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2014年11月

2014年11月29日 (土)

向井理依子さんの額装展

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 フランス額装家の向井理依子さんの個展、いつものことながらほんとうに素晴らしい。ギャラリーという仕事柄、額装といえばつい「アート作品を飾るための入れ物」と思ってしまう。でも、展示されている向井さんの作品を見ていると考えが変わる。「アートを飾る」ためよりもっと広く「思いを飾る」ために額装はある、と。自分の好きなものがたまたまアートであっても、海辺で拾った貝殻であっても、思い出の写真であっても・・・周りのモノから区切って特別扱いしてあげることなんだなぁ、と。それらマイ・フェイバリット・シングスが時間、空間に埋没していかないように、いつまでも輝きつづけるように、ベストな居場所を作る達人なんだ、向井さんは。

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 ここで見られるのはクラシックレースや100年以上前の結婚式の招待状など、フランスのアンティーク。中世の楽譜や古い絵はがき。ウニの殻やヒトデなど自然からのもの。それぞれが自分に一番似合う衣装を着せてもらって、そっと微笑んでいる。そんな風情だ。Photo_5
 もちろんそれらは向井さんが見つけたものたち。彼女のセンスと美意識が凝縮されている。でもマネをする必要はありません。「思い」は一人ひとり違うのだから自分自身の「思い」を額に入れて楽しむのがいいのでしょう。記憶はどんどん薄れていく。だからこそ大切な「思い」は特別に囲っておかないと風化する。時間は残酷ですから。と言われても技術がないからなぁ、あきらめるしかないか、と思った人は向井さんにお願いして作ってもらうという手もある。ただし忙しい方だから、受けてもらえるかどうか。まずはこの展覧会をご覧ください。
 

向井理依子 額装展
11月25日(火)~12月7日(日)
期間中無休 12時~18時
MARUNI
神戸市中央区栄町通3-1-7
栄町ビルディング4階

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2014年11月26日 (水)

篠山紀信 vs. 横尾忠則

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 1968年の三島由紀夫にはじまり、1970年代半ばまで。嵐寛寿郎、高倉健、鶴田浩二、手塚治虫、美輪明宏、深沢七郎、浅丘ルリ子、瀬戸内寂聴、唐十郎、カルロス・サンタナやポール・デイビスなど、横尾忠則が憧れた映画スターや作家、デザイナーなどと共演(?)した篠山紀信による写真集『記憶の遠近術』から、約70点が展示されている。

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 共演相手に合わせたコスプレやキャラクター性の強調など、人物はもちろん撮影の場そのものも演出して作り上げた独自のYOKOO-KISHINワールド。人選も春川ますみや横山隆一、柴田錬三郎、川上哲治と大下弘など横尾さんの世界観がムンムンと漂っている。しかもその時代の空気が生々しくよみがえってくる見事な人選だ。懐かしさと危なっかしさの共存。甘いようで鼻にツンとくる感覚。同時代を生きた団塊より上の世代にはたまらない。

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 その後に撮影された数点は、横尾さんのアトリエの『シノラマ』や家族の肖像。こうやって見てくると、この展覧会は横尾忠則という天才の生き様と交友関係を通して、ある時代の日本を切り取って私たちの目の前に差し出してくれたようなもの。若い人たちには父親母親、もしかしたら祖父母の時代がどんなものだったのか、「三丁目の夕日」よりもう少し後の、もう少しビターな切り口を味わって欲しいと願います。そして横尾忠則や篠山紀信が大先生になる前の、情熱とエネルギーと狂気を感じてみてください。

記憶の遠近術
篠山紀信、横尾忠則を撮る

横尾忠則現代美術館
2014年10月11日(土)~2015年1月4日(日)

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2014年11月23日 (日)

現代版だまし絵 礼賛

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 いま兵庫県立美術館で開催されている「だまし絵 Ⅱ」展。2009年に大好評だった展覧会の続編です。ポスターやチラシにフィーチャーされている作品こそアルチンボルドの『司書』だけれど、中核となるのは20世紀後半から現代にいたるコンテンポラリーアート。これがマグリットやエッシャーなどよりはるかに面白い。そりゃ当然か。これら先人のアイデアを研究し、技術もはるかに進歩して、多様な素材が出現して、そりゃ面白くならないわけがない。

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 すりガラスやミラーを利用したり、映像の冒険をしたり、立体物で表現したり、写真技術でだましたり、光と影を活用したり・・・。現代の作家たちは、ありとあらゆる手法を考案して、未だ見たこともないヴィジュアルで楽しませてくれる。気に入った作品の作家名だけでも紹介しておこう。
 レアンドロ・エルリッヒ、田中偉一郎、ラリー・ケイガン、メアリー・テンプル、福田繁雄、ゲルハルト・リヒター、パトリック・ヒューズ、フーゴ・ズーター、エヴァン・ペニー、ヴィック・ムニーズ、杉本博司、チャック・クロース。ま、この展覧会はいくら画像で見ても面白さは半分も伝わらない。現物を見て、気持ちよくだまされてください。それしかありません。

だ ま し 絵 Ⅱ
兵庫県立美術館
2014年10月15日(水)~12月28日(日)

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2014年11月20日 (木)

METから、古代エジプト展

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 ニューヨークのメトロポリタン美術館が誇るエジプト・コレクションから、“女性”をテーマにした名品約200点がやってきました。METはとんでもなくでっかい美術館。フェルメールや尾形光琳などなど見たいものがいっぱいあって、それらを優先しているとエジプト・コレクションまで手が回らずまだ見たことがなかった。ただしエジプトものが素晴らしいことは知っていました。METのシンボルキャラクターが古代エジプトの青いカバ、ウィリアム君だから。(今回は来ていませんが)
 じっさい見ていくと、女王ハトシェプストや女神ハトホルの石像や壁画、豪華な宝飾品や鮮やかに彩色された木の棺など粒ぞろいだ。とても3000年、4000年を経ているとは思えないほど保存状態が良い。

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 会場の神戸市立博物館はスケールはぐっと小ぶりだけれど、どことなくNYのメトロポリタンに似てるでしょ。新古典主義様式というのでしょうか、古代ギリシャ神殿のような重厚なファサード。そんな場所でMETのコレクション展を開催するなんて、なんとなく微笑ましい。
 展示会場を出てグッズコーナーをのぞくと、ウィリアム君がいました。Photo_5 ぬいぐるみやTシャツで。以前からなぜウィリアム君は青いのか?疑問に思っていましたが、今回の展覧会を見て謎が解けました。この青い素材は陶器で『ファイアンス』と呼ぶようだ。今回の展示200点のうちなんと40点ほどがこの青いファイアンスなのです。石やアラバスターやブロンズ・・・素材はいっぱいあるのに。よほど当時の王さまやお妃さまに好まれたのでしょう。スカラベやビーズはもちろん、チェスのようなゲーム盤や神事の道具にまで印象的な青いファイアンが使われていました。

メトロポリタン美術館
古代エジプト展 --女王と女神 - -
神戸市立博物館
2014年10月13日~2015年1月12日(月・祝)

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2014年11月17日 (月)

加藤泉さんの異星ワールド

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 その原初的、その未来的、その宇宙的・・・言葉ではうまく表現できない魂の奥深くに響いてくるカタチ。いつものことながら加藤泉さんの作品はすごくチカラがあります。
Photo_2  六甲山と有馬温泉を結ぶロープウェーの六甲山頂駅に、いまは廃線になったロープウェー車両がそのまま置いてあります。以前は六甲ケーブル山上駅とここを結んでいて、ケーブルカーとロープウェイを乗り継いで有馬温泉までハイヒールで行ける、というものだった。でも摩耶山からケーブル山上駅、高山植物園、ガーデンテラスへと、バスの便がたくさんあって競争に負けてしまったのでしょう。(その片割れはケーブル山上駅の下に残っている)
 その駅と車両しゃくなげ号を、まるで遺跡のようなとらえ方で時空を超えたアート空間に変えてしまった加藤泉さん。昨年は高山植物園で、寝転がった身体から木が生えてきた人間、あるいは宇宙人、あるいは生命を表現して楽しませてくれましたが、今年は駅の廃墟と捨て置かれた車両が舞台。

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 最初の写真はその車両の中に置かれた作品です。天井からぶら下がった異星人のような姿も見えます。コンクリート壁の梁の上にはだれか座っています。どうもこの場所は平成の、日本の、六甲山ではないようだ。Photo 何億光年も遠く離れたどこかに地球そっくりの星があって、あなたや私に似たような似てないような生命体が普通に生活している。あっ、もしかして天国とか神さまってこんな感覚? 廃線になった駅、という美しくもなく面白味もない場所が、がぜん輝いてきた。場の磁力を発している。
 三体の作品のみに目がいっていたが、じっくり見ているうちに作品の周りの空間がじんわり濃密になってくるのを感じる。さすが、加藤泉。六甲ミーツ・アートも残り期間はあとわずかになりましたが、ぜひ足をお運びください。

六甲ミーツ・アート 2014
2014年9月13日(土)~11月24日(月・祝)

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2014年11月14日 (金)

内と外、あるいは人工と自然

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 建物の壁から屋根に大きな木(?)がからみついている。うねうねとツタのように這うこの物体。木でできたテープのような、カンナで削った木片のような・・・。六甲ガーデンテラスのホルティという施設に設置された中川悠紀の作品『内と外』。
 作品の解説には、「木材をまげて建物の内外に造形的に配置、クランプやビスで固定しています。木材は二つの窓を抜けてつながり構造体としてはひとつのものになっています。」 たしかにホルティの中に入っても木がうねうねと這っている。作者は、内と外のあいだ、ものとものとの中間、という概念を表現しようとしたようだ。

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 私はこの作品を見て人類が滅亡した後、人工の建造物を自然の植物が覆い尽くしていくさまを妄想してしまった。人間 vs. 植物。人工 vs. 自然。科学 vs. 生命。結果は植物、自然、生命の圧倒的な勝利、生命の力は偉大だ! まさに妄想です。
 藤井保さんの『ニライカナイ』という写真集に、小笠原諸島で旧日本軍のトーチカがジャングルに呑み込まれてしまっている写真があったが、それを思い出した。藤井作品はリアルな迫力で、この中川作品はファンタジーで、同じような世界観を表現している。
 いろいろと観る者のイマジネーションを刺激する中川悠紀の作品。先日ご紹介したフィレンツェ・ストロッティ宮のフランコ・メニカーリの作品と相通じるものを感じる。いま世界はそんな時代に入っているのかもしれない。

六甲ミーツ・アート 2014
2014年9月13日(土)~11月24日(月・祝)

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2014年11月11日 (火)

風車?日傘?白い樹?

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 六甲山カントリーハウスの大芝生の丘の上に、白いモノが立ち並んでいる。これは半谷学さんの作品「NATURE UMBRELLA in Rokko Meets Art 2014」。秋晴れの青い空と芝生や木々のの緑に白がよく映えて、とてもすがすがしい。自然の中に人が作ったモノが入ると景観を壊しがちだが、さすがアート作品。景色にちょっといいアクセントを与えています。きっとサイズも程よいのでしょう。

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 都市や地方の人々の営みから生み出された、あるいは自然の中にありながら人々の暮らしのなかではゴミとして扱われるようなものを、独自の技法で創作活動に取り入れてきた作家の作品です。と説明されている。昨年の群馬県での発表から北海道の雪原での展示を経て進化してきたシリーズだそうだ。う~ん、真っ白い雪の中に白いオブジェ、想像するだけでもステキですね。

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 たぶん金属のパイプや、たぶん樹脂でできた網状のものを組み合わせて、それらを白く塗っている。そばで見るとそれが風に吹かれてゆっくり回っている。ゴミとして捨てられる運命にあったものを集めて再利用し、そこから新しい美をつくり出すという手法で環境問題を問いかける。声高に叫ぶのではなく、穏やかに静かに、環境問題について考えさせられるキッカケになっている。そんなスタンスが好ましいと思います。

六甲ミーツ・アート 2014
2014年9月13日(土)~11月24日(月・祝)

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2014年11月 9日 (日)

フィレンツェ市ゴミ箱の進化

 
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 このたびフィレンツェで1ヶ月暮らしてみて感じたのは、10年前に比べて公衆トイレの数が増え、しかも清潔になったこと。それにゴミの回収がとても手際よくなり、その結果、街が美しくなっていたこと。「やればできるやんか!」
Photo_3  今年の2月、イタリアの首相になった若くてハンサムなマッテオ・レンツィは、首相になる前まで5年間ほどフィレンツェ市の市長をしていた。今まだ39歳だが、聞くところによると彼はかなりやり手。たとえばドォーモ周辺をクルマの通行禁止にし、それにともないバス路線も大幅に変えた。だから大好きなフィエーゾレに行くにはサンマルコ広場から7番のバスに乗らなければいけないなど、不便なことも増えたが環境にはとてもいいこと。ゴミの回収システムの改善と進化も彼の政策の一つだそうだ。

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 ゴミ箱は落書きも多く汚かったが、きれいになっている。そしてゴミの分別が細かくなり、ゴミ箱の裏側に写真入りでわかりやすく表示されている。ゴミ箱の上にはステンレスの円柱がついているが、じつはこの部分からクレーンで吊り下げて回収車の荷台の上まで持ってきて、パカッと底を開くとゴミがきれいにトラックに収まる、という仕掛け。ワインの瓶とペットボトルを入れる大型のゴミ箱の回収も、運転手さんが一人で作業している。しかも車から降りることなく。へぇー!と驚く効率の良さ。
 イタリア人はすぐにストをするし、仕事の効率も悪いし・・・と偏見を持っていましたが、認識を改めます。スミマセン。さて、フィレンツェ市のような改革が国レベルでもできるか? 混迷のイタリアを救うことができるか? 若き首相の手腕に期待しましょう。

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2014年11月 7日 (金)

ムゼオ・ノヴェチェント

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 ノヴェチェントは日本語では900。美術用語では1900年代、つまり20世紀のこと。だからムゼオ・デル・ノヴェチェントは1900年代つまり20世紀美術館、あるいは現代美術館という意味になります。それが歴史をウリにする街フィレンツェに今年の6月24日にオープンしました。まだ半年足らずの出来たてほやほやです。デ・キリコやモランディや、フォンタナやマリーノ・マリーニなど、イタリアの現代作家を中心に300点あまりの作品を収蔵。

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 フィレンツェらしく古い修道院を回収した建物。こんな何百年も前の街並みが残るルネサンス文化発祥の都市で、最先端のアート拠点ができるのは素晴しい。失礼な言い方ですが、やっとフィレンツェもそれに気付いたのかもしれません。もちろんボッティチェッリやミケランジェロを目的にこの街を訪れるのも素晴しい。でも長く暮らすにはそれだけでは、息がつまりそうさだ。

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 こんな現代アートの拠点がフィレンツェにできるとは、10年前にロングステイしたときは考えられなかった。当時でも優秀な学生が集まる美術大学はあったけれど、ここの世界に冠たる文化・歴史に圧倒されていたように思う。ダヴィンチ、ダンテ、ドナテッロ、ラファエッロ、ブルネレスキ、マキャベリ・・・千年に一人出るか出ないかというとてつもない才能が、百年ほどの短い間に集中した奇跡の都市。圧倒されるのも無理はない。Photo_4
 ここにきて呪縛から解き放たれて、新しい動きが現れてきたこの街に、私は期待しています。ノヴェチェントが古い修道院の回廊に、現代アート作品を展示されているのがすごくマッチしているように、美しいかどうかの基準で見ると、時代を超えた美が確かに存在する。こんな本物を実際に見る機会が多い環境こそ、新しい芽を育むのでしょう。

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2014年11月 5日 (水)

フィレンツェの現代アート

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 街を歩いていたとき、「アレレッ、何だこりゃ」の光景に出合いました。ビルの壁面を登る白いクリーチャーたち! 体は人間だけど、頭はヒツジや鶏、オオカミや猫。空中にぶら下がっているヤツもいる。Photo_3 場所はベッキオ橋にほど近い路地。シモーネ・ダウリアの作品だ。メインの通りではないけれど、気づいた人がみんなこの路地をのぞき込んで写真を撮っている。
 下のベンチにも、同じ仲間が3体、展示されておりました。リアル過ぎてちょっと気味悪い気がするが、なかなかユニークだ。これらの作品は人間のなかの獣性を表しているのか、それとも人間の肉体の無限性を表現しているのか。いずれにしてもスペースをうまく活用して街を別次元の異空間に変えることに成功している。

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 借りているアパートの近所の広場では、ストリート系のアーティスト5人がカラースプレーでペインティングしている。どこの街でもおなじみの、ワインの瓶やペットボトルを捨てるゴミ箱だ。「どうせアートなんて使い捨てのゴミだ」と言わんばかりの心意気がおもしろい。何百年も前の美術品を大事に修復するだけに陥っているかのようなフィレンツェだから、よけい面白さが際立つ。

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 このまえピカソ展の記事でご紹介したストロッティ宮の中庭のインスタレーション。完成しておりました。ルネサンスの空間に、現代アートが違和感なくマッチしている。作家の名前はフランコ・メニカーリ。11月中旬まで展示されるらしい。
 いままで歴史的な名画や傑作彫刻に囲まれ押しつぶされそうになっていた若いアーティストが、いろんなスタイルで伸びのびと活動できるようになっているのを見て、うれしい思いがしました。過去の栄光だけではカビが生えたつまらないフィレンツェになってしまいますから・・・。

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2014年11月 3日 (月)

あぁ感動、レ・ミゼラブル

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 ウエストエンドのクイーンズシアターでレ・ミゼラブルを観劇。これもtktsで当日券があれば、ということでレスタースクエアまで行くと、ありました! めでたく半額でチケットをゲット!  ジェイミー・オリバーのダイナー・ダイナソーというテーマパークのようなレストランで早めの食事を済ませて、いざ劇場へ。これはチェコフィルの時のようにおめかしして、とは相成らず、朝ホテルを出たままのカジュアルな服装で。
 ブロードウェイでミュージカルは観たことがありますが、ロンドンでは初めて。やはり本場のミュージカルは感動ものでした。開演の最初の音、ダダーン!とオーケストラの音が響き渡った瞬間、もう背筋がビビッときました。

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 俳優さんたちの歌唱力も演技力も圧倒的です。生身の迫力というのでしょうか、これは映画や舞台のDVDなどでは決して味わえないもの。またトレヴァー・ナンの演出の見事さにも脱帽です。演劇では映画のようにカットでシーンを変えるわけにはいかないので、特に美術や照明が大切になる。これらの限られた要素の組み合わせで、時間の経過や場面転換をうまく表現していかなければならない。かなりの工夫とアイデアが求められる。たとえば、警部が最後にセーヌ川に身を投げる場面の演出は、映画よりはるかに劇的でリアリティがありました。これだけ長くロングランを続けているものには、当然それだけの理由があるのだな、と改めて感じた夜でした。
 10時過ぎには各劇場から出てきた人々でごった返すこの界隈。夜遅くまで(なかには24時間)走るバスや地下鉄もにぎわい、フィレンツェとは違う大都会の魅力を楽しみました。

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2014年11月 1日 (土)

子供は現代アートがお好き

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 テートモダンは小学生の美術の学習が、特に多いと感じる。それは子供たちが現代アートを好むからだと思います。大人はよく「現代アートは分からない」と言いますが、素直な子供にとって、ダヴィンチやレンブラントの絵画なんて退屈極まりないもの。それに反して、いろんな素材を使ったり落書きのように自由に描いたりする現代アートは、おもしろくて楽しくて想像力をふくらませるものに違いない。Photo_3
 いくつもの学校からやって来たグループが、迷子にならないようにおそろいのビブスを着けて行き来している。集まって先生の話を聞いている。そして自分が気に入った作品の前に座り込んでスケッチしている。実にうれしそうに、実に真剣に。
Photo_4  ピノ・パスカーリ、サイ、トゥオンブリー、ニキ・ド・サンファル、日本人の菅 木志雄などの作品の前で、床に座り込んでスケッチするなんて、うらやましい限りだ。芸術が身近にあるヨーロッパならではの贅沢。日本の小学校では、現代アートを前に美術の教育ができるトレーニングを受けた先生なんていないだろうし、小学生を大量に受け入れてくれる美術館もないだろう。あっても「お行儀よくしなさい」と抑えつけられる。これじゃ美術が嫌いになるのもとうぜんだ。

Homeworkers
 展示作家のなかで特におもしろかったホームワーカーズというグループを取り上げたい。この女性グループは70年代後半から活動を始めた。身近にあるストッキングや洗い物用スポンジやぬいぐるみ人形など、女性らしいグッズを組み合わせて作品を作る。Photo_5 それは女性が掃除、洗濯、料理をする存在だ、という偏見を浮かび上がらせ、ウーマンリブの時代を声高に主張を訴えることもなく、女性差別に対するアピールを静かに成功させた。また、このようにアートが政治的な役割を果たせることを知らしめるとともに、ごくごく日常的なモノがアートになることを教えてくれた。むしろこちらの功績のほうが大きいのかもしれません。
 テートモダンの作品について書きだすと、止まらなくなるのでもうこれぐらいに。それにしても、こんなに楽しい場所はありません。

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