ベン・シャーンの魔法の線
いま伊丹市立美術館で開催中のベン・シャーン展。サブタイトルに「線の魔術師」とついています。ベン・シャーンは1930年代から60年代にかけて一世を風靡したアメリカの画家。何をテーマに描いたか、という前にパッと見の斬新さ、力強さに驚いたものです。とにかくカッコよかった。この震えるような独特の線に強い影響を受けた画家やデザイナーは、ウォーホルをはじめアメリカでも日本でもたくさんいる。なかでも和田誠さんは、若いころシャーンを真似たような線で絵を描いていた。私より一世代前の人たちにとっては憧れの存在であり、神様のようにあがめられていたのだ。というわけで、私自身は流行に乗り遅れたような思いから、あまりじっくりベン・シャーンの作品を見たことがなかったのです。
で、今回いい機会だと思って伊丹へ出かけたわけ。良かったです。この展覧会を見て、彼が社会性の強いテーマの絵をたくさん描いていたのがわかりました。たとえばビキニ沖の水爆実験で被災した第五福竜丸を扱った「ラッキードラゴン」シリーズやケネディ追悼シリーズ、マフィアの獄中シリーズ。そしてリトアニア出身のユダヤ人家庭に育った自身の文化的背景から、ドレフュス事件シリーズや「マルテの手記」シリーズ、旧約聖書シリーズなどなど。どれも迫害や抑圧に対する人間の尊厳を問うもの。社会の動向を鋭く見抜く洞察力と、弱者に寄り添うやさしい眼差しがあふれた芸術です。
わたしは 憎むものを描く。
わたしは 愛するものを描く。
これはベン・シャーンの言葉。これもカッコいいでしょ!
ベン・シャーン展 線の魔術師
伊丹市立美術館
2013年11月2日(土)~12月23日(月・祝)
10:00~18:00 月曜休館
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