プライベート・ユートピア展
英国の国際文化交流機関「ブリティシュ・カウンシル」の9,000点におよぶコレクションから選りすぐって、1990年代からの英国美術の現在を紹介しようという展覧会が、伊丹市立美術館で開催されています。『プライベート・ユートピア ここだけの場所』というタイトル。ブリティッシュ・カウンシルは常設の美術館を持っていない、それが素晴らしい。世界各国の美術館で巡回展示したり作品を貸し出したりして、英国の現代アートを紹介しようとしている。伝統芸能だけじゃなくて、アップデートな美術・文化を、という姿勢がいいと思います。キャッチフレーズもいい、英語で Museum without Walls。壁をもたない美術館、建物がなくてもアートの本質は伝えられる。その通りだ。
絵画、写真、立体作品、映像など約120点の展示。多様なスタイルで表現された世界最先端を走る英国のアートシーンを体感できますよ。これはチェックしておかなくっちゃ。ちなみに上のバナーも作品です、エド・ホールによる2012年の作。
たとえば、ポスターやチラシでメインで使われているライアン・ガンダーの『四代目エジャートン男爵の16枚の羽毛がついた極楽鳥』。ガラスケースの中に作られた箱庭のような地面と木、その枝にとまる一羽の黒い鳥の標本、のように見えるけれど・・・。ちゃんとクチバシもあるし羽根は本物だし。なにか興味深い因縁が込められたようなタイトル。おもわず背景にある物語を想像してしまうような作品名ですが、これがまったく架空の世界。英国人独特のユーモア感覚ですね。エイプリルフールでえらく凝ったウソを創り上げる、あのセンス。
そういう目で見直すと、宇宙人がこちらを見て笑ってる、ようにも見えてくる。もっともらしい顔をして、「なにするねん」と驚く観客をニヤリと見ているシニカルな作者、それを表現してると思うのはうがちすぎでしょうか。冷めた頭脳とダマすことを無上の喜びとする熱い情熱。そのギャップのすごさに頭が下がります。
伊丹市立美術館
プライベート・ユートピア ここだけの場所
2014年4月12日(土)~5月25日(日)
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