フィレンツェ室内オーケストラ
カルツァイオーリのオルサンミケーレ教会でのコンサート。教会コンサートと言っても毎晩観光客を相手に開かれているものとは一線を画す、フィレンツェ室内管弦楽団の定期演奏会に行ってきました。しかも、それがとても意欲的なプログラム。たまたま歩いていて見つけたコンサートにしては、上出来すぎる演奏でした。
オルサンミケーレは四方の壁にドナテッロやギベルティの彫刻の名品が飾られているので有名だが、それらはレプリカ。風雨や排気ガスなどで傷みがひどいので、じつは本物は内部に展示されている。それら聖人の彫刻にまわりを囲まれて演奏が行われる。だからここでは大編成のフルオーケストラは無理で、30人ぐらいの室内オーケストラにぴったりのサイズ。音の響きもとてもよかったです。
演目は、まずE.VELLA(ヴェッラ)の「Migranti」というタイトルの小品。日本語では、渡るもの、移動する人、あるいは渡り鳥というような意味でしょう。すごく現代的で音色が豊かな曲だな、と思って聞いていたら、終わったあと、30歳になるかならないかの若者がステージに呼ばれました。彼が作曲家で、しかもこの夜が初演だったようです。少し緊張気味の若い才能に観客から惜しみない拍手が送られました。
そのあとの二曲はベルリンフィルの首席フルート奏者を長く務めるアンドレアス・ブラウをソリストに迎えたフルート曲。モーツァルトの「フルート協奏曲第一番」と、フランソワ・ボルヌの「ビゼーのカルメンより、フルートとオーケストラのための幻想曲」、カルメンファンタジーと呼ばれるフルートの技巧を披露する華麗な名曲です。
ブラウのカルメンファンタジーは圧巻の一言。超絶技巧とゆたかな情感、哲学的な静けさとほとばしる情熱。この見事な演奏を、わずか3mほどの至近距離で聴けるのですから。もうサイコーです。2曲の演奏が終わると、全員スタンディングオベーション。鳴り止まない拍手に応えて、アンコールでカルメンのさわりを聴かせてくれました。
そしてインターミッションのあと、最後の一曲はシューベルトのシンフォニア第5番。流麗なアンサンブルで、室内楽ならではの魅力を満喫しました。手の届きそうな近さで世界最高峰の演奏を楽しむ。( しかも安い!) この世界に2つとないユニークなステージは、フィレンツェに旅行されたときはおススメです。うまくいいコンサートに出会えれば最高!
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