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2014年5月

2014年5月31日 (土)

乗鞍の雪の回廊を歩く

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 乗鞍高原からアルピコ春山バスで位ヶ原山荘前まで行って、大雪渓の下の絶景ビューポイントまで雪の壁のなかをハイキング。距離は4km、標高差は250m。そこからの眺望はさすが! 槍、西穂、奥穂、前穂、常念、大天井。八ヶ岳は曇って見えない。右に目をむけると甲斐駒、仙丈ヶ岳、そして木曽駒を望める。おお、わが野麦峠スキー場のゲレンデもよく見える。鉢盛山の稜線が尽きたあたりに遠く松本平の家並みも光ってる。Photo_3
 雪の回廊と言えば立山が有名だけれど、ここ乗鞍も後発とはいえ景色の雄大さでは引けを取らない。それに何といっても人が少ないのがよろしい。観光協会やアルピコ交通など関係者はもっとたくさんのお客さんをを呼びたいのだろうけど。こういう自然は十分すぎるぐらい注意して守らないとね。人が増えるとどうしてもゴミの問題、トイレの問題などマイナスの面が目立ってきますからね。
 春山バスは6月30日まで。7月1日からは夏山シーズン開幕です。
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 乗鞍は8月までスキーが楽しめる。もちろん、いまの時期も多くのスキーヤーやボーダーが滑っている。ただし滑るためにはえんえんと歩いて登ることになるから、一日に何本も、というわけにはいかない。それでもバックカントリーの面白さには代えられないのでしょう。若者からベテランまで、好きなところへ登って思い思いに楽しんでいる。Photo_2
 10mを超える雪の壁にはさまれた坂道を登っていると、お天気に恵まれたせいもあってどんどん暑くなり、どんどん薄着になっていきました。イワヒバリもたくさん飛んでいる。でも、こんな晴れた日には残念ながらライチョウは見られない。登山者が降りてくる。雪のない時期とは違ってルート以外のところをショートカットできるので、かえってラクかもしれない。ヘルメットをかぶりピッケルにアイゼン、ハーネスにザイルと、しっかり雪山の装備をしていました。このお天気ならそこまでしなくても、と思いますが山の天気は変わりやすい。あなどらず準備しておくに限ります。こんなのどかな春山で遭難などしないでくださいよ。
 

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2014年5月28日 (水)

SWIM という展覧会

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 いまTANTOTEMPOさんで開催中の展覧会がおもしろい。フランシン・フライシャーと読むのでしょうか、アメリカの作家さんが撮った泳ぐ人々の写真。宇宙遊泳のように一人、二人、あるいは多人数で、泳いだり、漂ったり、思い思いに水と戯れている人々。

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 でもこれ、どうやって撮ったのでしょう。水が黒いのは夜だから? 人にだけストロボを当てて? いや、それではこうは写らない。タテの線が見えるものがある。まるで人が操り人形のようにヒモで吊り下げられたようです。でもよく見ると、ジャングルのツルのようです。

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 ここはどこ? ギャラリーのオーナーさんに聞くと、メキシコに隕石の落下でできたこんな穴に水がたまった洞窟湖のようなものがあるそうです。深い深い穴なので、太陽の光が届かず水が黒く見える。人々が泳ぐ水面だけは光が当たって明るい。だから泳ぐ人だけが強調されて、こんな不思議な写真になるという。

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 もちろん水着を着ているのだが、なぜか人間がこの世に生まれてきたままの姿に感じられる。天真爛漫。ただ水遊びをしているだけのようなリゾートの写真が、涅槃に向かう禅の修行に見えてくる。こんな不思議な魅力にあふれた作品は、ぜひ元町・乙仲通りのTANTO TEMPOさんでご覧ください。

SWIM  Francine Fleischer
TANTO TEMPO

5月10日(土)~6月22日(日)
12時~18時 月・火・祝は休廊

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2014年5月25日 (日)

野麦トレラン、がんばったよ

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 トレランに出てきました。野麦トレイル10マイルレース、といっても出場したのは5マイル(8km)の部。ムリせずチンタラ走ったり歩いたり。でもシンドかった。朝の受付け開始からいつも静かな奈川高原・野麦峠スキー場は、人がいっぱい。出場者は小学生の部12名を含め、440人あまり。Photo_5
 スタートは標高1,420mのところ、スキー場のゲレンデを登って1,600m地点へ。そこからコース最低の1,310m地点へ下ってからは、上ったり下ったりを繰り返しながら、スタート地点へ戻る。すべて山道で、舗装道路は横切る場所が2ヶ所あるだけなので、思ったより足への負担は軽い。ただし急斜面につけられた幅30cmもないトレールを体を傾かせて走ったり、谷川を踏み石伝いに渡ったり、グチチュグチュのぬかるみやゴロゴロ石など足場の悪いところを走る歩く。木の根をつかんで這い登る。距離は短いけれどとても変化にとんだ(手ごわい)コースです。
 雪を頂いた乗鞍、穂高、御嶽が見渡せるパノラマビュー。さわやかな新緑の木陰をひたすら進む気分のいい山道。お天気に恵まれてサイコーのトレランでした。完走した充実感にひたりながら、明るいうちに露天風呂へ。

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 夕方6時からは、じつはこちらが楽しみの前夜祭ならぬ後夜祭。スタートとゴールに使われた杉の枝を積み上げたゲートに火をつけたキャンプファイアーから始まりました。イワナの塩焼き、コシアブラの天ぷら、鹿肉のジンギスカン、おやきに山賊焼・・・。地元の名物が食べ放題でこれでもか!とふるまわれる。オ・モ・テ・ナ・シの心が満載です。おかげで満腹、大満足。Photo_3
 たくさんの協賛スポンサーから提供された賞品が当たる抽選会もすごく盛り上がりました。ちなみにわれわれはアスリートのエネルギー補給「パワーバー」25本入り、スペイン生まれの多機能ヘッドギア「バフ」、アスリートの体質改善に役立つ「マグマ」と結構いいものもらってしまいました。うれしい!
 順位なんて関係なく(一度そのうち順位の話をしてみたい!)若い人も年寄りも一緒になって楽しめる。自分なりのペースで達成感を得られる。こんなトレランの魅力に、抽選で賞品が当たるオマケまでついた野麦トレラン。秋も来年も再来年も、とクセになりそうです。

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2014年5月22日 (木)

白馬のパタゴニア

Patagonia
 八方尾根のふもと、JR白馬駅から100m。昨年の12月にオープンした patagonia の白馬アウトレット店。ネットで見て、神戸店で話を聞き、ぜひ一度行ってみたいと思っていましたが、やっと念願がかないました。でも、あいにくの雨模様。背景の白馬三山は雨雲とモヤの中。それはちょっと残念でしたが、まわりの環境に溶け込んだとってもステキな店舗で大感激! 4時間も遠回りしたかいがありました。Photo
 木や石など自然素材をたくさん使い、大きな窓からたっぷりの光を取り入れ、天井も高く解放感じゅうぶんです。大きな木質ペレットストーブに、使い込まれた革張りソファ。まるでアメリカ西海岸にあるアウトドアショップのよう。季節の製品カタログに載った素晴らしい写真に写っているアンバサダー(パタゴニア独特の製品やプロジェクトのアドバイザー、それぞれの分野のプロ中のプロ)たちが実際に来店して、平面を飾るその写真パネルにサインをしている。へぇ、この人もここへ来たのか、と感心することしきり。

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 アウトドアブランドの店は消費者に近い都市にあるのがいいか、フィールドに近い山や海にあるのがいいか、迷うところですね。これは美味しいレストランの立地は消費地がいいか、素材の生産地がいいか、という問題によく似ている。今回の体験から考えると、だんぜんフィールドのそばがいいと思います。商品を見る感覚も、選ぶ基準も、とてもリアルで間違いがない。これが客の立場です。Photo_2
 言うまでもなく働くスタッフにとっては、北アルプスも日本海も近いここは天国でしょう。スキー、スノボー、クライミング、トレッキング、サーフィン、カヤック・・・、と選び放題。創業者が『社員をサーフィンに行かせよう』という本を出版するぐらいの会社だから、社員はみんな筋金入りのアウトドア好き。「この仕事が好きで好きでたまらない」という表情で、もう生き生き働いている。それがこちらにも伝わってくるから、気分がいい。
 仕事も遊びも分かちがたく存在し、日々の生活が限りなく充実しているから、気持ちのいい接客ができるのでしょうね。幸せな職場です。幸せな仕事人生です。そんな笑顔を見ていると、こちらも幸せになります。

パタゴニア 白馬 / アウトレット
長野県北安曇郡白馬村北城6389-1
月~日 11:00~19:00
 

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2014年5月19日 (月)

春だけの、ハシリドコロ

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 ハシリドコロって知っていますか? 奈川で見付けたクレソンのそばに群生していた見かけない植物。釣鐘のようなカタチの濃い紫色の花が咲いている。花の大きさは2cmほど。調べるとナス科だそうだ。ハシリドコロ、ヘンな名前でしょ。じつは毒があって、これを食べると錯乱して走り回るところから名付けられたそうです。でも毒と薬は使いようで、このハシリドコロも漢方薬の材料であるロートコンになるそうだ。もしやと思って調べたけれど、ロート製薬のネーミングとはまったく関係がなかった。

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 新芽が出てくるのはフキノトウと同じ頃、しかも困ったことによく似た姿。誤食に注意しないと。ごちそうのクレソンのとなりに有毒のハシリドコロ。幸せと不幸せは隣り合わせにあります、人生も自然も、ハイ。いままで気付かなかったのは、ハシリドコロは夏になる前に葉が枯れてしまうから。つまり典型的な春だけ草。夏、秋、冬は姿は見られないのです。ちょうどこの時期に見かけないと、いつまでも気付かなかったかもしれない。そのあと上高地へ行ったら、明神のそばで群生を見ました。こういうものは一度気が付くといくらでも目に入ってくる。不思議なものですね。
 安全のために、ハシリドコロの幼芽の写真をネットから引いてきて載せておきました。くれぐれもお間違えなきよう。
 
 

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2014年5月16日 (金)

クレソンのサラダ

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 滞在中の信州にて、今日は自生のクレソン発見!Photo_3  フツーに山道を歩いていて、ふとぬかるんだ場所で足を止めて、足下をじんわり眺めていたら、クレソンが見上げてくれたって感じ? いい感じですわ!
 春の息吹を感じて出て来たばかりの葉は、いつもスーパーで見かけるクレソンほど濃い緑ではなく、何とも若々しい浅い色。ちょっと摘んで口に入れてみたら、ほんのりとした爽やかな苦みが口の中に広がりました。
 「きゃあ〜!」と狂喜して収穫。採っても、採ってもあるんですよねえ〜。たちまち袋に一杯になりました。
Photo_4  これはもう、我が家定番の「クレソンのサラダ」。いつもはグレープフルーツを合わせるのですが、今日はちょっと甘いみかんとマッチングさせました。ドレッシング? それはもう、ほんの少しのビネガーとオリーブオイルと、塩、コショウで十分。これだけ量があればもう、「今晩の夕飯はアンタが主役!」
 こんなに美味しい野菜が、なぜ都会のスーパーでは隅に追いやられて、ちっちゃく、ちっちゃく束ねられて、しかもあんなにお高いんでしょうか!Photo_5
 もっと自信を持たせてあげたい! サラダだけではなく、おひたしにしても美味。量がたっぷり有ればお鍋にも! 先日亡くなられた渡辺淳一氏の代表作「失楽園」には、鴨とクレソンの鍋が登場しますものね。
 「そうだ!ここ信州・奈川でクレソン栽培はどうだろか?」って、地元の人に話してみたところ「はあ?クレソン? はあ〜、あっち、こっちにいっぱいあるけど、あんまり食べないねえ〜、みんな。それよりやっぱり山菜でしょ!」。ってことで、すんなり話は終わっちまった。
 ほろ苦いクレソンをバリバリ頬張りながら、あのクレソンの自生場所が、この先も健在でありますように祈るけいママでした。

 

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2014年5月13日 (火)

北斎、お化けと花

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 葛飾北斎の作品で、今回おもしろいと思ったのが「百物語」というお化けのシリーズ。じつはこのころ(江戸後期)に文学や芝居の世界でも怪談ブームがあったそうです。とうぜん美術界でも。そして四谷怪談のお岩さんや番町皿屋敷のお菊など、その筋のスターも現れる。それらをどう調理したか、イマジネーションを駆使した北斎の腕の見せ所です。

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 お化けや妖怪は、どんな出現の仕方をするか、どんな姿に変形させるか、虚と実の兼ね合いでコワさが決まる。リアルでありながら飛躍した、ありそうでなさそうなサジ加減がたいせつだ。北斎の場合は提灯や蚊帳をうまく小道具に使ってリアリティを出している。しかもそれが構図をつくるうえでとても有効に働いている。すごい才能です。

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 しかも彼が描き出したお化けたち、コワいけれどどこか愛嬌があると思いませんか。この世の住人を離れても、まだ人間臭い欲望や妄執にとらえられ、望まれもしないのに(あるいは期待通りに)人間社会に現れては煙たがられる。そして夏の夜の暑さしのぎや子供の教育になくてはならない存在になっていった。そう考えると、おかしく哀れな姿だからこそのリアリティもあったように思われる。

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 コワイものだけじゃなく、美しい花を大胆な構図で描いたシリーズもなかなかの見もの。風に揺れるケシの花。シャクヤクにとまるカナリア。キキョウとトンボ。場面の切り取り方が秀逸だ。まるで35mmフィルムで、一眼レフカメラで、ググッと寄って行ったような構図なのだ。それまでの狩野派や琳派などではなかった新しい美学の発見。アップの魅力とトリミングの効果を最大限に発揮している。きっと同時代では世界最高峰のアーティストだったのは確かでしょうね。

神戸市立博物館
北斎 ボストン美術館 浮世絵名品展
2014年4月26日(土)~6月22日(日)

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2014年5月10日 (土)

ボストンから帰った北斎

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 知ってました? 世界で初めて葛飾北斎の展覧会が開かれたのは、アメリカのボストン美術館でだった、ということを。120年あまり前の 1892 - 93年に HOKUSAI AND HIS SCHOOL(北斎と一門展)が開催されたそうです。今回は北斎をはじめ浮世絵や当時の日本美術コレクションでは世界一のボストンから、厳選された約140点の作品が里帰りして展示されている。
 芸術の価値を認め、保存方法が早く確立されたアメリカで大切に保管された作品ならではの鮮やかな発色。日本にある浮世絵コレクションでは見ることのできない素晴らしさです。明治の初め、安いお金で買って行かれたと批判する人もいますが、そのおかげでこんなに状態のいい北斎が残ったことを、私は感謝したい。

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 チョー有名な「富嶽三十六景」や「諸国瀧廻り」をはじめ、90歳で没するまでの70年に及ぶ画業を一覧できるすごく面白い展覧会です。若き日、西洋絵画の透視図法を学んで制作した「浮絵」と呼ばれるシリーズ。「組上絵」という、買った客が切り抜いて立体に組み立てて楽しむ浮世絵。これを拡大した記念撮影用セットが、美術館のロビーにあった。いままで知らなかったいろんな時期の作品やスタイルに出会えて、より深く北斎の業績を理解することができました。Photo_3
 死が近づいたとき、「あと十年長生きしたら、もっと絵が上手になるのに・・・」と残念がったという葛飾北斎。死ぬまで向上心を失わなかった、絵師の鑑のような人生だったのでしょう。あなたもぜひ北斎の情熱を感じてみてください。

神戸市立博物館
北斎 ボストン美術館 浮世絵名品展
2014年4月26日(土)~6月22日(日)

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2014年5月 7日 (水)

プライベート・ユートピアの続き

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 グローバル化やソーシャルメディアの発達によって私たちは今、ユートピア的世界に生きています。(Utopia=どこでもない場所)。それは個(Private)として成熟しながらも、隣り合う細胞のように分かちがたく結びつき、自ずとルールを生成しては価値観を共有する、ここであると同時にどこにでもつながっている世界です。
 以上は、今回の展覧会の趣旨を書いた文章で、ホームページやチラシで読めます。まぁ難しい理屈は評論家に任せるとして、オモシロイ!と感じた作品をいくつか紹介したいと思います。まず最初に、これはどう思います? デイヴィッド・シュリグリーの「アイム デッド」。犬のはく製(?)が I'M DEAD と書かれたプラカードを掲げて立っている、という立体作品。そりゃ死んでるだろうよ、キミは。(この画像はビルの玄関先に立っていますが、実際は広い展示会場の真ん中にポツンと立っている) 私たちも現代の社会システムの中で、自信を持って「生きている」と言えるだろうか。むしろ「死にました」と開き直ったほうが「生きやすい」のか。ブラックジョークです。

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 マーカス・コーツの自画像シリーズも面白かった。これは『カゲロウ、その亜成虫 小麦粉と水による自画像』。体中に水で練った小麦粉を塗り付けて撮影した自画像です。同様に『エビガラスズメ蛾の幼虫 シェービング・フォームによる自画像』や『ヒオドシ蝶、シータテハ蝶の幼虫 砂糖による自画像』。さすが英国は文学の国、『無題』などという無粋な作品タイトルはありません。言葉によるイメージの喚起も作品を構成する重要なファクターだと考えているのでしょう。
 それにしてもセルフポートレートがここまで来るか!という驚き。感動すら覚えます。一瞬、本人には見えないけれど、本人以外の何者でもない。だから自画像なのだ。外見は衣服のようなもので、魂というか人間の本質はこんな姿かもしれない。この表現は自画像というジャンルにまったく新しい地平を開いたと言える。ほかの人はもう決してこの手は使えないけどね。

伊丹市立美術館
プライベート・ユートピア ここだけの場所
2014年4月12日(土)~5月25日(日)

 

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2014年5月 4日 (日)

プライベート・ユートピア展

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 英国の国際文化交流機関「ブリティシュ・カウンシル」の9,000点におよぶコレクションから選りすぐって、1990年代からの英国美術の現在を紹介しようという展覧会が、伊丹市立美術館で開催されています。『プライベート・ユートピア ここだけの場所』というタイトル。ブリティッシュ・カウンシルは常設の美術館を持っていない、それが素晴らしい。世界各国の美術館で巡回展示したり作品を貸し出したりして、英国の現代アートを紹介しようとしている。伝統芸能だけじゃなくて、アップデートな美術・文化を、という姿勢がいいと思います。キャッチフレーズもいい、英語で Museum without Walls。壁をもたない美術館、建物がなくてもアートの本質は伝えられる。その通りだ。
 絵画、写真、立体作品、映像など約120点の展示。多様なスタイルで表現された世界最先端を走る英国のアートシーンを体感できますよ。これはチェックしておかなくっちゃ。ちなみに上のバナーも作品です、エド・ホールによる2012年の作。

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 たとえば、ポスターやチラシでメインで使われているライアン・ガンダーの『四代目エジャートン男爵の16枚の羽毛がついた極楽鳥』。ガラスケースの中に作られた箱庭のような地面と木、その枝にとまる一羽の黒い鳥の標本、のように見えるけれど・・・。ちゃんとクチバシもあるし羽根は本物だし。なにか興味深い因縁が込められたようなタイトル。おもわず背景にある物語を想像してしまうような作品名ですが、これがまったく架空の世界。英国人独特のユーモア感覚ですね。エイプリルフールでえらく凝ったウソを創り上げる、あのセンス。
 そういう目で見直すと、宇宙人がこちらを見て笑ってる、ようにも見えてくる。もっともらしい顔をして、「なにするねん」と驚く観客をニヤリと見ているシニカルな作者、それを表現してると思うのはうがちすぎでしょうか。冷めた頭脳とダマすことを無上の喜びとする熱い情熱。そのギャップのすごさに頭が下がります。

伊丹市立美術館
プライベート・ユートピア ここだけの場所
2014年4月12日(土)~5月25日(日)

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2014年5月 1日 (木)

兵庫県公館の見学会

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 ゴールデンウイークの期間、元町の兵庫県公館が見学できます。もちろん無料です。毎週土曜日には公開されているのだけれど、ゴールデンウイーク中は特別でほかの曜日も。1902年(明治35年)に4代目の兵庫県本庁舎として建てられた建物で、鉄筋コンクリート造(壁式)で地上三階、地下二階。山口半六氏の設計で、中庭を中心とする回廊式のフランス・ルネサンス様式だそうだ。そういわれれば屋根の色カタチや階上にある中庭から見た雰囲気が、ちょっとフランソワ1世のアンボワーズ城に似ている。Photo_3
 神戸大空襲で内部が焼けたそうだが修理をして、1985年(昭和60年)から迎賓館と県政資料館の二つの機能を持つ公館として使われている。かつての知事執務室や大小さまざまな会議室、貴賓室など、110年以上の歴史とモダニズム建築ではありえない華麗な様式美が目を楽しませてくれる。ちなみに登録有形文化財です。

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 会議室の調度品もクラシカルないい雰囲気。1階の大広間のシャンデリアはとても美しい。これは県の花『のじぎく』をデザインしたそうで、電球の数は合計1,440個あるそうだ。床のカーペットも『のじぎく』模様。なるほど、ちゃーんと考えてある。こんなことを各所に待機しているボランティア・ガイドの人が、親切に教えてくれる。Photo_4
 天井の細工や階段の手すり、壁のステンドグラスなど、近代建築では切り捨てられてきた要素が、いきいきと美を競っている。それでもこれら内装のディテールはきっと戦後のものでしょうけど、なかなか立派でした。

Adam  また会議室や廊下などには兵庫県ゆかりのアーティストの作品が多数飾られている。小磯良平や白髪一雄、元永定正はとうぜんとしても、なぜか前庭にはブールデルの彫刻作品『ADAM』もありました。楽園のリンゴを食べて追放された原罪を悔いているのでしょうか。頭を抱えて苦悩している。これらの美術品は、もっと気軽に楽しめたらいいのになぁと思います。

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