横尾忠則の肖像図鑑
森鴎外や樋口一葉から江戸川乱歩、谷崎潤一郎や安部公房、開高健まで、もちろん三島由紀夫も・・・。F4号の同サイズのキャンバスに描かれた、明治以降の文学史に登場する主要な作家220人の肖像画がおもしろい。いま神戸の「横尾忠則 肖像図鑑 HUMAN ICONS」展での一部。小品ながらとても大きなパワーで迫ってくる。一癖も二癖もある作家の力もあるのでしょうが、なんといっても横尾さんの画力と人間観察力によるところが大きい。
マリリン・モンローが代表作のアンディ・ウォーホールによる肖像画もおもしろいけれど、リアリティや存在感はYokoo肖像画の勝ち。それぞれの作家の顔だけではなく、内面の世界までも表現するのに、長年の間に身につけてきたさまざまなスタイルの中から最適な方法を選択している。それがさらに小説家や詩人の個性を際立たせています。長いキャリアと独自のアイデアのたまもの。それが才能なのでしょう。
この美術館が素晴らしいのは、横尾忠則という現代美術家の全貌を研究し残そうとしているところ。アーカイブルームには書籍、新聞、雑誌、レコードジャケットなど、膨大な資料が集められ、いまも日々増え続けている。
こんな姿勢が結実した展示のひとつが、三宅一生のパリコレの招待状。1977年から99年までのコレクションの、原画からデザイン原稿、刷り上がった印刷物までを展示してある。従来の日本の美術館ではなかった企画で、とても興味深い。デザイナーからイラストレーター、そして画家宣言をして、とジャンルやメディアを飛び越えて活躍するスーパー・アーティストを、従来の日本美術界のモノサシで測ることは不可能だ。ちょうどルネッサンス期の巨人がそうだったように、多様にジャンル横断的に活躍する全仕事をアーカイブすることこそ、この横尾忠則 現代美術館の設立の意味。ちょっとNYのMoMAの活動精神に似ています。
作家が生きている間に協力を得て、もっともっと充実した美術館に成長し、いい展覧会をどんどん開催してくれるものと期待しています。
横尾忠則 肖像図鑑 HUMAN ICONS
Y+T MOCA 横尾忠則現代美術館
2013年9月28日(土)~2014年1月5日(日)
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