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2014年10月

2014年10月30日 (木)

メイプルソープのポートレート展

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 まったく予想してなかっただけに、ロバート・メイプルソープの「ポートレート & セルフポートレート」展を見られたのは、本当にうれしかった。テートモダンの一つの展示室で開催されていました。まさに、もうけものをした感じ。
 なんといっても凄かったのは自画像。各年代にわたって30枚ほど、そのすべてにアクの強いメイプルソープの顔がこちらを見ている。観客(あるいは社会)を憎んでいるのか軽蔑しているのか、挑発的な目でこちらを見ている。来ているコスチュームもロックスターのようだったり、内省的だったり、あるいはコスプレ風に何かになりきったり、とてもバラエティに富んでいる。シニカルなまでに自分を客観視するからこそ、できる表現なのかもしれない。とわかったとしても、天才じゃない我々ができるわけではないけれど。

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 アンディ・ウォーホールやリサ・ライオンやキース・ヘリングなど、その時代の先端を走っていた面々の個性ゆたかなキャラクターが、モノクロの印画紙に生き生きと定着されている。ポートレートがうまいフォトグラファーはいっぱいいますが、メイプルソープの感性はずば抜けている。
 彼のヌードや花をモチーフにした作品も素晴らしいけれど、ポートレートはまた格別だ。きっと対象となる人物のとらえ方が他の作家とは違うのだろう。一癖も二癖もある有名人を、言葉は悪いがたらしこんで自分の世界を創り上げる手腕は独特のものがある。こんなことができるのも、彼自身の魅力があってこそなのだろう。

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2014年10月28日 (火)

テートモダンは橋を渡って

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 テートモダンへは、ミレニアムブリッジを渡ってアプローチするのがいい。セントポール大聖堂を背に、美しい歩行者専用橋を歩いて近づいていくと、どんどん期待が高まってくる。 中に入ると、この元・火力発電所を美術館にリフォームした巨大な空間で、リチャード・タトルの巨大な立体作品が出迎えてくれる。クジラの内臓のような、あるいは生命の連鎖のような布と木の板を使ったこの作品は、見る場所によってカタチが変わり、はるか上の天窓から降り注ぐ光を受けて、反射と透過で色味も変わって美しい。

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 このスペースは小学生から大学生まで、座り込んでスケッチをしたり、輪になって議論したり、みんな思い思いに学校の課題をこなすには絶好の場所だ。アート教育って、こうあるべきだと考えさせられる。あ、そうそう、いま英国ではテートモダンに限らず大英博物館をはじめ主な美術館・博物館は入場無料です。Photo_4 『無料を維持するために4ポンド寄付を』などと書かれた箱が置かれていたり、サポーターを積極的に集めたりして経営努力をしている。日本も見習うべきでしょう。
 ここは世界でも有数の現代美術の殿堂だから、じっくり見ていたら3日はかかりそう。今回は4階と2階に的をしぼり、ささっと見たあとは6階の展望レストランで絶景を愛でながら食事を楽しみました。

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2014年10月26日 (日)

フィレンツェ室内オーケストラ

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 カルツァイオーリのオルサンミケーレ教会でのコンサート。教会コンサートと言っても毎晩観光客を相手に開かれているものとは一線を画す、フィレンツェ室内管弦楽団の定期演奏会に行ってきました。しかも、それがとても意欲的なプログラム。たまたま歩いていて見つけたコンサートにしては、上出来すぎる演奏でした。Photo
 オルサンミケーレは四方の壁にドナテッロやギベルティの彫刻の名品が飾られているので有名だが、それらはレプリカ。風雨や排気ガスなどで傷みがひどいので、じつは本物は内部に展示されている。それら聖人の彫刻にまわりを囲まれて演奏が行われる。だからここでは大編成のフルオーケストラは無理で、30人ぐらいの室内オーケストラにぴったりのサイズ。音の響きもとてもよかったです。
 演目は、まずE.VELLA(ヴェッラ)の「Migranti」というタイトルの小品。日本語では、渡るもの、移動する人、あるいは渡り鳥というような意味でしょう。すごく現代的で音色が豊かな曲だな、と思って聞いていたら、終わったあと、30歳になるかならないかの若者がステージに呼ばれました。彼が作曲家で、しかもこの夜が初演だったようです。少し緊張気味の若い才能に観客から惜しみない拍手が送られました。

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  そのあとの二曲はベルリンフィルの首席フルート奏者を長く務めるアンドレアス・ブラウをソリストに迎えたフルート曲。モーツァルトの「フルート協奏曲第一番」と、フランソワ・ボルヌの「ビゼーのカルメンより、フルートとオーケストラのための幻想曲」、カルメンファンタジーと呼ばれるフルートの技巧を披露する華麗な名曲です。
 ブラウのカルメンファンタジーは圧巻の一言。超絶技巧とゆたかな情感、哲学的な静けさとほとばしる情熱。この見事な演奏を、わずか3mほどの至近距離で聴けるのですから。もうサイコーです。2曲の演奏が終わると、全員スタンディングオベーション。鳴り止まない拍手に応えて、アンコールでカルメンのさわりを聴かせてくれました。

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 そしてインターミッションのあと、最後の一曲はシューベルトのシンフォニア第5番。流麗なアンサンブルで、室内楽ならではの魅力を満喫しました。手の届きそうな近さで世界最高峰の演奏を楽しむ。( しかも安い!) この世界に2つとないユニークなステージは、フィレンツェに旅行されたときはおススメです。うまくいいコンサートに出会えれば最高!
 

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2014年10月24日 (金)

イタリア新キッチン事情

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 3週間前になります。フィレンツェのアパートに到着して、設備の説明を受けていた時に感心したことがあります。なんと冷蔵庫や食洗機がビルトインされていたのだ。外から見ると四つ口のガスレンジとシンク、オーブン、電子レンジが見えるだけで、あとはたっぷりの収納スペース。いちばん右の縦長の上部が冷蔵庫、株が冷凍庫。その左が食洗機。やけにすっきりしているでしょ。これは白いシンプルなデザインのせいだけではない。
 日本のキッチンとの比較で考えると、当然のようにおいてある冷蔵庫がない、いやあるけど見えない。それだけで全然違う。ショールームのようなカッコよさを追求した家でもないし、特にお金をかけた設備でもないけれど、美しい。ごくごく一般的な暮らし、だと思う。
 日本では家電各社がそれぞれデザインを工夫している。しかし単体のデザインが頑張れば頑張るほど、キッチン全体として見れば統一感を崩し、部屋のデザインを悪くしている。ゴチャゴチャと汚く見えるのだ。

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 フォルテッサ・バッソで開かれていたインテリアショーを見に行った。モダンスタイル、田舎の農家スタイル、狭いキッチン、広いキッチンとさまざまなキッチンの提案がされている。Photo_3 素材も木、ステンレス、石、タイル、樹脂などいろいろ。そのどれもが冷蔵庫や食洗機はビルトインなのだ! 不思議なのは、「お、すごい、すごい!」というこちらの興奮に反して、イタリア人たちは特に関心を示すわけではなく、素材の大理石などをちょっと触るだけで通り過ぎていく。彼らにとっては、面白くもなんともない。う~ん、きっとこのビルトイン方式が常識なのだ。それに気づいて、ますます驚きました。しかもどの会社の製品も、中の冷蔵庫の扉と外の収納システムの扉が一体となってスムーズに動くよう、特別のレールと金具まで取り付けてある。見た目だけではなく、じつに機能的なのだ。

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 ビルトイン専用に作っている冷蔵庫メーカーがあるのか、それともビルトイン用の規格があって各社ともその規格に合う製品を作っているのか、実態は知らない。でも日本の家電メーカーや家作りは、イタリアに完敗だと思いました。いままで2回アパートを借りているが、以前は冷蔵庫が見えていたよなぁ。とすれば最近の潮流かもしれない。なら、日本もそれに習って変わっていくのかな。

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2014年10月22日 (水)

ストロッティ宮でピカソ

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 フィレンツェで「Picasso e la modernita' spagnola (ピカソとスペイン20世紀の画家たち)」展を見ました。場所はストロッツィ宮。ルネサンス期から続く石組の建物がたくさん残るフィレンツェでも、特に大きな石を積み上げられたこの宮殿は、アートイベントや ファッションイベントなどによく使用されている。
 今回の展覧会は1910年から1963年までのパブロ・ピカソの絵画、版画、立体作品、陶器など90点と、同時代のダリ、ミロ、タピエスなどスペインを代表する画家の作品で構成されている。バスの車体に大きく広告を出したり、いろんなところにポスターを掲示したり、積極的なマーケティング活動のせいもあって、連日、大盛況です。

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 展示作品はマドリードのソフィア王妃芸術センターから持ってこられたものである。あの『ゲルニカ』を展示している20世紀以降の近現代美術の殿堂だ。一昨年の秋に見に行ったけれど、建物も展示作品も素晴らしい美術館です。もちろんゲルニカ本体は門外不出なのでマドリッドから動かせない。だからゲルニカ関連は、馬や泣く女、牡牛などのスケッチが展示されている。長い歴史に囲まれた街・フィレンツェではうれしい企画だ。
 というのもフィレンツェにはルネサンスからバロックにかけての、人類の至宝とも言える名画、傑作彫刻がごろごろあるが、現代アートはマリーノ・マリーニ美術館以外、見るべきものがなかった。それでも観光客は世界中から来てくれるし、なにも現代アートまで力を入れる必要はないと考えていた街だ。ちょうど大仏さんがあれば観光客は来てくれるという奈良のように。

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 ところが最近は少し様相が変わって来たようです。今年の6月にはMUSEO NOVE CENTO(20世紀美術館)がサンタ・マリア・ノヴェッラ広場に面した由緒ある建物の中にオープン!(これは後日紹介しようと思います) ここストロッツィ宮でも、ちょうど若いアーティストが中庭でインスタレーション作品の展示作業を行っていました。こんな芽が順調に育って、過去の栄光の歴史だけではなく未来に向かうフィレンツェになればすてきだと思います。
 

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2014年10月20日 (月)

マッラーディの栗まつり

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 フィレンツェからファエンツァ行の列車で1時間20分ぐらい、トスカーナ北東部の山の中の小さな村がマッラーディ。ここで10月の毎日曜日、村を挙げての栗まつりが開催されます。Photo_5 列車の乗客はほとんどがここの駅で降りる。普段は静かなこの村が、大賑わいを見せる栗まつり、今年で51回目だそうだ。
 いろんな種類の栗をはじめ地元で採れた果物、野菜、ハチミツ、チーズ、ハム、ソーセージ、ワインなどの露店がずらり。食品だけではなく、台所道具や子供のおもちゃ、洋服から栗の木を使った家具やアンティークを扱う店まで。これらの店の広がりをみると、観光客を相手にするだけの祭りではなく、地元の人々も毎年楽しみにしていることがよくわかる。

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 いっぱい並ぶ焼き栗屋さんも、回転する機械を使ったり昔ながらの鍋をあおったり、さまざまな焼き方で味を競う。またマロングラッセのような栗そのもののカタチを生かしたお菓子や栗粉を使ったケーキなど、いかにも手作りという感じの素朴な味。トスカーナの秋を実感する。Photo_6
 お菓子の名前を挙げるとクッキーの上にマロングラッセをのせたようなバルチェッテ・ディ・マローニ、典型的な栗のケーのトルタ・ディ・マローニ、パスタ皮で栗クリームを包み込んだトルテッリ・ディ・マローニ、栗粉をバターやミルクで練ったものを揚げたフリッテッレ・ディ・ファリーナ・ディ・マリーニ。串に5粒刺してキャラメルを塗った、まるで「みたらし」のようなものも。
 いずれも有名パティシエが作るような洗練はないが、素材の良さがしみじみと伝わってくる。

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 昼食は地元のテニスクラブが栗まつりのときだけ開いている大食堂でいただく。この村にあるレストランやカフェだけでは祭りに押し寄せる観光客はとても収容できないだろう。Photo_4 だから、このときとばかりクラブ会員が総出でオモテナシ。小学生ぐらいの子供たちまでお手伝いです。みんなおそろいのTシャツでかいがいしく働いていて、見ていてとても気持ちがいい。料理もキノコやイノシシなど、地元の名産がふんだんに使われた家庭料理。マンマの味だ。
 おいしいだけではなくお値段も手ごろだし、なにより一生懸命さがいい。店の飾りつけも手作り、薪で肉を焼く人、キャッシャーでお金を扱う人、英語で案内をする人、それぞれ自分のできることを分担して、多くのお客さんを迎えている。おすすめです。
 
 

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2014年10月17日 (金)

チェコフィルの夕べ

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 プラハへ来た理由の一つが、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会を聴くこと。彼らの本拠地、ルドルフィヌムにあるドヴォルザーク・ホールで夜7時半から10時ごろまで、ゆたかな音響のホールで珠玉の演奏を楽しみました。このオーケストラの歴史は1896年にこのホールでドヴォルザーク自身の指揮で始まったという。そんな由緒ある場所だと聞くと、この場にいるだけで幸せになる。Photo_3
 また、ここは『のだめカンタービレ』の映画の撮影に使われたホールだそうです(残念ながら観てません)。のだめと千秋がヴィエラ先生指揮の演奏を聴いた場所なんだって。ファンの方、いい加減な説明でごめんなさい。
 特にドレスコードがあるわけではありませんが、観客のみなさんは精一杯ドレスアップして集まっている。私たちもこの日のために持ってきた服に着替えて、その雰囲気に溶け込む。そして演奏が始まる前にシャンパンやコーヒーで高まる気持ちをリラックスさせて席に着く。

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 この夜の指揮はマンフレード・ホーネック。演奏が始まる前に、レコーディングを行うので協力お願いします、とのアナウンス。演目はヤナーチェクのオペラ『イェヌーファ』からの組曲。リヒャルト・シュトラウスの『死と変容』。マーラーの『少年の魔法の角笛』。どれもチェコゆかりの作曲家が19世紀終わりごろに作った曲。後期ロマン派(?)のドラマティックな表現と多彩な音色を駆使したオーケストレーションで、さまざまなイメージを喚起させる曲の組み合わせ。聴衆を飽きさせない見事な演奏でした。
 マーラーの歌曲集はバリトン歌手のマティアス・ゲルネがソリストで参加。少年の希望と挫折、成長と悲劇的な結末を圧倒的な表現力で歌い上げる。終わっても拍手鳴り止まず。何度も何度もあいさつに現れました。
 チェコフィルの高い技量、ホール全体が一つの楽器になったようなハーモニー。感動を反芻しながら、ひんやりした夜風に吹かれてブルダヴァ川に沿ってホテルまで歩きました。

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2014年10月14日 (火)

プラハ名物、天文時計

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 あれは何だ!という感じで上を見上げる人々。だけどスーパーマンが飛んでいるわけではありません。Photo_8 ここはプラハの観光名所、時計塔の前なのです。塔に登って見下ろしたのが、この写真。毎時00分からの、人形カラクリの動きを見るために世界から観光客が集まってくる。
 もともとチェコは工業、技術が進んでいて、とくに時計や銃など精密機器の製造には定評がある。ユーロに加盟した今は、そんな土壌と人材を求めて自動車メーカーをはじめ多くの大企業が工場進出をはたしている。日本企業もユーロッパの生産拠点として、たくさんの会社がやってきている。それもこんなに古くからの伝統のたまものなのだ。

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 1410年にできた古い古いカラクリ時計。毎時00分に数分だけのショーだけれど、聖人やドクロが時報を告げながら出てきます。天文時計というのは天体の運行を表示する機械だ。
ケプラーも招かれてプラハに住んでいたぐらいだから、中世ヨーロッパの科学や学問の中心地の一つだったのでしょう。
 この古い時計台があるせいか、チェコの人たちは時計が好きなようだ。レストランやホテルでも、いっぱいのアンティーク柱時計や懐中時計を飾っているのを見かける。あ、それにみんな時間に正確だ。あまり無駄口をたたかず、シャキシャキと行動する。これも国民性なのでしょうか。

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2014年10月11日 (土)

プラハの秋

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 プラハはもう秋が深まっている。夜になるとだいぶん冷えてくるから、ウール、レザー、ダウンのジャケットやコートが必要だ。夜明け前、カレル橋にむかうとすでに世界各国からやって来たアマチュアカメラマンが、いい撮影ポイントを探しながら日の出を待っている。だけど残念ながらこの日は曇りで朝日は拝めません。とはいえ十分美しい風景に出会えました。チェコってビールがおいしいだけではない。いっぱい見どころがある国なんだ。

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 この写真の風景は、ちょっとハリーポッターの世界に似ていませんか? プラハにはホグワーズ城のような建築、ゴシックの聖堂、ロココやアールデコの街並み、なんとキュビズム建築まで・・・美しい歴史的建造物が数多いPhoto_7 。まるでテーマパークのようであります。映画『アマデウス』をこの街で撮影した理由がよくわかる。もちろん電線もありません。
 街の中心部の旧市街は、ホント、おとぎの国の風情です。それに街自体がとても清潔だ。(フィレンツェから来たから、よけいそう感じるのかもしれないが・・・) 公園や緑地も多いから、リラックスできる。まわりに小高い山もあって立体感に富んだ景観は、本当に美しいものです。

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2014年10月 8日 (水)

角文平がつくった熊の森

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 角文平さんのアート作品『熊の森』の説明文です。
「木彫りの熊」はかつて北海道の代表的なお土産として大量に作られていました。最近は、不要になった「木彫りの熊」をネットオークションに出品する人が多く、作者はそのような彫刻を入手して、この作品を作りました。作られた際の役目を終えた彫刻たちは、彫刻になる前の姿である木として土に立っていたころの記憶を、ここ六甲山で取り戻すのです。しかし、彫刻は元の姿に戻ることはなく、熊の形のまま新たな芽が生えています。

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 六甲オルゴールミュージアムの庭の奥に、小さなガラスの温室がある。この中に植えられているのは、なんと!いっぱいの熊の置き物。サケを咥えているヤツ、いないヤツ、ひと昔前はどこの家にもありましたねぇ。アーティストの角文平さんは、この熊に目を付けた。ただ並べるだけではオモシロくないから、木彫りの熊から芽を出させてしまった。こうすることによって大量生産、大量消費の20世紀に対する文明批評、かつまた森や野生動物に対する自然保護の視点を持つアート作品に変身しました。

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 「集める」や「繰り返す」は現代アートの重要な語法のひとつ。あとはどのような要素を加えるかによって、作品の良さが決まる。今回は木彫りの彫刻である熊の体から、青々とした立派な双葉がニョキニョキと生えてきている、という表現がとても秀逸だ。木彫だから木の新芽、という距離感も程よい。うまくまとまったいい作品だと思います。今年もクマの被害が多かったなぁ、山ではエサになる木の実が少なかったのかなぁ、などとイメージがどんどんふくらんできますね。

六甲ミーツ・アート 2014
2014年9月13日(土)~11月24日(月・祝)

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2014年10月 5日 (日)

三宅信太郎の2つの街

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 六甲オルゴールミュージアム、庭園の池の向こう側に、三宅信太郎さんが「山頂の街」をライブで創っている。六甲山にステイして制作を続け、その作品は日に日に増殖し密度を増している。Photo_3 古い建造物の遺構を活用した作品で、いろんな家が建ち並び六甲のイニシャルRや擬人化されたロバがいたりする街。これからの新しい六甲山『NEW ROKKO RESORT』だ。白塗りの厚紙にモノクロの力強いペインティング。
 グルームが六甲山をリゾート地として開拓してから1世紀半、こんどはMr.Bluemoonが再び六甲の地をよみがえらせる、というコンセプトの作品だ。さて、どんな街に成長していくのか、11月の後半にまた見に来たいと思わせる。

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 「山頂の街」にはもうひとつのパートがあり、こちらはがらっと変わってカラフルな『Mr.Bluemoon本邸』。内部の壁や天井には、これまでの六甲山の歴史がびっしりと描かれている。会期中、ライブドローイングやライブビルディングといった「開拓」が、50mぐらい離れた2つの場所でそれぞれ進行中。六甲という土地に根差したストーリー性のある表現は、現代アートの大きな流れのひとつ。ぜひこの工事現場で作業を見学してください。

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 そしてご覧ください、この姿。作業着に身を固めた作家の三宅信太郎さんです。 アーティストの三宅さんの存在自体もアートだ、と思いませんか? もう完全に三宅ワールドの一員になりきっておられます。せっかくライブで表現するのだから、ここまでやらないとね。大拍手!

六甲ミーツ・アート 2014
2014年9月13日(土)~11月24日(月・祝)

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2014年10月 2日 (木)

たまゆら、竹久万里子のアート

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 六甲高山植物園とオルゴールミュージアムを結ぶ散歩道。長さ100mぐらいの木道、ゆるやかな坂の周辺の樹々に、それは設置されています。なんの変哲もないハイキングの写真、に見えますがその真ん中あたりの暗い部分に、白い点々がご覧いただけるでしょうか? これが竹久万里子さんの「たまゆら」という名の作品。それもほんの一部です。この白い点々は、じつはヒモで吊り下げられた鈴。太陽の光を反射して白く輝いているのです。その数は、ウン千! もしかしたら万を超えているかもしれない。

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 『たまゆら(玉響)』とは勾玉同士が触れ合ってたてる微かな音のこと。転じて「一瞬」あるいは「かすか」を意味する古語。この作品も、静かな大自然の中で、風が吹くと微かに音を立てる。しかも、あちらからも、こちらからも・・・。風の音や鳥の声、虫の声に混じって秘かに聞こえる人工的な音。しかしそれは決して不快ではない。じわっと包み込まれるような安らぎ。聞き耳をたて、五感を研ぎ澄ませ、自然の魂と直接対峙させるような不思議なパワーがある。強い力ではなく、惹きこまれるような静かな力。

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 「音に対する考察と、その音を生成するための仕組みを六甲山の自然にインストールしました。鑑賞者の感情を微かに、そして緩やかに揺り動かす空間をつくり出します」と、作家の竹久さんは言う。
 大自然、という開かれた空間を微かな音で区切る。いわば音の聞こえる範囲でこの世とあの世の境界を創造する。あるいは、教会の鐘が聞こえる範囲がわが村(味方)で、その外は恐ろしい別世界(敵)、という中世ヨーロッパのようでもある。しかもその境界は固定されたものではなく、微妙に揺れ動きながら変わり続ける。それこそが、このアート作品のテーマ=「たまゆら」そのものなのだ。

六甲ミーツ・アート 2014
2014年9月13日(土)~11月24日(月・祝)

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