ノアの方舟、という展覧会
ん? ちょっとキャッチ―な展覧会名ですね。これ、いま兵庫県立美術館で開催されているコレクション展です。サブタイトルに「蒐集(コレクション)による作品たち」とついている。
人はなぜ、何のために蒐集するのか・・・。古代より、人類は世界中の事物やイメージを自らのもとへ集めようとしてきた。本能が命じるのか、まるで業のように熱中する。旧約聖書の『ノアの方舟』のエピソードは、ノアが神のお告げにより地上のあらゆる動物のつがいを巨大な船に集め、大洪水が収まるのを待って動物たちと生き延びたという話。神が一度この世界をリセットして、選ばれた生きものだけの命をつなぎ、そこから新たな世界を創りだす再生の物語だ。この展覧会を企画したキュレーターは、『ノアの方舟』を近代以降の美術館や博物館の原型と考えて、このタイトルをつけたと書いている。この展覧会でさまざまな蒐集のカタチをとりあげて、美術館・博物館の意味を捉え直そうという試みだという。
ここでは収蔵作品を6つのパートに分類して展示されている。ラウシェンバーグや横尾忠則、長谷川潔、森村泰昌などの素晴らしい作品がコレクションされているんだ。なかで特にオモシロかったのが東山嘉事と澤田知子。東山はプラスチックや鉄でできたさまざまな機械や部品やオモチャやガラクタを集めて具体的なカタチ=立体作品を創造している。まさにこの展覧会の趣旨そのもののような作品だ。だからなのか展覧会ポスターやチラシにもその作品の一部が、デザインに使われている。澤田は多くの人の証明書写真を集めて一覧に展示した、ように見えるがすべて自分自身を写したセルフポートレイト。ゼラチンプリントのトーンが美しい。これは一人の人間の中に存在する多様なイメージをコレクションした、とも言えるだろう。
いままでに見たことのある作品もあるし、初めて見る作品もあった。これら悪く言えば雑多な80点ほどの作品が、こんなにも興味深くこちらに迫ってきたのは、キュレーターの腕前に違いない。へぇ、ほぉ、と感心させられることしきり。『ノアの方舟』に乗り込んで、十分堪能させていただきました。
兵庫県立美術館
ノアの方舟 - 蒐集による作品たち -
2014年3月22日(土)~7月6日(日)
10:00~18:00 月曜休館
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