堀尾貞治 あたりまえのこと
兵庫県立美術館の少し山側、国道43号線の角にあるBBプラザ美術館。いま堀尾貞治さんの展覧会が開催されています。堀尾さんは1939年神戸生まれ。具体美術協会にも在籍しておられた神戸を代表する現代美術家です。栄町のギャラリーにもよく観に来ていただいていました。バルセロナのミロ美術館でもその作品を拝見し、とても懐かしくうれしく感じたものです。
そんな堀尾さんの作品が約3,000点も展示されている。板切れや、パレット、しゃもじや絵の具箱、網かごや石、えんぴつに木の枝、何に使うかわからない道具・・・。とにかく堀尾さんの身の回りにあるありとあらゆるものに色を塗り重ねるという手法で、長年にわたって作品化している。いつでもどこでもアートする堀尾さんだから、この美術館の壁面も備品もすべてアート遊びの対象だ。即興でなんでも芸術に変える。まるで触れるものがみな金に変わる寓話のよう。ここではそれが元々何であるかはもう意味を持たない。すでに作品になったものは、どうせ本来の役には立たないのだから。
アートとは何か、アートの存在理由はどこにあるのか。そんなことを考えていると、「つまらんことは考えなさんな」と堀尾さんに笑われそうな気がする。「おもしろかったらエエやん」。この会場では、芸術がきわめて日常的な行為となっているのが伝わってきておもしろい。いやむしろ日常の行為がすべて芸術となっていると言うべきか。息をして食べて排泄して・・・それらすべてが芸術で、さらにどの行為にも優劣はないというメッセージかもしれません。
ともすれば絵を描いたり音楽したりは芸術で、それらは特別で高尚なものだと勘違いしがちだが、普段の生活、日常こそおもしろく充実させなければならない、ということでしょう。ゲイジュツしてますか?生きてますか?と問われているような気がする展覧会でした。
堀尾貞治
あたりまえのこと 「今」
BBプラザ美術館
2014年3月21日(金)~6月1日(日)
10:00~18:00 月曜休館
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