのものも演出して作り上げた独自のYOKOO-KISHINワールド。人選も春川ますみや横山隆一、柴田錬三郎、川上哲治と大下弘など横尾さんの世界観がムンムンと漂っている。しかもその時代の空気が生々しくよみがえってくる見事な人選だ。懐かしさと危なっかしさの共存。甘いようで鼻にツンとくる感覚。同時代を生きた団塊より上の世代にはたまらない。

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 その後に撮影された数点は、横尾さんのアトリエの『シノラマ』や家族の肖像。こうやって見てくると、この展覧会は横尾忠則という天才の生き様と交友関係を通して、ある時代の日本を切り取って私たちの目の前に差し出してくれたようなもの。若い人たちには父親母親、もしかしたら祖父母の時代がどんなものだったのか、「三丁目の夕日」よりもう少し後の、もう少しビターな切り口を味わって欲しいと願います。そして横尾忠則や篠山紀信が大先生になる前の、情熱とエネルギーと狂気を感じてみてください。

記憶の遠近術
篠山紀信、横尾忠則を撮る

横尾忠則現代美術館
2014年10月11日(土)~2015年1月4日(日)

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2014年11月20日 (木)

METから、古代エジプト展

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 ニューヨークのメトロポリタン美術館が誇るエジプト・コレクションから、“女性”をテーマにした名品約200点がやってきました。METはとんでもなくでっかい美術館。フェルメールや尾形光琳などなど見たいものがいっぱいあって、それらを優先しているとエジプト・コレクションまで手が回らずまだ見たことがなかった。ただしエジプトものが素晴らしいことは知っていました。METのシンボルキャラクターが古代エジプトの青いカバ、ウィリアム君だから。(今回は来ていませんが)
 じっさい見ていくと、女王ハトシェプストや女神ハトホルの石像や壁画、豪華な宝飾品や鮮やかに彩色された木の棺など粒ぞろいだ。とても3000年、4000年を経ているとは思えないほど保存状態が良い。

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 会場の神戸市立博物館はスケールはぐっと小ぶりだけれど、どことなくNYのメトロポリタンに似てるでしょ。新古典主義様式というのでしょうか、古代ギリシャ神殿のような重厚なファサード。そんな場所でMETのコレクション展を開催するなんて、なんとなく微笑ましい。
 展示会場を出てグッズコーナーをのぞくと、ウィリアム君がいました。Photo_5 ぬいぐるみやTシャツで。以前からなぜウィリアム君は青いのか?疑問に思っていましたが、今回の展覧会を見て謎が解けました。この青い素材は陶器で『ファイアンス』と呼ぶようだ。今回の展示200点のうちなんと40点ほどがこの青いファイアンスなのです。石やアラバスターやブロンズ・・・素材はいっぱいあるのに。よほど当時の王さまやお妃さまに好まれたのでしょう。スカラベやビーズはもちろん、チェスのようなゲーム盤や神事の道具にまで印象的な青いファイアンが使われていました。

メトロポリタン美術館
古代エジプト展 --女王と女神 - -
神戸市立博物館
2014年10月13日~2015年1月12日(月・祝)

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2014年9月26日 (金)

高谷敏正さんの『陶』展

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 『陶器』ではなく『陶』の展覧会である。いま神戸のGYALLERY北野坂で開催中の展覧会。『器』という字は、陶器、漆器、紙器、ガラス器など素材から使われる場合もあれば、食器、花器、酒器、なかには凶器なんてまがまがしいものまで、使い道で呼ぶ言い方もある。いずれにしても『器』というのはモノの役に立つ道具をいう。それから発展して、はたらきや才能を表す意味が出てきたはずだ。大器晩成などという使い方がそれです。

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 それはさておき、高谷さんが自分の個展を『陶器』展と名乗らず、『陶』展としたのは「生活の役に立つ道具」というには自分の制作哲学が違うところまで来てしまったからだろうと思う。もちろん役に立つ器を否定するのではなく、それよりも美しい、オモシロイを優先したほうが自分の意識に正直だ、と良い意味で開き直ったのでしょう。その結果、それがちゃんとアート作品になり、公募展に出品すれば必ず大きな賞をもらう、使える器も個性があふれ出る、という好循環になっている。どのジャンルでも勢いがある、乗っているというのはこんなことかもしれません。

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 もともと、建築家である彼が作る陶器作品は一般的な陶芸家の作品とは、まったく別物だ。作り方もおもしろい。まずイメージを設計図に書いて、それから作り始める。だから作り出す作品も、構築的なのだ。それこそ幾何学などを駆使して造形する。そしてそれを実現するための方法論を工夫して、新たに技術を発明しながら作り上げる。なかなか大変なことだと思う。しかし大変なことをしているんだぞ、というような気負いはまったくなく、むしろひょうひょうとしたユーモアを感じる。自分自身に自信を持っているからこその余裕の作風だ。
 「過去の名品を見るのも好きで、いいなと思うのも数多い。でもそれを目指したり似たものを作ろうとは一切思わない。常に今までになかったものを作ろうと考えています」という彼は、生粋のクリエーターなのでしょう。

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 曲線の美しいもの、直線の組み合わせが力強いもの、なにかヨーロッパ中世の城壁都市のようなもの、まるで年季を経た木材のような質感、思いがけない色の変化・・・。陶芸というのは「用の美」という言葉に代表されるように、「役に立つ」器を前提としてきた伝統の世界に、彼は新しい自由の風を吹かすチャレンジをしているのだ。観る側のイマジネーションに挑戦するような、と言って軽々しくオブジェなどと呼べない奥深く刺激的な世界を作り上げる彼の『陶』。機会があれば、ぜひこの世界に浸ってみてください。

高谷敏正 陶展

2014年9月23日(火)~28日(日)
GALLERY 北野坂
神戸市中央区山本通 1-7-17

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2014年9月11日 (木)

カク×カク×シカク展へ

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 いまギャラリーSPOONさんで開催されている、「カク×カク×シカク」展がおもしろい。佐藤邦雄さんや西口司郎さんをはじめSPOONさんゆかりのアーティスト100名が、各3点ずつのオリジナル作品を持ち寄った展示は圧巻です。PECHUさんも金魚を3点出品しています。

Pechu
 テーマは自由で100人の作品、となると見た目もバラバラで散漫な印象になりがちだ。でもこの展覧会は統一感があって、とてもいい。その理由は、展覧会名がなぜ「カク×カク×シカク」なのか?というところにある。 それは100mm×100mmの木の板を使った展覧会だから。サイズとカタチが同じなので、作品が展示された壁面は、カラフルなタイルを貼りつめたような美しさ。この素材はなにかの製品加工のときに出た端材だそうです。「とてもエコでしょ」と、担当者は言います。たしかに、捨てられる運命にあった素材に目を付けてアート作品に再生させたのが素晴らしい。この時点で企画の成功が五割がた約束されている。

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 同じ土俵を与えられた展覧会、というのはアーティストたちは燃えるものです。他の作家さんより目立つよう、誰も思いつかないここぞ!のアイデアと技術を盛り込もうと力を注ぐ。
 100mm四方に自分だけの小宇宙を創る人。3点をつなげて1つの作品に仕上げた人。木の板ならではの木目を生かした人。なかには木版画の版木に使って、その版木そのものを作品にした西山友貴さん。立体作品を置く土台に使ってしまった梶川達美さんなど、あオモシロイ!へぇこんな使い方もあるんだ!と驚きと感嘆の連続でした。

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 一点一点は小さいながら、ギュッと凝縮された各アーティストの独自の世界。思わずうなってしまう技から、こんなのアリ?と笑ってしまうものまで。観る側のアタマを刺激し揉みほぐしてくれる展覧会、ぜひSPOONさんまで足を運んでください。地下鉄谷町線「天満橋」駅4号出口から、歩いて約8分です。

ギャラリーSPOON
企画展 カク×カク×シカク
2014年9月8日(月)~10月3日(金)
11時~19時 土日祝休み
大阪市中央区釣鐘町2-3-17 ベルハウス
Tel. 06-6943-1166

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2014年8月30日 (土)

園川絢也 ウハッと自分、生える展

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 いまブリーゼブリーゼで開催中の園川絢也「ウハッと自分、生える」展。なかなかの力作で、見れば見るほど味わいが深くなります。現代アートというのは、わかりにくく考えれば何が何だかワケがわからん、となる。でも無心になって眺めていれば、いろんなものが見えてくる。いろんな思いが湧いてくる。これでいいのだ!(バカボンのパパみたい)
 この世界にウハッと生えてきて、ウドメキながら成長し、やがて熟し腐る。これは人間も他の生き物も、社会も歴史もアートも、みんな同じ。クヨクヨ、アクセクしても、どうせ同じ。それなら他人の目など気にせず、自分の思いに正直に生きたらいいじゃないか。

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 この造形物、鮮やかな赤やピンク色したビニールの巨大なネットのようだ。何でできているかといえば、金属の薄板に切れ込みを入れて広げた金網のような素材で大まかなカタチを作り、それに絵具を混ぜて彩色した接着剤を流し、貼り付け、乾燥させたもの。触れば柔らかく弾力がある。彼の過去の作品を紹介する映像を流すデジタルフォトフレームを置いた台、そのテーブルクロスも同じく接着剤でできた作品です。ぜひ触ってみてください。このつやつやして硬質な見た目とは違って、ムニュッとした触感もまたおもしろい。

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 こういう立体的な造形は、見る方向や高さによってずいぶん印象が変わる。こっちから見、あっちから眺め、1階から見上げ、2階で正対し、3階から見下ろし・・・。新たな発見に一人ニヤニヤするのも、現代アートを楽しむ秘かな喜びです。みなさんも自分自身の見方で、園川絢也のアート作品をお楽しみください。

園川絢也「ウハッと自分、生える」展
2014年8月25日(月)~9月7日(日)
大人のベルギービアガーデン
DOLPHINS
ブリーゼブリーゼ 1階
JR大阪駅桜橋口より徒歩5分
地下鉄西梅田駅より徒歩3分

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