ヤマブキがきれいです
七重八重 花は咲けども 山吹の
実の一つだに なきぞ悲しき
にわか雨に降られた太田道灌が、蓑を借りようと一軒の農家に立ち寄った。出てきた娘が一輪の山吹の花を差し出したという有名なエピソード。『後拾遺和歌集』兼明親王の歌を下敷きに、「実の」を「蓑」に掛けた娘の教養にえらく感心したというお話です。このヤマブキは歌からみてもとうぜん八重でしょうね。でも貧しい農家の娘だけれど美しく(きっと)教養がある、そんな人にふさわしいヤマブキは装飾過多の八重より一重だと思うんですけど。
ヤマブキは全国の山野に自生し、サクラが散るころからパッと華やかな黄色の花を咲かせる。時代劇では悪代官に渡される『山吹色の菓子』として、「お主もワルよのう」の言葉とともにあまりいいイメージはないようだ。そんなこんなで評価や好き嫌いは難しいものだが、長年の好き嫌いが積み重なって独自の文化を作ってきた。それらの総体が現在の日本人の美意識・伝統を形成している。それでいいのではないでしょうか。。
わが家で飾るヤマブキは、もちろん一重です。ご覧いただいているヤマブキにぴったりの花器は、高谷さんという陶芸作家の作品。彼は伝統的な焼き物の世界から出発して、今までなかった新しい陶芸の可能性を追求し続けている作家さんです。つぎはどんな展開を見せてくれるか、毎年の個展を楽しみに待っています。
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