« 2013年8月 | トップページ | 2013年10月 »

2013年9月

2013年9月28日 (土)

魚屋道で鯛を運ぶ

Meets
 天覧台にキジの彫刻があった。山村幸則はその上に鯛を載せてしまった。作品名は『 キジ meets 鯛 』。そのままだ。神戸市街を見下ろし、青空を海に見立てて悠然と泳ぐリアルな鯛は、3mぐらいはあるだろうか。ギョっとするインパクトはあるけど、それがなんなの? という感じだった。ところがすぐ隣にある六甲ヒルトップギャラリーの中で、同じ作家の『 六甲 meets ととや/其ノ二 』という映像作品を見て合点がいった。なんとアーティスト山村は、ととやみち(魚屋道)を、天秤棒で明石海峡の鯛を入れた荷を担いで有馬まで歩いたのだ。「ととやみち」は江戸時代に瀬戸内海で獲れた新鮮な魚を有馬温泉まで運んだ道。彼はそれを再現し記録した映像作品を作った。それで山の上に鯛なのだ。
Photo
 下山して六甲ケーブル下駅で『 六甲 meets  ととや/其ノ一 』を見ると、彼は朝暗いうちに明石まで行って漁船に乗せてもらい、鯛を獲るところから始めている。いやいやいや、これはスゴイ! 感動ものだ。漁港から慣れない天秤棒を担ぎ、山陽電車、阪神電車を乗り継ぎ、山越えで有馬まで。有馬に着くころはもう夜になっていた。このパフォーマンスそのものが、アートです。それを記録した映像作品と、その時に使った藍染地に白く「ととや」と染め抜いた半被や地下足袋、豆絞りのねじり鉢巻きを展示。彫刻の鯛も含めて、これら総体が「ととや」の歴史と文化を表現した作品なのです。この体を張ったガンバリ。六甲ミーツ・アート大賞はこの作品に一票を投じました。おつかれさまでーす!

六甲ミーツ・アート 2013
2013年9月14日(土)~11月24日(日)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年9月25日 (水)

太陽の塔、もうひとつの顔は

Photo
 70年万博のシンボル、岡本太郎の太陽の塔。高さ70m、腕の長さ25m。久しぶりに間近で見てきました。やはり迫力あります。生命の根源的なエネルギーを感じます。イノチの讃歌であるこのモニュメントには、太陽のおかげで地球に生命が生まれたことを考えると、まさに「太陽の塔」という名がふさわしい。
 その当時、なんとなく「科学の進歩や未来への希望を表現したノーテンキなオブジェ」と思っていました。でも今回じっくり眺めていると、別の顔が見えてきたのです。
Photo_2
 日本万国博覧会記念機構のホームページには、「塔の頂部には金色に輝き未来を象徴する『黄金の顔』、現在を象徴する正面の『太陽の顔』、過去を象徴する背面の『黒い太陽』という3つの顔を持っています」と書かれている。それが公の見解だろう。つまりタテマエ。万博のテーマは「人類の進歩と調和」だから。
 それに対して、この太陽の塔で岡本太郎が表現しているのは、生命の永遠性やエネルギーの賛美。人類の「進歩」なんて思い上がりだ!と、あからさまには言ってないけど、ホンネは縄文時代と何も変わらない、むしろ縄文人のほうが優秀だと、主張している。科学や技術の進歩に異を唱えているのだ。その先進性と普遍性こそが、太郎の芸術です。
Photo_3
 じつは内部にもうひとつの顔(作品)があったらしい。残念ながら現在行方不明。日本のお役所にしては考えられないことだけど、国の宝をひとつなくしてしまっている。たぶん当時は歴史に残すべき芸術作品、という意識・評価が低かったのでしょう。特に美術界・知識人からボロクソに批判されたし・・・。エライ人たちは誰も大切に思っていなかった。ほんとうに見る目がなくて了見の狭い人たちですね。でも、そんな人たちが文化勲章をもらい、異端児の岡本太郎はもらえない。そうそう、フランス政府からは芸術文化勲章を贈られていますが。
 万博が終わった後、幸いなことにこの巨大なキャラは取り壊されずに残っている。そして今も私たちのイメージを膨らませ、常識的な意識を挑発し続けているのです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年9月22日 (日)

モザンビークの奇跡

Photo_7
 「武器をアートに」。え、「アートを武器に」じゃないの?と一瞬間違えた展覧会、サブタイトルは、モザンビークにおける平和構築。いま、万博公園にある国立民族学博物館で開催されています。アフリカのモザンビークでは1972年の独立から17年間も続いた内戦の結果、戦争終結後も大量の武器が民間に残されました。それを農具や自転車、ミシンなどと交換することによって回収し、平和を築きあげようというプロジェクトが進められたそうだ。
 しかもその回収した銃器を使ってアート作品を作るという。「自転車に乗る親子」、「本を読む人」、「パンを焼く人」、「ギターを弾く人」、「鳥」、「犬」、「とかげ」・・・どれも平和だからこその日常の尊さが表現されている。ArmsでArtを! 素晴らしいじゃありませんか。戦争をする道具が、世界に平和のメッセージを伝えるアートに。
 AK47カラシニコフ自動小銃(旧ソ連製)。AKM(中国製)。ピストル(ドイツ製)。リボルバーピストル(ブラジル製)。G3ライフル(ポルトガル製)。ワルサーPPX(アメリカ製)。RPG-7対戦車ロケット弾発射器(旧ソ連製)。これらは展示されたアート作品に使われた武器です。そのどれ一つとしてモザンビーク、いやアフリカで作られたものはない。この悲しい現実をどう考えればいいのでしょうか。
 
Photo_5
 この会場で紹介されていた言葉に感動しました。ちょっと長いけど紹介します。「僕は、ずっと持っていた銃と交換に、鋤と屋根をふくトタン板を手に入れました。でも、僕が手に入れて良かったと思うのは、銃に対する執着からの解放でした。銃を持っている間は、子供たちも僕のことを恐れて僕に近づきもしませんでした。妻も、僕がいつ殺されるか、またいつ戦闘に出ていくのかが心配で、いつも怖かったのだと言います。それが今、妻はこれまでにないほど、僕を愛してくれています」 ― 銃を手放して ―  テニソン・サトナ。
 モザンビークの『銃を鋤に』プロジェクトは、キリスト教会の司教の発案で始まり民間の人々が主体となって実施されている、という。そして自らの意志で銃を手放し、平和な生活を築こうと立ち上がった多くの人々に支えられている。モザンビークの奇跡。うーん、人間って捨てたものじゃない。人類の未来に希望が持てる展覧会でした。

武器をアートに
― モザンビークにおける平和構築 ―
国立民族学博物館
2013年7月11日(木)~11月5日(火) 水曜休館

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年9月19日 (木)

必見!新しい陶芸アート

Photo
 花器であったり、オブジェであったり、お皿であったり・・・。と、言葉で書くとフツーだが、およそ凡百の陶芸展で見かける作品とは似ても似つかない。というより、目指しているところが違うのだと思う。いま神戸・北野で開かれている『高谷敏正 陶展』、その独創性がスゴイ! 誰かが作るようなモノは作らないのは当然として、いままでに自分が作った作品に似たモノさえ作らないのだ。常に新しいオリジナルを追い求め続けている。Photo_3
 じつは高谷さんは建築家だ。そして兵庫県知事賞、明石市長賞など毎年すばらしい章を受賞している、陶芸アーティストでもある。しかも、趣味の陶芸などといったレベルとは遠く離れた、独自の世界を創造している芸術家だ。見るたびに新鮮な発見がある彼の個展。私は案内をもらった時点から、今回はどんな表現に出会えるか、とワクワクして開催を待っているのだ。
Photo_2
 作品を作るための設計図を見せてもらった。(え、陶芸に設計図があるのか!?) さすが建築家だけあって、緻密な計算から生まれているんだなぁと感心する。浮かんだイメージをスケッチし、技術的に可能か検証し、試行錯誤を重ねて完成させる。そこには「おのずと形が現れる」とか「指先の感覚が覚えている」などといったあいまいさが入り込む余地はない。制作というより構築と呼んだほうがふさわしい、理知的な作り方。だけど決して冷たくはなく、あたたかさやユーモアを感じるのは、彼の人柄のせいでしょう。Photo_4
 陶芸の世界に、建築という異質な価値観を持ち込んで見事に新しい可能性を引き出した高谷さん。なにごとも一つの分野だけでかたまってしまっては進歩が止まる。新たな刺激をどんどん取り込んで、発展していかなきゃ未来がない。
 職人と芸術家。熟練と創造。イメージと実用。いろんなことを考えさせられた、実り多き展覧会でした。

高谷敏正 陶展
2013年9月17日(火)~22日(日)
11時~18時(最終日は17時まで)
GALLERY北野坂
神戸市中央区山本通1-7-17
Tel. 078-222-5517
ギャラリー北野坂

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年9月16日 (月)

御岳の紅葉は9月末ごろから

Photo_2
 標高3,067m。木曽御岳に紅葉を探しに行ってきました。地元では「日本一早い紅葉」と自慢しているので期待していたけれど、やはりまだ早いようだ。見ごろになるのは今月末か来月の初めぐらいからじゃないでしょうか。そのなかで真っ赤に熟した実が美しいナナカマドが目立っていたかな。でも葉は赤じゃなくて黄色に変わっている。去年は10年に一度の紅葉と言われたが、今年の紅葉はあまりよくないのかもしれない。Photo_4
 それにあいにくの天候で、頂上はガスがかかってまったく眺望がなかった。トホホの気分。登る途中に降りてくる人から聞いたのだが、今朝は一瞬だけどガスが晴れ、ご来光と富士山をばっちり拝めたそうだ。運のいい人がいるもんだ。でもまぁ雨や雷に比べれば、良しとしなきゃ。御岳は信仰の山、きっと信仰心の篤い人はお天気に恵まれるのでしょう。というより、台風が近づいているのを知りながらの登山。はっきり言うとバカですねぇ。
Photo_3
 でも遠くは見えなかったけれど、森林限界あたりに白い美しいオブジェがたくさんあるのを発見した。曲がりくねった木の根が枯れて白くなったのか、とも思ったが、よくよく考えればハイマツの立ち枯れ。ハイマツだから地面を這うように生えていた幹が枯れて白骨化したものでしょう。まさに白骨、雨風にさらされた凄惨な美しさです。これも自然が生みだした驚異の美。これの原因の一つが活火山・御岳が噴き出している亜硫酸ガスじゃないだろうか。2,800mを過ぎたころから時おりイオウっぽい刺激臭がしていた。Photo_5山小屋のご主人によると「西風の日は、噴火口から亜硫酸ガスが吹き流されてくる。臭いを感じたら吸い込まず、横を向いてやり過ごしてください」。そんなにうまくいくかなぁ。
 降りるとき、ほんのわずかな時間ガスが晴れ、雪渓の横に神秘的な青い水をたたえた二ノ池が見えた。この水を見ると、疲れがスーッとひいてきた。できれば30年腐らないと言われるご神水で有名な三ノ池まで廻りたかったが、この天気。賽の河原で遭難するなんてお笑いなので、あきらめて下山しました。またの機会ということで。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年9月13日 (金)

六甲山でアートに出会う

Photo
 今年もやって来ました、六甲山でアートに出会える季節。六甲ミーツ・アート2013が始まります。下界はまだ暑いけれど、山の上は涼しい秋風が心地よい。これから紅葉が進む11月24日(日)まで、山上のそこかしこで自然の風景に溶け込んだ、あるいは強烈な違和感を与えるアート作品に出会うことができます。越後妻有や瀬戸内など、現代アートはアウトドアへ向かうのがトレンド。ここ六甲も大空のもと緑に囲まれた絶好のロケーション!
 今年の出展アーティストでは、ひびのこづえや船井美佐、そしてレッキンクルーオーケストラのダンスパフォーマンスなどに期待が高まります。このアートイベントは年々中身が充実してきているので、新しい作家や表現との思いがけない出会いのチャンスも増えている。今年はどんな感動に遭遇できるか楽しみです。さぁ、六甲山へ出かけよう!

六甲ミーツ・アート 2013
2013年9月14日(土)~11月24日(日)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年9月10日 (火)

「楽園のカンヴァス」

Photo_13
 山本周五郎賞に輝いた原田マハさんの『楽園のカンヴァス』(新潮社)は、ピカソとルソーと言う2人の巨匠の画家が登場する、史実に基づいたフィクションです。
 「ふ〜ん、でも断然ピカソのほうが有名だよ・・・ね? ルソーの代表作って? あっ、ピカソと同時代の画家だったんだ! しかも2人は交流があったのか」。 と、この本を読み始める前のけいママの知識は実に乏しいものでありました。巨匠!ごめんなさい。
 ルソー晩年の傑作「夢」。それとそっくりな作品が描かれた「夢を見た」は真作か贋作か? 絵画の世界を震撼させるミステリー。それにしても名画って何なんでしょうね。だれが、どうやってそれを決めるのでしょうね。
Photo_14
 ともあれこの物語を読み終えた後、ルソーの作品とやらが気になって仕方がない。ネットであれこれ調べてため息を付く。「ふ〜ん、ヘタウマと言われてはったんか」。貧困の中で、それでも情熱を注いで作品を描き続け、認められることもなく世を去った・・・ そんな画家たちの、なんと数多いことか。
 原田マハさんは20年近く美術の世界に居た方だそう。ピカソとルソーの物語を「いつか表現できたら」と、長く温めてこられて誕生したこの物語は、贅沢なそのお裾分けを頂戴しているような読後感。これほどまでに、行間から色鮮やかなシーンを想像し、わくわく出来る本にはちょっとお目にかかれないと思います。
 名画からこぼれ落ちた、まるで緑の深い森をさまよっているよう魅惑的なストーリーを堪能したら、次は美術館に行ってみたくなりました。出来れば「アンリ・ルソー」を観に。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年9月 8日 (日)

アオーレ長岡で、会おうれ

Photo
 建築家・隈研吾、アートディレクター・森本千絵、写真家・藤井保による本 『 aore  アオーレで会おうれ。“会えるところ”を建築する  シティホールプラザ アオーレ長岡』(丸善出版)を読んで、新潟県の長岡までやって来ました。藤井さんに送っていただいたこの本を見て、えらく興味を持ってしまったのです。
 ここは市役所とアリーナ、市民交流ホールなどの建物を、大きなガラス屋根で覆った「ナカドマ」でつなげている。ナカドマは中の土間でアオーレ長岡のキモの部分。市民が自由に行きかいさまざまな手作りイベントも開催されるスペースです。Photo_2
 市役所はガラス張り。比喩ではなく、文字通りガラスで覆われて素通しなのです。市長室も、職員が働いている部屋も、市議会も、セミナールームもすべてガラス張り。そして周りはわざわざ通路やウッドデッキで囲まれていて、市民が普通に歩いている。ほんとうにスゴイことだと思います。
 アオーレでは地元産の越後杉の間伐材を使ったパネルが、スノコのようにビョウブのようにたくさん使われている。これは適度な目隠しという意味合いもあるのでしょうが、その繰り返しが美しい千鳥パターンのデザインとして機能し、建物全体の際立つ個性になっている。
Jr
 これまで全国の地方都市では、市役所などの公共施設はやけに立派な建物に建て替えられ、広い駐車場を確保できる郊外に移るのが大勢だった。その結果、お役所はますます市民から遊離し、街の中心部は空洞化しさびれていった。都市の「成長」を目指したつもりが、かえって「衰退」を早めてしまったのです。Photo
 ここの名前は「アオーレ」。地元の言葉で「会いましょう」を意味する「会おうれ」。20世紀のハコもの行政から転換し、もう一度市民が出会い集える街の中心を作ろうというネライが見事に表現されたネーミングです。
 JR長岡駅からは屋根つきのスカイデッキでつながっています。雨でも雪でも不自由なく行き来ができる。この壁面に藤井保さんの美しい写真パネルが飾られている。アオーレの内外を撮った作品や、長岡の雪景色、名物の花火、人々の暮らしなどが、未来へはばたく長岡を象徴するように並んでいる。みんなに愛され、自慢にされる建築空間。アオーレで会おうれ!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年9月 6日 (金)

太古の声を聴くように、

Photo
 ここは犬島の、石職人の家跡。その敷地に、土や石や木などの自然素材を使った作品がある。淺井裕介の「太古の声を聴くように、昨日の声を聴く」。まるでストーンヘンジや古代マヤ文明の遺跡のように見えます。それが作品名の前半『太古の声を聴くように』にあたるのでしょうか? そうすると、かつてそこにあった建物の柱や礎石に見えるオブジェが、後半の『昨日の声を聴く』ということになる。
 アーティストはこのような方法で、私たちの注意を喚起する。この土地に降り積もり、深く沁み込んで沈潜している感情や記憶に、じっと耳を傾けろ!目を見開いてしっかり見ろ!と。この島固有の自然、人々の営み、歴史、文化。でもそれは、この犬島に限ったことではない。世界中どこでも同じことが言える。そうか、作家が言いたいのはそのことなのだ。
Photo_2
 近づいて見てみる。アースカラーの自然素材で描かれたパターン模様は、原始の姿のようでもあり、宇宙のひみつを解き明かしているようでもあり、未来のコンピューターの配線図のようでもある。それはこの場所、この家の記憶を超えて、時空のはるかかなたからの記憶。DNAに刷り込まれた地球上の生命の記憶。もしかしたら地球が生まれるもっと前、宇宙誕生の記憶。
 私たちは、なぜここにいるのか。そしてどこへ行くのか・・・。淺井裕介の作品は、一軒の家の跡から、一つの島から、一つの国から、世界や宇宙や時間を考える視点を提供してくれました。ミクロからマクロへ、想像力が私たちの視界を無限に拡大してくれる。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
春:会期、夏:会期 終了しました
秋:10月5日(土)~11月4日(月・祝)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年9月 4日 (水)

家プロジェクト、透明なS邸とA邸

Photo_6
 犬島にはアートディレクター・長谷川裕子と建築家・妹島和世が手掛ける家プロジェクトが、現在5軒。空き家や住居跡をリノベーションし、アートの力で島を活性化させようという試みです。そのうち透明アクリルを壁面に使い、どちらもアーティスト・荒神明香の作品を展示する2邸を紹介しましょう。Photo_7
 まずS邸は、大きさも焦点も異なる円形レンズをたくさん使ったインスタレーション「コンタクトレンズ」を展示。遠目には海の底からあらわれる泡のように見える。近くによると空や木々や家々や人々がいろんな角度やサイズで映っているのがわかる。そして透明の壁だから、向こう側の緑の山や石垣は、透けて見えている。文字通り、アートが島の風景や人々の暮らしと一体化しています。
 見慣れた風景が、このように複眼的に見ることによって生まれる、新鮮な驚き。伝統的な焼き板壁の景観に、モダンな異物であるアクリルを放り込んで、ストレスを与えることなく調和と良き刺激を生みだす方法・技術は、「透ける」と「映る」でしょうか。これは全国の街づくりのヒントになるかもしれません。
Hana_2
 もう一つはA邸。こちらも透明アクリルのリング状の構築物のなかに、荒神明香の作品「リフレクトゥ」が展示されている。色鮮やかな花びらが空中に乱舞する立体作品。まだ島にたくさんの人が住んでいたころの盆踊りのにぎわいのように感じます。華やかな浴衣姿の踊り手がつらなって、一つの時間を共有する。Hana_3古き良き時代の記憶。
 花は生と死を強く意識させるものですが、造花のウソっぽい華麗さは美しいがゆえによけい死の匂いを強く喚起させます。桃源郷、極楽浄土、ユートピア、シャングリラ・・・。この世にはない場所、つまり死と隣り合わせにある場所。
 透明な壁に囲まれた空間の内側に置かれた銀色に輝く椅子、そこは人生の終末に座って来し方を回顧するために置かれた椅子? そんなことはないでしょうが、白昼夢を見ているようなシュールな光景でした。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
春:会期、夏:会期 終了しました
秋:10月5日(土)~11月4日(月・祝)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年9月 2日 (月)

妹島和世の中ノ谷東屋

Photo_2
 暑さのなかアートめぐりに疲れたら、ちょっと一休みして水分補給。そんなときにピッタリなのが、妹島和世さんが創った東屋。細い円柱で支えられたキノコのような形の軽やかな金属(アルミ?)の屋根。視界を遮らず、風もよく通るよう、壁はない。だからどこからでも出入り自由。軒が低いので入るとき屋根の端をつかんだら、アッチチチチーッ。太陽に焼けて7~80℃になっているんじゃないだろうか。
 目がクラクラする強い日差しの只中から、ちょっとうす暗く感じる空間に足を踏み入れると、一転涼しい風が吹き抜けホッとする。床は地面の傾斜やデコボコをそのまま残したコンクリート。凹曲面の天井はまわりの緑を映して空気までグリーンに染めている。
Photo_3
 内部空間に置かれた椅子はSANAA(妹島和世+西沢立衛)がデザインした「ラビットチェア」。かわいいでしょ。このとっても開放的なスペースが、オモシロいことに音は内にこもって反響する。話し声も拍手も足音も、こだまのように響き、増幅され、体中が音に包まれる。天井の凹面にその秘密があるようだ。
 視覚の開放性と聴覚の閉鎖性。このギャップが、なんか不思議な感覚を呼び起こす。内と外を隔てる壁はいっさいない、いけいけのスペース。だけど目に見えない結界が確かに存在するようだ。まるで神社の、笹としめ縄で囲まれた聖なる場所。そうだ!ここは暑さや雨から避難するシェルターであるだけじゃなく、疲れた精神を癒やし次へ進む活力を蓄えさせてくれるパワースポットなのだ。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
春:会期、夏:会期 終了しました
秋:10月5日(土)~11月4日(月・祝)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年8月 | トップページ | 2013年10月 »