ド派手な棺桶と祖先の像
民博の『イメージの力』展でいちばん衝撃を受けたのが、これ。ライオンからジェット機まで、ド派手な色とカタチが並ぶコーナーはアフリカのガーナ、棺桶のオンパレードです。これらは死者の職業や趣味にちなんで遺族が発注して作るという。ライオンやヒョウの棺桶は生前ハンターとして知られていた人物の葬儀で用いられた。イカや魚の棺桶は元漁師のもの。ベンツに乗っていた人、あるいは乗りたいと願っていた人物にはベンツの棺桶。世界を飛び回っていた国際的ビジネスマンの棺桶は、ブリティッシュエアウェイのジェット機というぐあい。
写真でご覧になるとオモチャのように感じられると思いますが、人を寝かせて入れるのだからそれなりの大きさがあります。リアルな存在感があります。死者を称賛する、葬儀を盛り上げる、死者にあやかって残された者の権威を高める・・・いろんな意味があるのでしょう。ま、それにしても直接的で欲望むき出し、すごい迫力です。日本人の死生観とはずいぶん違う。どちらかと言えば、古代エジプトのファラオが死後も不自由しないように船や武器、装身具や財宝を一緒に埋葬したのと似てるかもしれない。
そして世界中どこでも同じなのだが、美術・文化・宗教の発祥は誕生と死。誕生とはその民族の祖先は何か?ということ。人型の祖先を神とあがめるパターン。強い動物、たとえばワニなどを祖とする系譜。また太陽や海など自然の事物から生まれたという民族。それぞれがそれに見合う神話を持っている。表現方法も具象もあれば抽象もある。そのどれもが極めて高度な知性とイマジネーションでできているのが驚きだ。
ピカソや岡本太郎をはじめ、20世紀以降の芸術家がこれらにインスピレーションを受けて、素晴らしい創作をしたのもよくわかる。これからも、アーティストは自己の表現に行き詰ったら原点へ戻れ、じゃないけれど民博のコレクションを観に行くといい。その根源的なパワーに触れることによって、きっとあたらしい道を見つけるヒントに出会えることでしょう。
『イメージの力』展はもう終わりましたが、これらは民博の収蔵品ですから、今後も別の切り口で順次展示されるはず。またの機会をお楽しみに。
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