ムゼオ・ノヴェチェント
ノヴェチェントは日本語では900。美術用語では1900年代、つまり20世紀のこと。だからムゼオ・デル・ノヴェチェントは1900年代つまり20世紀美術館、あるいは現代美術館という意味になります。それが歴史をウリにする街フィレンツェに今年の6月24日にオープンしました。まだ半年足らずの出来たてほやほやです。デ・キリコやモランディや、フォンタナやマリーノ・マリーニなど、イタリアの現代作家を中心に300点あまりの作品を収蔵。
フィレンツェらしく古い修道院を回収した建物。こんな何百年も前の街並みが残るルネサンス文化発祥の都市で、最先端のアート拠点ができるのは素晴しい。失礼な言い方ですが、やっとフィレンツェもそれに気付いたのかもしれません。もちろんボッティチェッリやミケランジェロを目的にこの街を訪れるのも素晴しい。でも長く暮らすにはそれだけでは、息がつまりそうさだ。
こんな現代アートの拠点がフィレンツェにできるとは、10年前にロングステイしたときは考えられなかった。当時でも優秀な学生が集まる美術大学はあったけれど、ここの世界に冠たる文化・歴史に圧倒されていたように思う。ダヴィンチ、ダンテ、ドナテッロ、ラファエッロ、ブルネレスキ、マキャベリ・・・千年に一人出るか出ないかというとてつもない才能が、百年ほどの短い間に集中した奇跡の都市。圧倒されるのも無理はない。
ここにきて呪縛から解き放たれて、新しい動きが現れてきたこの街に、私は期待しています。ノヴェチェントが古い修道院の回廊に、現代アート作品を展示されているのがすごくマッチしているように、美しいかどうかの基準で見ると、時代を超えた美が確かに存在する。こんな本物を実際に見る機会が多い環境こそ、新しい芽を育むのでしょう。
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