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2014年2月12日 (水)

グルスキー、巨視と微視

 

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 全体と細部。マクロとミクロ・・・。時のたつのも忘れて見入ってしまう、そんな言葉がふさわしいアート鑑賞の面白さを久々に体感しました。いま中之島の国立国際美術館で開催中の、ドイツ人写真家「アンドレアス・グルスキー展」。デュッセルドルフ美術アカデミーでベッヒャー夫妻に教えを受けたという59歳の作家だから、20世紀後半からの現代アート・写真のメインストリームを歩んでいるに違いないでしょう。昨年秋の東京・国立新美術館へは見に行けなかったので、さっそく大阪まで行ってまいりました。で、少々気が早いけれど、2014年で一番の展覧会じゃないかと思います。感動しました!大好きになりました!
 グルスキーは大判カメラで撮影し、しかもデジタル処理をして、写真の表現を絵画以上にまで高めた究極の現代アーティストです。これは絵画が写実の追求によって描く技術が進歩し、カメラが人間の眼の性能に追いつこうと進化したという二つの道筋が合流した地点における、表現としての最高到達点。いわばエベレストみたいなものですね。(陳腐な表現でなさけない)

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 色や造形からなる全体の構成に目を惹かれ、近寄って細部を見ているといろんなドラマや人の営みを発見する。この寄ったり引いたりが、観る者を作品世界に強烈に引き込む。だからグルスキーにとっては作品の大きさも重要な要素なのだ。小さいとディテールのおもしろさが見えてこないからだ。
 上の『カミオカンデ』は、ご存じノーベル賞をとった小柴さんが中心になって活動した研究施設。最先端物理学の神殿のおもむきです。よーく見ると右下の方にゴムボートに乗った二人の研究員の姿が。これで施設のスケールもわかるし、いい意味で人間臭さも伝わってくる。これがなければ単なるカタチ。おもしろくもなんでもない。下の『モンパルナス』も巨大なアパートメントをわざとフラットに表現している。(じつはこの作品はさらに5割ほど左側があります。スミマセン) タテ・ヨコの規則的なラインを無機質に美しく、まさにモダンデザインの極致がここにある。しかしそれだけではない。一軒一軒の窓のカーテンの色や中に暮らす人の姿が、それぞれ面白いのだ。覗き趣味を満足させるというのでもないでしょうが。全体の統一デザインは画一だが、個々の生活の場はかえって自己表現の強さが際立っている。
 このようにマクロ的な美とミクロ的な味が見事にマッチして、素晴らしいアート作品が出来上がっている。これは写真ならではの表現であり、従来の美術から一歩未来へ踏み出したアートだと思います。

国立国際美術館
アンドレアス・グルスキー展
2014年2月1日(土)~5月11日(日)

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