ヤブツバキ、今は落椿
もうすぐ花の時期が終わるヤブツバキ。六甲山系では長峰山や油コブシ、摩耶山などの暖かい南斜面でたくさん見かけます。常緑のツバキが密集して生えている場所は、陽が当たらず暗いトンネルのようだ。まわりはまだ枯れ枝で明るいのに。
そして下にはきれいな赤からもう茶色く変色しているものまで、落花が降り積もっている。そうそう、寒い寒い一月ごろは、この落花を見つけてやっと上に花が咲いているのに気づいたものです。花弁が一枚ずつ散るのではなく花のカタチのままボトンと落ちるので、首が落ちると言って武士は嫌ったという話もあります。真っ赤な花は血の色も連想するのでしょうか。この落ちた花は落椿(おちつばき)と呼び、春の季語にもなっているそうだ。
ヤブツバキは温帯の照葉樹林を構成する代表的な樹。そのせいか、六甲山でも500メートル以下の暖かい場所に多い。いくら千メートル足らずの低山とはいえ、山上では生育が難しいのかもしれない。
むかし中尾佐助さんの『照葉樹林文化論』関連の本を夢中で読んだものです。日本南西部から台湾、華南、雲南、ブータン、ヒマラヤと広がる照葉樹林帯には共通する文化が多いという説。たとえば納豆やおもち。来日した国王夫妻が着ておられたブータンの民族衣装も日本の着物(どてら)によく似ている。むかしは日本人も「モノの豊かさ」より「幸福度」を貴ぶ生活を営んでいたのかもしれませんね。つやつやした緑の葉を背景に、真っ赤な花弁に黄色のシベが鮮烈なヤブツバキ。幸せに生きることができる恵まれた自然環境の象徴に見えてきました。
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