電線に巻きつかれた樹
異様な雰囲気が視界に飛び込んでくる。それは黒い太い電線でぐるぐる巻きにされた樹の姿。田原唯之の作品「盲目」です。私たちが便利で快適な生活のために、自然を痛めつけていることをシンボリックに表現している。樹が自然を象徴し、電線が文明のシンボルとなる。ただしこれだけでは新しいメッセージがないから、アートとしては成り立たない。
この作品を見たとき、「盲目」というタイトルに最初あれっと思いました。単純な環境保護をテーマにしたのではなかったのか。そして、そのあとじっくりと考えさせられたのです。
「電力という人為の象徴が自然の樹木を締めつける様は、我々の盲目的な眼差しを開いてはくれないでしょうか」と解説にある。
人間が、あるいは人間が作り上げた文明が自然を痛めている。だから人間は自然を保護し守らなければならない、という論理で自然環境問題を語るのは間違いだと思う。それこそ人間の思い上がり。自然は人間に簡単にコントロールされるほどヤワではない、のではないだろうか? 津波や竜巻、土石流など、人間社会に対する地球のリベンジとでも言いたい事象が目立つようになってきた。地球環境問題、温暖化問題、原子力の問題…私たちが信じていた価値観が大きく揺らいでいる現代。こんな時代こそ物事の本質を見る目が必要になる。だから本質を考えるきっかけとなるアートが力になるのではないか、そう願っています。
できれば100年後、200年後のこの作品を見てみたい。この樹は枯れてしまっている? あるいは大きく成長し、縛っていた電線は朽ち果てている?
六甲ミーツ・アート 2013
2013年9月14日(土)~11月24日(日)
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