向井理依子さんの額装展
フランス額装家の向井理依子さんの個展、いつものことながらほんとうに素晴らしい。ギャラリーという仕事柄、額装といえばつい「アート作品を飾るための入れ物」と思ってしまう。でも、展示されている向井さんの作品を見ていると考えが変わる。「アートを飾る」ためよりもっと広く「思いを飾る」ために額装はある、と。自分の好きなものがたまたまアートであっても、海辺で拾った貝殻であっても、思い出の写真であっても・・・周りのモノから区切って特別扱いしてあげることなんだなぁ、と。それらマイ・フェイバリット・シングスが時間、空間に埋没していかないように、いつまでも輝きつづけるように、ベストな居場所を作る達人なんだ、向井さんは。
ここで見られるのはクラシックレースや100年以上前の結婚式の招待状など、フランスのアンティーク。中世の楽譜や古い絵はがき。ウニの殻やヒトデなど自然からのもの。それぞれが自分に一番似合う衣装を着せてもらって、そっと微笑んでいる。そんな風情だ。
もちろんそれらは向井さんが見つけたものたち。彼女のセンスと美意識が凝縮されている。でもマネをする必要はありません。「思い」は一人ひとり違うのだから自分自身の「思い」を額に入れて楽しむのがいいのでしょう。記憶はどんどん薄れていく。だからこそ大切な「思い」は特別に囲っておかないと風化する。時間は残酷ですから。と言われても技術がないからなぁ、あきらめるしかないか、と思った人は向井さんにお願いして作ってもらうという手もある。ただし忙しい方だから、受けてもらえるかどうか。まずはこの展覧会をご覧ください。
向井理依子 額装展
11月25日(火)~12月7日(日)
期間中無休 12時~18時
MARUNI
神戸市中央区栄町通3-1-7
栄町ビルディング4階
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