アオーレ長岡で、会おうれ
建築家・隈研吾、アートディレクター・森本千絵、写真家・藤井保による本 『 aore アオーレで会おうれ。“会えるところ”を建築する シティホールプラザ アオーレ長岡』(丸善出版)を読んで、新潟県の長岡までやって来ました。藤井さんに送っていただいたこの本を見て、えらく興味を持ってしまったのです。
ここは市役所とアリーナ、市民交流ホールなどの建物を、大きなガラス屋根で覆った「ナカドマ」でつなげている。ナカドマは中の土間でアオーレ長岡のキモの部分。市民が自由に行きかいさまざまな手作りイベントも開催されるスペースです。
市役所はガラス張り。比喩ではなく、文字通りガラスで覆われて素通しなのです。市長室も、職員が働いている部屋も、市議会も、セミナールームもすべてガラス張り。そして周りはわざわざ通路やウッドデッキで囲まれていて、市民が普通に歩いている。ほんとうにスゴイことだと思います。
アオーレでは地元産の越後杉の間伐材を使ったパネルが、スノコのようにビョウブのようにたくさん使われている。これは適度な目隠しという意味合いもあるのでしょうが、その繰り返しが美しい千鳥パターンのデザインとして機能し、建物全体の際立つ個性になっている。
これまで全国の地方都市では、市役所などの公共施設はやけに立派な建物に建て替えられ、広い駐車場を確保できる郊外に移るのが大勢だった。その結果、お役所はますます市民から遊離し、街の中心部は空洞化しさびれていった。都市の「成長」を目指したつもりが、かえって「衰退」を早めてしまったのです。
ここの名前は「アオーレ」。地元の言葉で「会いましょう」を意味する「会おうれ」。20世紀のハコもの行政から転換し、もう一度市民が出会い集える街の中心を作ろうというネライが見事に表現されたネーミングです。
JR長岡駅からは屋根つきのスカイデッキでつながっています。雨でも雪でも不自由なく行き来ができる。この壁面に藤井保さんの美しい写真パネルが飾られている。アオーレの内外を撮った作品や、長岡の雪景色、名物の花火、人々の暮らしなどが、未来へはばたく長岡を象徴するように並んでいる。みんなに愛され、自慢にされる建築空間。アオーレで会おうれ!
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