たまゆら、竹久万里子のアート
六甲高山植物園とオルゴールミュージアムを結ぶ散歩道。長さ100mぐらいの木道、ゆるやかな坂の周辺の樹々に、それは設置されています。なんの変哲もないハイキングの写真、に見えますがその真ん中あたりの暗い部分に、白い点々がご覧いただけるでしょうか? これが竹久万里子さんの「たまゆら」という名の作品。それもほんの一部です。この白い点々は、じつはヒモで吊り下げられた鈴。太陽の光を反射して白く輝いているのです。その数は、ウン千! もしかしたら万を超えているかもしれない。
『たまゆら(玉響)』とは勾玉同士が触れ合ってたてる微かな音のこと。転じて「一瞬」あるいは「かすか」を意味する古語。この作品も、静かな大自然の中で、風が吹くと微かに音を立てる。しかも、あちらからも、こちらからも・・・。風の音や鳥の声、虫の声に混じって秘かに聞こえる人工的な音。しかしそれは決して不快ではない。じわっと包み込まれるような安らぎ。聞き耳をたて、五感を研ぎ澄ませ、自然の魂と直接対峙させるような不思議なパワーがある。強い力ではなく、惹きこまれるような静かな力。
「音に対する考察と、その音を生成するための仕組みを六甲山の自然にインストールしました。鑑賞者の感情を微かに、そして緩やかに揺り動かす空間をつくり出します」と、作家の竹久さんは言う。
大自然、という開かれた空間を微かな音で区切る。いわば音の聞こえる範囲でこの世とあの世の境界を創造する。あるいは、教会の鐘が聞こえる範囲がわが村(味方)で、その外は恐ろしい別世界(敵)、という中世ヨーロッパのようでもある。しかもその境界は固定されたものではなく、微妙に揺れ動きながら変わり続ける。それこそが、このアート作品のテーマ=「たまゆら」そのものなのだ。
六甲ミーツ・アート 2014
2014年9月13日(土)~11月24日(月・祝)
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