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2013年9月25日 (水)

太陽の塔、もうひとつの顔は

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 70年万博のシンボル、岡本太郎の太陽の塔。高さ70m、腕の長さ25m。久しぶりに間近で見てきました。やはり迫力あります。生命の根源的なエネルギーを感じます。イノチの讃歌であるこのモニュメントには、太陽のおかげで地球に生命が生まれたことを考えると、まさに「太陽の塔」という名がふさわしい。
 その当時、なんとなく「科学の進歩や未来への希望を表現したノーテンキなオブジェ」と思っていました。でも今回じっくり眺めていると、別の顔が見えてきたのです。
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 日本万国博覧会記念機構のホームページには、「塔の頂部には金色に輝き未来を象徴する『黄金の顔』、現在を象徴する正面の『太陽の顔』、過去を象徴する背面の『黒い太陽』という3つの顔を持っています」と書かれている。それが公の見解だろう。つまりタテマエ。万博のテーマは「人類の進歩と調和」だから。
 それに対して、この太陽の塔で岡本太郎が表現しているのは、生命の永遠性やエネルギーの賛美。人類の「進歩」なんて思い上がりだ!と、あからさまには言ってないけど、ホンネは縄文時代と何も変わらない、むしろ縄文人のほうが優秀だと、主張している。科学や技術の進歩に異を唱えているのだ。その先進性と普遍性こそが、太郎の芸術です。
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 じつは内部にもうひとつの顔(作品)があったらしい。残念ながら現在行方不明。日本のお役所にしては考えられないことだけど、国の宝をひとつなくしてしまっている。たぶん当時は歴史に残すべき芸術作品、という意識・評価が低かったのでしょう。特に美術界・知識人からボロクソに批判されたし・・・。エライ人たちは誰も大切に思っていなかった。ほんとうに見る目がなくて了見の狭い人たちですね。でも、そんな人たちが文化勲章をもらい、異端児の岡本太郎はもらえない。そうそう、フランス政府からは芸術文化勲章を贈られていますが。
 万博が終わった後、幸いなことにこの巨大なキャラは取り壊されずに残っている。そして今も私たちのイメージを膨らませ、常識的な意識を挑発し続けているのです。

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