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2014年2月18日 (火)

グルスキー、混沌から

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 混沌としているようで、その場ならではの秩序がある。一つの目的、あるいは同じ価値観を共有していると、ある種の規則性が生まれるものだなぁと感心する。ここで紹介する2作品は、発散するエネルギーと核に向かう求心力との相反する二つのベクトルのバランスが新しい美を生み出している。
 ベッヒャーの教えを受けた作家たちは、事物の類型の収集や反復を通じてひとつの哲学や美学を表現することを好む。これが美術界に新しい潮流を作ったのだが、グルスキーの場合はこれをさらに進化させ、カオス状態があらわす美しさを発見した。とくに人間の集団の場合は、個人それぞれの思いと集団の大きな目的とが、どちらからも見えにくいものだ。
だから現代社会はよけい個々の人間を尊重する必要があると思う。グルスキーはこんな楽観主義で人類の未来を見ているのでしょうか。
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 上のシカゴ商品取引所も、下のベトナムの籐編み工場も、人はみんな思い思いに行動しているけれどバラバラではない。むしろ爽やかな統一感さえ感じます。統一感と言っても、北朝鮮のマスゲームのような個人が見えないものとは本質的に違う。時に間違えたり、ちょっと効率が悪いかもしれないけれど、地道に着々と大きくは狂わず未来へ向かう姿。私には民主主義や個人の人権尊重思想を大切にしないといけない、とあらためて思いました。飛躍しすぎでしょうか? でもそんなふうに感じて、これらの作品がとてもいとおしくなりました。機会があれば、みなさんとグルスキーについてお話しできればいいなと願っています。

国立国際美術館
アンドレアス・グルスキー展
2014年2月1日(土)~5月11日(日)
 

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