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2013年12月 9日 (月)

かぐや姫が教えてくれた

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 1,000年以上も前に作られた物語の祖、SFファンタジーの元祖のような『竹取物語』。この難しい素材を原作に高畑勲監督が創り上げたスタジオジブリの『かぐや姫の物語』。どのように調理し、どんな味付けで現代のわたしたちの口に合う作品に仕上げるのか、興味津々でした。Photo_5
 まず驚かされたのは、絵のタッチ。今までのジブリとは違う、やディズニーともまったく違う、ダイナミックで斬新なアニメーション表現です。コンテで描かれた素描に淡彩を付けただけ、でもそれがかえってリアリティを高める表現。色を抑え白場もあえて残し、線の強さを強調する。まさに日本人の美意識の極致。映像作家が短編で試みることはあったけれど、こんな長編では初めてのことだと思う。とんでもない時間とお金がかかったことでしょう。信じられません。そのおかげで、今は昔の見たことのない平安時代の空気と日本の美しい自然が伝わってきます。
Photo_3 ストーリーとしては月の住人の姫が罰として地球に遣わされ、そしてやがて月へ帰っていく、というもの。月は天国あるいは極楽浄土に置き換えてもいいのだけれど、悪人もいないし争いもない、清浄で平穏で穢れなき世界。それにひきかえ地球は鳥、虫、けもの、草、木、花・・・と、にぎやかに生命があふれている。騒々しい生存競争の世界。だから喜びや楽しみもたくさんある代わりに、悲しみや苦しみも深い。Photo_4弱肉強食、欲や執着が渦巻く俗な地上界。しかし、だからこそいとおしいのだ。
 天の羽衣を着けたら地上での記憶がなくなる、という設定は怖くせつない。それは愛や憎しみといった人間的な感情からも遠く離れた境地。それは悟りに近いものなのかもしれないが、それじゃつまらないじゃないか、いろいろと悩みは多くても生きるって素晴らしいじゃないか、と高畑監督はかぐや姫を借りて言っているように思う。Photo_2
 未熟な出来損ないの我々でも、いっしょうけんめい「生きる」ことの尊さ。不老不死などを求めるより、自然の中で四季の中で日々の小さな喜びを大切にする生き方。『アルプスの少女ハイジ』のころから変わらないテーマなのでしょう。それをハイジは都市と田舎の対比で表したが、かぐや姫は天上と地上あるいは死後の世界と現世の対比で、それを表現したのではないでしょうか。
   

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