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2014年7月

2014年7月31日 (木)

木曽メイド、漆のバスタブ

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 奈川から車で30分ほど。奈良井宿のはずれに(株)木曽アルテック社という、世界でもまれな(多分)ハイセンスな木工と漆芸の会社があることを知って、このたび本社ショールームを見学に参りました。いやぁビックリりしました。入り口のドアがまずスゴイ! ガラスと鉄細工と木の削り出し。中に入って目に飛び込んできたのは、朱漆塗のバスタブ。えっ、バスタブ? 漆って水に弱いものだと思い込んでいた。「もともと漆は水に強い。でも水に浸けっぱなしにすれば内の木が腐ってくることもあります」とのこと。

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 「このバスタブは、乾漆造の仏像ってあるでしょ、あの手法で作っています。だからすごく軽いんです」と、片手で持って動かしてくれた。乾漆って、名前は聞いたことがありましたが、どんなものか知らなかった。聞けば麻布に漆を塗って何層にも貼り重ねてカタチを作り完成させる技術だそうだ。奈良・東大寺の金剛力士像もこの技法だという。さて、このバスタブ、ご覧のように色も形も素晴らしい。うっとりしてしまいます。ちなみにお値段の方は? はい、恥を忍んで聞いてみました。二百数十万だそうです。思ったより安いようにも思えるが、置くにはバスルーム全体をこれに合わせてリフォームしないといけない。はぁ、とため息。

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 この会社は、名前を聞けばすぐわかる有名建築物の内装なども手掛けているそうだ。だからでしょうか、発想が全く違う。キッチン全体をデザインしたり、床材や壁材を提案したり、動きのスケールが大きい。
 もちろん木曽ならではの伝統の技とモダンなデザインが生み出す世界標準の家具や木製小物がたくさん展示されていて、欲しいものだらけ。せっかく来たのだからと、色がレトロモダンで美しい拭き漆の箸を求めました。ささやかでしょ。

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 この森の中のショールームは本社・工場が隣接している。だから素材の材木を乾燥していたり、漆の色見本が並べてあったり、いろんな作業工程が臨場感たっぷりに見学できる。しかも「どうぞご自由にご覧ください」と言ったきり係りの人もつかず、思い通りに見たり触ったりできる。お近くに来られる機会がありましたら、ぜひ足を延ばしてください。それだけの価値はあると思いますよ。ショールームは、東京の神宮前と京都の鹿ケ谷にもあるそうです。

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株式会社 木曽アルテック社
本社・ショールーム
長野県塩尻市奈良井82-1
Tel. 0264-34-3304

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2014年7月28日 (月)

シュールハンズ・タナカの世界

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 西梅田ブリーゼブリーゼの1階吹き抜けで、いま開催しているのはシュールハンズ・タナカさんによる「Spiral 過ぎ行く時間と未来を見つめていた」展。たとえばタテ180×ヨコ300cmの大きな布にプリントした作品が、中央のツリーに巻きつけて展示されている。咲き乱れる花と一体になった美少女が、どんな手法で表現したらこうなるのか、夢の中の出来事のような不思議な魅力をたたえている。
 この美的ワールドを理解する手だてとして、タナカさん自身が書いた企画の趣旨をご紹介しましょう。
   「遠い青空を見ていると、安らぎと、その反面、焦りを感じる。
   まるで飲み込まれる渦・・・その中から・・・未来を見つめた写真。
   そのプリントの上からクレヨンとグアッシュとアクリル絵の具で絵を描き加え、
   シュールな世界を創造した」

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 つまり自分自身で撮影した写真をプリントし、その上からペインティングする。とうぜん描き加えた完成形をイメージして撮影するので、写真家としてはかえって難しいかもしれない。写真家の習性として、無意識のうちに構図も、ピントも、絞りも、瞬時にパーフェクトな組み合わせを決める能力が身についている。サッカーのFWがシュートを打つときに似た瞬発力、これが勝負を分ける。だから彼の創作の場合は、写真家の本能的な行為をあえて一歩手前で踏みとどまる意志の強さが必要だ。あとで描き加えてイメージを完成させるために。
 彼のシュールハンズ・タナカという名前は、SURUHANDS TANAKAと書く。シュールレアリズムのシュール。つまりシュールな、超現実的な世界を作り出す手(手法)を持つ田中さんの作品。ビールを飲みながら見ていると、夢かうつつかわからなくなりそうです。

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シュールハンズ・タナカ
Spiral「過ぎ行く時間と未来を見つめて}
2014年7月24日(木)~8月3日(日)
大人のベルギービアガーデン
DOLPHINS
ブリーゼブリーゼ 1階
JR大阪駅桜橋口より徒歩5分
地下鉄西梅田駅より徒歩3分

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2014年7月25日 (金)

ほおば巻き、って何でしょう

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 ながわ山彩館でいつも買うのが名物「きび大福」。キビ独特の香りがするうっすら黄色いおもちに、甘すぎない上品なこしあんがマッチして絶品です。
 今回は、こんなものを見つけたので買ってみました。「ほおば巻き」と言います。簡単に説明すると、「かしわ餅」のカシワの代わりにホオノキの葉で包んだおモチ。Photoしかしご覧ください。朴葉焼きに使う、あの大きなホオノキの葉を枝(葉柄)ごと使った豪快なつくり。1本の葉柄に葉は8枚つきますから、自然のままでは8個セット。でも「好きな数だけ、ちぎってどうぞ」とのこと。カシワの葉なら1枚でちょうど裏表がまにあうサイズですが、さすが大きなホオバ、包んでもまだまだ余りがある。その姿にコロッと参りました。いつも、こういうのに弱いんだよね、と思いつつ。

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 さて、食べたお味は? うーん、まぁ・・・ほんのりホオの香りはします。でもそれ以外はかしわ餅とあまり違いはない。やはりこれはパッケージの秀逸さ、プレゼンテーションの勝利でありましょう。Photo_3
 このながわ山彩館は、地元でとれた野菜や果物、キノコや山菜などの直売所ですが、ここにあげた「きび大福」や「ほおば巻き」をはじめ、奈川名産そばのポン菓子やギョウジャニンニク味噌など、地元産品を加工したアイデア商品も多数開発している。最近は徐々に知名度が上がってきたのか、上高地への行き帰りに立ち寄る観光バスや、ツーリングのバイクのグループでけっこうにぎわっている。外国人のグループまで現れる。まことにけっこうなことであります。
 たしかにここの野菜はどれも味が濃い。リンゴのシーズンになると次々と違う品種を販売していて、食べ比べができてリンゴ通になる。山菜やキノコは、ここで初めて出会ったものだらけ。調理法までオバチャンに教えてもらっています。何もない田舎だけど、神戸では味わえない楽しみにあふれています。

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2014年7月22日 (火)

夏の花はブルー?紫?

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 高原の日当たりのよい場所にすっくと立つアザミ。この鮮やかなピンクがかった紫色の花は、よほど蜜がおいしいのでしょう。必ずチョウやハチがとまっている。うっかり鼻を近づけようものなら痛い目に合う。人間なら熱中症になりそうな強い日差しのただなかに、太陽のパワーを一身に受け止めて咲く姿は潔さの極致だ。

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 ウツボグサは半日陰のようなところに咲いているもののほうが、色に深みがあるようだ。そして六甲で咲いているのは紫だが、信州奈川では濃いブルー。特に日陰のものは色が美しい。下から(上からか?)順番に咲いていくので花の時期は比較的長い。アジサイのように途中で色が変わっていく、なんてことはないでしょう。

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 ホタルブクロはオレンジ色に近い花から赤紫、濃いブルーまで色の幅が広い。少し日当たりの悪いところの花のほうが青みが強くなるようだ。でも、ここまで青が強いのは珍しいので、写真に収めました。ウツボグサと同じく青の濃度と日照は関係あるのだろうか。リトマス試験紙のように、ブルー濃度が紫外線の強さを測る尺度になるかもしれません。
 アザミは華やかな薄紫だけですが、ウツボグサやホタルブクロは、えっこんなに濃いブルーの花があるの?というのを、あえてご紹介しました。

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2014年7月19日 (土)

下村優介さんのカモフラージュ展

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 先日ブリーゼブリーゼで展示をしていただいた下村優介さんの個展が、北浜のLinksさんで開催されています。下村優介切り絵展-camouflage- これがホントに素晴らしい。ブリーゼブリーゼではいろんな制約があり思い通りとはいかなかった彼が、コンクリート打ちっぱなしの明るい空間を効果的に生かして美的興味をかきたてる。ハトたちも三次元空間に飛び出してのびのびと羽を伸ばしている。

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 この前も感じたことだが、彼のデッサン力はすごいと思う。飛び立った瞬間、いまにも着地しようとする、羽を広げる、羽をすぼめる・・・ハトが飛んでいる姿をもう150体以上も制作しているが、どれもイキイキしてカーターで切った細い線だけで構成されていることを忘れて見入ってしまう。それらを天井から壁へ渡した何本ものテグスから吊り下げて、リアルに、立体的に、照明による影も生かした見事なインスタレーションに仕上げている。

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 もうひとつの見どころが彼独特のワニ。カラフルなカモフラージュ柄を背景に同じ色のカモフラージュ紙をカットしたワニが組み合わされ、よく見ると手前にワニがいるのがわかる。切り絵による上等なだまし絵、とでも呼べばいいのだろうか。うまく出来すぎているので、私の写真ではわかりにくい。で、この個展の案内DMの画像も紹介しておきます。同じカモフラージュ柄の紙を背景にしながら、白い紙をカットしたワニを組み合わせているので見分けがつきやすい。

Dm
 ふたつのテーマを取り上げましたが、下村優介さんがチャレンジしているのは、従来の切り絵とはまったく違う、紙とカッターを使った新しいアートの創造だということ。彼のこの独創的なアートに、「切り絵」とは別の何かいいネーミングがあればもっと世の中の人々に伝わるのになぁ、と思っています。これからますます発展が期待できる作家さんです。皆さまも注目していてください。

下村優介 切り絵展 
-camouflage- 下村優介×BENDS
2014年7月14日(月)~26日(土) 12時~19時
Links 中央区北浜 宣成社ビル1F
 

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2014年7月16日 (水)

升本真理子さんのSPROUT

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 切られても、踏まれても、捨てられても、その一部だけでも残っていれば、また新しく芽生え成長する野菜。まるで、どんな境遇にあっても生き抜こうとする強い意志があるかのようで、涙が出るほど感動します。クズ野菜(もうこれからはクズなどと呼べなくなります)の切れ端から新しい芽を出した作品シリーズ、升本真理子さん撮影の『SPROUTー 萌芽』展が、西梅田のブリーゼブリーゼで始まっています。タマネギから、ジャガイモから、キャベツから、ニンニクから、サツマイモから、ニンジンから・・・。毎日食べている野菜が、こんなにたくましい生命力を持ち、しかもここまで美しいなんて。驚きです。

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 新しい命の芽生えを台所で撮っても、きっとこんなにはインパクトはなかっただろう。屋外に持ち出して、ビル群や港など人工の建造物や都市の景観をバックに撮影したからこそ、これらの作品は説得力を持ちえたのでしょう。季節の桜や雪を背景に撮影したからこそ、これらの作品は観る人の想いをすくい上げることができたのでしょう。
 ジャガイモは哲学者の風貌で地球と人類の行く末を考えている。キャベツは春風駘蕩たる風情でその日その瞬間を精一杯生きようよと言っている。なのに私たち人間は、何を考え何を行動しているというのでしょうか。升本さんの野菜たちから教えられる思いです。

升本真理子 SPROUTー 萌芽
2014年7月13日(日)~7月23日(水)
大人のベルギービアガーデン
DOLPHINS
ブリーゼブリーゼ 1階
JR大阪駅桜橋口より徒歩5分
地下鉄西梅田駅より徒歩3分

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2014年7月13日 (日)

フジウツギとトラノオ

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 この時期さかんに咲き、密がたっぷりあるのか蝶がよく集まっているフジウツギ。薄紫色の花をいっぱいつけた
花穂を藤のように垂らすから、フジウツギ(藤空木)。富士ではなく藤の花によく似ているからフジなのです。Photo_3日当りの良い山道沿いや斜面に生えるブッシュのような落葉低木。
 これを見ると暑さがますますつのり、熱中症になりそうです。個人的な思い込みかもしれませんが、強い日差しに地面も空気も熱せられ、気温がぐんぐん上昇する昼下がり、なぜかそんな状況でよく見かけるから。でも、じっくり観察するとなかなか美しい花なのです。白い花が多い夏に、ピンクっぽい薄紫はよく目立つ。

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 かたや明るい林の下に生えるトラノオ。フジウツギと同じように花穂を垂らしていても、こちらは涼やかだ。花の色が白いというのもその理由でしょう。また木ではなくせいぜい数十センチまでの背丈の草だから、うっそうとした感じは皆無でちっとも暑苦しく感じない。花の姿だけ部分的に見ると、じつによく似ているのですが・・・。
 正しくはオカトラノオ(丘虎尾)というらしいのですが、その名は昔の人が花穂を虎の尾に見立てたから。えっ、昔は日本に虎がいたんでしたっけ。そんなことはどうでもいいですね。分類上ではサクラソウ科だそうです。どちらも六甲山系で撮影しました。

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2014年7月10日 (木)

新宮 晋、地球の遊び方

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 風でまわる、水で動く、光を反映する。新宮晋の作品は地球の息吹を感じるからおもしろい。いま六甲アイランドの小磯記念美術館で展覧会が開かれています。
 関空の出発ロビーの天井にたくさん取り付けられた黄色い風車の羽のような作品や、銀座エルメス、ガラスブロックの2棟のビルの間でまわりの風景を写し込みながら動くステンレスの翼など、新宮晋の名前は知らなくてもよく見なれた作品がたくさんある。

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 それも日本だけではなくて、アメリカ、フランス、イタリア、台湾など世界各地にモニュメントのように動く彫刻が設置され、高い評価を受けている。彼は「作品を見る人に、ただ外からの傍観者ではなく、自然のリズムと作品との遊びの中に入って、作品を動かしているのと同じエネルギーが私たちを生かしていることを感じてほしい」と言っている。自然と親しく触れ合うのは日本人に特有だけれど、自然(地球)を人間と対立するものととらえ、克服しようとしてきた近代主義の行き詰まりから、現在そのメッセージには大きな普遍性が生まれているのだろう。

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 水を噴き出しながらその反作用でゆっくり回転するパイプ。屋内に設置され、ほんのわずかな空気の流れにも反応して動く彫刻。彼の作品は「創造」という言葉だけではなく、「発明」という言葉でも表せると思う。きっとサイエンティストの頭も持っているのでしょう。太古の昔から変わらない地球のサイクルと、最新のテクノロジーの進化によって生まれたハイテク素材。これらの合体で、彼は自然のエネルギーを目に見える動きに翻訳しているのだ。

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 まわりの環境に溶け込んで、そこにある風や水の流れなど地球の営みやエネルギーを感じさせてくれる作品を、美術館の展示室でどうやって見せるの?と、いう疑問が観る前はありますよね。でもご安心ください。小型作品や模型の展示、VTR上映などで十分楽しませてくれます。それに少年時代の水彩画から東京芸大時代の油絵、最近の絵本の原画など盛りだくさんの内容で、新宮晋の全容がわかります。
 もちろん、機会があれば屋外に設置された巨大な作品も見てください。ミュージアムショップには新宮晋の作品マップも販売していますから、これを参考に。

新宮 晋  地球の遊び方
2014年6月21日(土)~9月23日(火・祝)
神戸市立小磯記念美術館

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2014年7月 7日 (月)

ギョ! 平塚さんの、おさかな

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 西梅田のブリーゼブリーゼに、グロテスクでユーモラスでちょっとカッコいい魚の写真が現れました。平塚正男さんの「おさかな、」展。場所は1Fの吹き抜け空間、ベルギービールのドルフィンズが開いている期間限定ビアレストランです。
 タイ、サバ、ナマコ、タコ、イワシ、フグ、サヨリ、トコブシ・・・名も知らぬ海の生き物たち。これらのインパクトある作品は、平塚さんの好奇心と遊び心から生まれました。「ふだんおいしいと食べているお魚たちは、実はちょっと不気味でグロテスク。でも、よく見ると、その姿はアートであり、『いのち』の美しさを教えてくれます」と彼は言う。

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 4面の柱には、青白い輝き、淡いピンクの皮、脳みそのようにグジュグジュに集合した稚魚。それらは確かに美しい(ただし、よく見ればの話)。部分をアップにしたり、切り落とされた頭だけを撮ったり、美の要素や生命のエッセンスを取り出すために工夫の跡がうかがえる。
 また2本のツリーには魚のポストカードが帯状に吊り下げられています。この展示もなかなかおもしろい。第一線の広告カメラマンとして活躍し、数多くの賞を受賞している平塚さんが、ライフワークとして取り組む「おさかな、」シリーズ。そこには対象の本質をとらえる独特の視点が感じられます。ぜひ一度ご覧ください。

平塚正男 おさかな、
2014年7月3日(木)~7月12日(土)
大人のベルギービアガーデン
DOLPHINS
ブリーゼブリーゼ 1階
JR大阪駅桜橋口より徒歩5分
地下鉄西梅田駅より徒歩3分

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2014年7月 4日 (金)

感動、ビヨンド・ザ・エッジ

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 エベレスト初登頂を描いたドキュメンタリー映画「ビヨンド・ザ・エッジ」を観ました。北極、南極と並んで第三の極といわれた地球でいちばん高い場所は、人間を寄せ付けない未知の領域だった。その当時としては、後の月面着陸のようなインパクトがあったことでしょう。でも、なにを今さらという感はありました、観るまでは。ところが、すごく感動したのです。
 まさにその高度に達すると死ぬかもしれないという恐れと闘いながら、肉体の限界を超える冒険は、英国が国の威信をかけた政治的なプロジェクトでもあったのだ。初登頂の栄誉はニュージーランドから参加したヒラリーとシェルパ族のテムジンの二人に輝くが、そこに至るさまざまな精神の葛藤や人間ドラマを、事実に即しながらあえて淡々と描いている。ヒロイックに描かないからよけいこの冒険のすごさを際立たせている。生身の人間が神の領域、未知の世界に挑んだ記録。あくまでも記録としての表現。

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 1953年の出来事なので、たくさんの映像アーカイブや写真、インタビュー音声が残っているため、とてもリアルなドキュメンタリーになっている。再現映像も抑えた調子で、よくなじんでいる。酸素がうすい、寒い、風が強い・・・高所登山の過酷さは人間の存在を許さない神の領域。「8,000mを超えると人間は生存できない」という医学の専門家がいた時代。
 もうひとつ興味深かったのは、登山の装備。ハーネスもなく、手袋に至っては毛糸のニットだ。いま日本の中高年ハイカーや山ガールでも、ゴアテックスやダウンなどはるかに機能が充実した装備で身を固めているのに。わずか60年の間に服装や道具が急速に進歩したのだ、と驚かされる。
 ひとつの偉大な挑戦によって未知が解決され、道が切り開かれると、あとに続く人たちのトライはもう冒険ではなくスポーツやレジャーの範疇になる。その後エベレストでは「商業公募隊」が隆盛し、登頂者は4,000人を超えているという。隔世の感、とはまさにこのことではないでしょうか。

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2014年7月 1日 (火)

ヤマボウシの花は白くない

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 初夏の六甲山では白い花をよく見かけるが、そのなかでいちばん気品がある花が、ヤマボウシ(山法師)だと思います。ミズキ科の落葉広葉樹で10メートルぐらいの高さになる。ただし4枚の美しい花弁、と思いこんでいた純白の花びらはじつは植物用語で苞(ほう)と呼ぶそうで、本当の花はその中の黄緑色のまるい小さな部分なんだと。オシベだと思っていた部分です。
 そういえばアジサイも花だと思っていたのは、花じゃない、と読んだ記憶がある。で、これは咢(がく)と呼ぶのだそうだ。調べましたが違いはよくわからん。それぞれ進化の過程でそういったものが出来てきたらしい。よく目立つ姿になって虫を集め、受粉のチャンスを増やす。釣りの疑似餌みたいなものか。いや、ちょっと違うかな。植物も不思議な奥の深い生命体です。

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 ともかく、苞(ほう)というのは植物用語で花や花序の基部をおおう葉だそうだ。ツボミをおおっているあの緑のもの。それがヤマボウシでは白く大きくなって、姿はまるで花びら。
 この樹の近い親戚がハナミズキ(アメリカヤマボウシ)。庭木や街路樹でよく見かける。こちらの樹には白い花のものとピンクの花のものがある。これも正確に言うと花と言っているのは総苞である。でもややこしいので花と呼びます。その花のカタチも枝の出方も、ヤマボウシにとてもよく似ている。枝は同じところから四方八方に出ていて、ヤマボウシはハナミズキに比べてより水平に枝を張る。やはり日本の山でよく見かけるミズキに近い。それはミズキ科だから当然か。
 このヤマボウシ、次に目立つのは赤い大きな実がなる秋。それまでは特に目立つこともなく、黙々と光合成に励んでいることでしょう。

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