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2014年9月29日 (月)

西山美なコ、甘~い夢

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 白いテーブルクロス、シルバーのカトラリー、きらびやかな食器やグラス。六甲高山植物園にある温室の中には、ピンク色を主体にした十数人分の午餐会のテーブルセッティングがなされている。かなり格調の高いしつらえだ。六甲ミーツアートの西山美なコの作品 「melting dream」がとってもオモシロイ。融けていく夢。宴が華やかであればあるほど、つかの間の輝きのあとは寂しいものだ。

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 午餐会のメニューは、前菜もメインディッシュもデザートも飲み物も、さまざまなピンク色のバラ。じつはこれらはすべて砂糖でできているのだ。お菓子の家ならぬ、砂糖菓子の食卓。気づいた時の大きな驚き、たくさんのディテールの発見、楽しく深く味わえる作品だ。室内は砂糖やバニラエッセンスの甘~い香がただよっている。自然の中なのでアリがいっぱい集まってこないかと、いらぬ心配をしてしまいそう。

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 視覚だけではなく嗅覚も刺激する、シズル感たっぷりの展示です。天井から吊り下げられたシャンデリアまで、砂糖のバラが飾られている、という徹底ぶり。スイーツ好きにはたまらない空間でしょうね。しかもこのバラの花の完成度が素晴らしく、花弁の質感まで再現されていて極上のアート作品に仕上がっている。しかも、この大掛かりの設定。たぶん一人分ならこんなに感銘を与えることはなかっただろう。アートはこのように打ち込む熱意の量によって見え方が変わることがよくある。

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 もうひとつこの作品で重要なのは、時間による変化。温室なので昼間は温度が上がり、六甲山の湿度とともに、会期中にじょじょに元の姿を融かして、美しくかつグロテスクにカタチを崩されていく。作家によると、「人間のつくったものも、どのように美しいものも、抗いがたい自然の力によって変貌させられ、崩壊していく様を表現しています」とのこと。時間という牢獄によって、甘い夢は儚く溶け落ちる。世の中に永遠のものはなく、だからこそ今という瞬間を大切に生きることが大切なのだ、と改めて考えさせられました。滅びの美学より、もっと積極的に、変化を作品の一部(主要なテーマ?)に取り込もうという姿勢も素晴らしい。

六甲ミーツ・アート 2014
2014年9月13日(土)~11月24日(月・祝)

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