近代化の跡、犬島製錬所美術館
周囲4kmの小さな島、犬島、岡山県の宝伝港からあけぼの丸という高速船で10分で着く。1909年に銅の製錬所が開設されて最盛期には5,000人以上が島で生活したが、銅の価格が大暴落し、わずか10年で操業を終えたという。そして現在の島の人口は約50人。
その近代化産業遺産を再生・活用した犬島製錬所美術館は、建築家・三分一博志とアーティスト・柳幸典の合作です。入り口に至るまでのアプローチから、壁面や路面に使われたカラミ煉瓦の存在感に圧倒される。銅を製錬した後の残りカスを型に入れて固めたカラミ煉瓦、いかにも重そうで黒っぽい独特の質感です。しかも100年の歳月を物語る傷や凹み。ほれぼれするほど美しい。新しく付け加えたガラスや太陽光パネルなど最先端技術との対比が、近代化の光と影、自然や環境との共生を考えさせて興味深い。
カラミ煉瓦と鏡で構成された、光に向かってくねくねと歩く暗い迷路。館内の6つのスペースには柳幸典の「ヒーロー乾電池」が設置されている。近代化に警鐘を鳴らした三島由紀夫をテーマにしたこの作品は、自決した時の檄文や小説の一節をモチーフにし、三島が生前住んでいた家の建具も使用。耽美的なイメージの世界を構築している。私はなんの関連もないのだが、なぜか上田秋成を思い浮かべていました。
美術館を取り巻く大規模な遺構のそこここに、白百合が咲きこぼれていました。自生している群落なのか、植えられたものなのか。係りの人に聞いてみたけど、わからないという。三島由紀夫って百合の花を愛していたのでしたっけ? どなたか教えていただければ幸いです。
アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
夏:7月20日(土)~9月1日(日)
秋:10月5日(土)~11月4日(月・祝)
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