天使のハシゴ
天使のハシゴ、あるいは天使の階段。晩秋から冬にかけてよく見られる現象だ。雲間から一筋二筋伸びて地上へ達する光のオビ。まるで天使が天井に上る(あるいは下る)ハシゴのように見えることから名づけられたそうだ。この光線はヨーロッパの教会でよく目にする荘厳な絵でもおなじみですね。天使だからといってクリスマスやニューイヤーに合わせて現れてくれるわけではない。この季節、太陽の位置が低くなるからよく見える。とくに朝や夕方に多いのも、より太陽が低いから。
太陽の光が空気中のチリや水蒸気にあたって反射したものだから、まわりがある程度暗くなければならない。切れ目がある厚い雲が出ている時がねらい目です。
いま話題のダン・ブラウン作『インフェルノ』(角川書店)でも触れられている、ギュスターヴ・ドレ版『神曲』。地獄や悪魔、聖人や天使のエッチング挿画133点が入った、19世紀の素晴らしい美術出版です。『インフェルノ』は「地獄篇」なので、天使のハシゴは出てきませんが・・・。
『神曲』では、地獄を抜け、煉獄を通り、天国へと昇ったダンテは、そこでたくさんの光に出会う。ここでドレは、これでもか!と神々しい天使のハシゴを多用する。神や天使が登場するシーンはまさに光あふれるイメージが必要だったからでしょう。
「光は力 智は光 愛は光 光は全て」 ダンテは詩う。まっしぐらに光の梯子を舞い昇りながら、私はどこまでも自由だった。「私は光の中にいた」
このように、14世紀のダンテは天使のハシゴを昇ったのだ。たとえ比喩的な意味においても。21世紀の私たちも、そこには何らかの天の意志があらわれている、と考えてもいいんじゃないでしょうか。天使のハシゴが単なる自然現象だ、というだけでは味気ないですしね。
こんなよしなしごとをブログに書いているうちに、はや年の瀬となりました。天国へのハシゴを夢見ながら、ゆく年くる年にゆっくり思いを馳せることにいたしましょう。
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