グルスキー、巨視と微視
色や造形からなる全体の構成に目を惹かれ、近寄って細部を見ているといろんなドラマや人の営みを発見する。この寄ったり引いたりが、観る者を作品世界に強烈に引き込む。だからグルスキーにとっては作品の大きさも重要な要素なのだ。小さいとディテールのおもしろさが見えてこないからだ。
上の『カミオカンデ』は、ご存じノーベル賞をとった小柴さんが中心になって活動した研究施設。最先端物理学の神殿のおもむきです。よーく見ると右下の方にゴムボートに乗った二人の研究員の姿が。これで施設のスケールもわかるし、いい意味で人間臭さも伝わってくる。これがなければ単なるカタチ。おもしろくもなんでもない。下の『モンパルナス』も巨大なアパートメントをわざとフラットに表現している。(じつはこの作品はさらに5割ほど左側があります。スミマセン) タテ・ヨコの規則的なラインを無機質に美しく、まさにモダンデザインの極致がここにある。しかしそれだけではない。一軒一軒の窓のカーテンの色や中に暮らす人の姿が、それぞれ面白いのだ。覗き趣味を満足させるというのでもないでしょうが。全体の統一デザインは画一だが、個々の生活の場はかえって自己表現の強さが際立っている。
このようにマクロ的な美とミクロ的な味が見事にマッチして、素晴らしいアート作品が出来上がっている。これは写真ならではの表現であり、従来の美術から一歩未来へ踏み出したアートだと思います。
国立国際美術館
アンドレアス・グルスキー展
2014年2月1日(土)~5月11日(日)
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