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2013年8月

2013年8月31日 (土)

近代化の跡、犬島製錬所美術館

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 周囲4kmの小さな島、犬島、岡山県の宝伝港からあけぼの丸という高速船で10分で着く。1909年に銅の製錬所が開設されて最盛期には5,000人以上が島で生活したが、銅の価格が大暴落し、わずか10年で操業を終えたという。そして現在の島の人口は約50人。
 その近代化産業遺産を再生・活用した犬島製錬所美術館は、建築家・三分一博志とアーティスト・柳幸典の合作です。入り口に至るまでのアプローチから、壁面や路面に使われたカラミ煉瓦の存在感に圧倒される。銅を製錬した後の残りカスを型に入れて固めたカラミ煉瓦、いかにも重そうで黒っぽい独特の質感です。しかも100年の歳月を物語る傷や凹み。ほれぼれするほど美しい。新しく付け加えたガラスや太陽光パネルなど最先端技術との対比が、近代化の光と影、自然や環境との共生を考えさせて興味深い。
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 カラミ煉瓦と鏡で構成された、光に向かってくねくねと歩く暗い迷路。館内の6つのスペースには柳幸典の「ヒーロー乾電池」が設置されている。近代化に警鐘を鳴らした三島由紀夫をテーマにしたこの作品は、自決した時の檄文や小説の一節をモチーフにし、三島が生前住んでいた家の建具も使用。耽美的なイメージの世界を構築している。私はなんの関連もないのだが、なぜか上田秋成を思い浮かべていました。
 美術館を取り巻く大規模な遺構のそこここに、白百合が咲きこぼれていました。自生している群落なのか、植えられたものなのか。係りの人に聞いてみたけど、わからないという。三島由紀夫って百合の花を愛していたのでしたっけ? どなたか教えていただければ幸いです。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
夏:7月20日(土)~9月1日(日)
秋:10月5日(土)~11月4日(月・祝)

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2013年8月29日 (木)

栄町で、Dina Litovsky展

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 いまアメリカの写真家 Dina Litovsky(ディナ リトウスキー)の個展「UNTAG THIS PHOTO」が開催されている。NYのクラブでハチャメチャにはじける女子たちを撮った作品。場所は昨年までPAXREXがあったところ。現在はTANTO TEMPOさんのギャラリーです。Photo_2
 親しい仲間と酒を飲み、ハメを外し、自己をさらけ出し・・・。そんな極めてプライベートな場所にもデジカメやケータイは入り込み、写し写されはコミュニケーションの必須アイテムとなっている。そしてそれらの画像はSNSにアップされる。それを見ながらコミュニケーションの輪はさらに深まる。あっという間に世界中に広がり、タグ付けされて名前まで明らかになり、その画像は独り歩きを始める。その流れはもう止められないのかもしれません。
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 現代における写真の使命と意味とは? あらゆる場所で、あらゆる時に、ヒトやモノが撮られネット上に流れている。画像の民主化、という意味ではこれほど進んだ時代はかつてなかった。しかも画像にはタグが付けられることによって、次々と意味が変化し、さらに広まり、著作権やプライバシーなど20世紀の価値観とは異なった原理で成り立っているように思える。ビッグデータのほんの一部。個人なんてとるに足りないものなのか。
 で現実に生きるヒトは、それに抵抗するようにとことん騒ぎ、血も出し涙も流し、リアルな実感を求めて生きていく。Dina Litovskyはそんな今を生きるNYの女性を、きわめて冷静に撮影している。だから彼女の作品には、はじける女性の周辺のどこかに、その女性を写しているデジカメやケータイも写し込まれている。それは、現代における写真の使命=大量消費されるコミュニケーションのツールだ、と彼女は言っているのかもしれません。

TANTO TEMPO
Dina Litovsky写真展
2013年8月3日(土)~9月22日(日)

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2013年8月27日 (火)

奈川で、夏そばまつり

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 え、夏に新そば? そうです、8月25日(日)に、「秋まで待てないあなたへ」とサブタイトルがついたイベント・夏そばまつりが、ながわ山彩館で開催されました。朝10時から、採れたて、挽きたて、打ちたての夏そばが、ざる200食限定・550円でふるまわれる。Photo_6日本一と称される奈川のそば。知らなかったけれど、夏にも収穫されるんだって。もちろん秋そばが収穫量は圧倒的に多いそうだけど、夏そばは日照時間が長いのでルチンなどの栄養価が高いらしい。うん、香り高くておいしい! さすが、奈川在来種の新そばです。
 ほかにも催しはいっぱい。そばおやき、山菜おこわ、きびおこわ・・・「花豆の会」という地元の郷土料理研究会のお母さんたちが手作りした、おいしい味の販売。採れたて野菜の即売。地元のそば打ち名人(おばさんたち)による、そば打ちの実演。ちなみに、この村に嫁入りすると、そばが上手に打てるようになって初めて一人前と認められたそうな。
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 いま奈川ではそばの花盛り。もちろんこれは秋そばの花で、9月末ごろに収穫される。標高が高い山間の地ならではの冷涼な気候、昼夜の寒暖差が大きいから朝霧が出やすい。おいしいそばがとれる条件がそろっています。とはいっても、作物が育ちにくい厳しい風土。育てる苦労もたいていではないと思います。Photo_11
 おいしいおそばを食べていると、アサギマダラ(浅葱斑)がひらひらと飛んできました。長距離を移動することで有名なアサギマダラは、渡り鳥ならぬ渡り蝶。冬は暖かい南西諸島や台湾で過ごすそうです。今年は5月中ごろにも奈川で見ました。春に渡ってきたときに見て、これから南へ渡っていく前に見た、ということでしょうか。和歌山でマーキングされた個体が、83日後に香港で捕獲されたという記録もあります。風に吹き飛ばされそうなやわな姿で、よくもまあそんな長い距離を・・・。人の営みと自然の不思議に感動した一日でした。
 

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2013年8月25日 (日)

あいちトリエンナーレのPR

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 「心臓音のアーカイブ」へ向かって歩いていると、アレッ、こんなところに作品展示があったっけ?と思う施設がありました。場所は豊島の唐櫃地区。ほら、いかにもという見え方でしょ。なにかの工場跡を利用したアートスペース、最近はやりのスタイルです。唐櫃美術館という看板が掲げられている。中に入って聞いてみると、ここは空き家になっていた元・海苔工場を改修したそうだ。しかも、今年が2回目の開催となる「あいちトリエンナーレ2013」のPRのために、瀬戸内芸術祭の会場に乗り込んだ、というわけです。でも、あまり「あいち」が強調されていない。まったく気が付かなかったぐらいだもの。もう一度外へ出て眺めると、たしかにポスターも貼ってあるけれどずいぶん控えめ。なかなか好感が持てます。
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 中には四角い木枠を積み重ねたおしろいオブジェや、東北の被災地で撮影されたモノクロ写真などが、暗い空間に浮かび上がって展示されている。名古屋と岡崎で、10月27日まで79日間の開催で、テーマは「揺れる大地・・・われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」。東日本大震災以後、生活も政治も文化も、すべて以前とは変わってしまったいま、芸術も変わらざるを得ない。というより、アーティストもこれを抜きに制作活動などできないのではないでしょうか。
 あいちトリエンナーレは現代アートだけではなく、演劇、ダンス、音楽など舞台芸術も柱にする、ユニークな芸術祭です。ぜひまた名古屋に足をお運びください。忙しくなりそうですよ。あれ、すっかりPRの片棒をかついでしまいました。

あいちトリエンナーレ2013
8月13日(火)~10月27日(日)

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2013年8月23日 (金)

心臓音のアーカイブを体験する

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 クリスチャン・ボルタンスキーは、昨夏の越後妻有トリエンナーレで感動した作品「No Man's Land」を作ったフランスのアーティストです。彼は2008年から人々が生きた証として、心臓音を収集するプロジェクトを展開している。ここ豊島の唐櫃浜にある「心臓音のアーカイブ」は、世界中で集めた心臓音を恒久的に保存し、それらを聴くことができる小さな美術館。
 館内は3つの部屋で構成されている。まず真っ暗な部屋で心臓音が大きく響くインスタレーションが展開されるハートルーム。不気味に、あるいは力強く打ち鳴らす打楽器のような音に合わせて、照明が点滅する。胎内に戻ったかのような心細いけれど安らぐスペース。2番目は集められた心臓音を収録場所や名前から検索して聴くことができるリスニングルーム。そして3番目は心臓音を再録するレコーディングルーム。美術館というより、なにかの研究所のようです。
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 ハートルームがなかでは美術館らしい部屋だが、その展示だけならあまり面白くない。キモは最後のレコーディングルームです。希望する人は登録料1,500円を払えばこのレコーディングルームで心臓音を再録してくれる。採録された心臓音はメッセージとともにアーカイブ化され、作品の一部となるという仕組みです。このシステムというか行為そのものがアートなのです。(こうなると現代アートってわからない、と言われそうですが…) アーカイブはすでに2万人近くになり、日々増え続けているそうだ。そして登録した人は、いま採ったばかりの自分の心臓音も含まれたCDブックレットを持ち帰ることができます。
 自分がアート作品に参加する喜び。これは理解できますが、正直言ってどの心臓音もそれぞれ違いはあるにせよ、あまり面白くなかったです。ゴメンナサイ。ま、面白いかどうかが大事ではなく、あらゆる人の心臓音を取捨選択せずに同列で集めることに意味があるのだから、これでいいのでしょう。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
夏:7月20日(土)~9月1日(日)
秋:10月5日(土)~11月4日(月・祝)

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2013年8月21日 (水)

アートなカフェで一休み

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 アートめぐりに疲れたら、涼しいところで一休み。どうせならアートを感じるカッコいいカフェで、というわけでやって来たのが「イル・ヴェント」。豊島の家浦港から徒歩5分。これも瀬戸内芸術祭2013のれっきとした作品です。トビアス・レーベルガー作、「あなたが愛するものは、あなたを泣かせもする」が正式作品名。わかったようなわからないようなタイトルですが、なにか人生の奥義を感じてくださいね。そう思って見ていると、屋根瓦の漆喰が妙に白いのを除き、なんの変哲もなさそうなこの家が、だんだん気になってきませんか?
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 古い民家を改修したこの店、靴を脱ぎ、ビニール袋に入れて中に入ります。すると表の伝統的日本家屋とはかけ離れた別世界。壁もテーブルも椅子も、白、黒、赤の強烈なストライプで、平衡感覚がぐらぐらっと崩れます。水平や奥行に自信が持てなくなります。「めまい」こそアートの原理のひとつなんだ、とあらためて感じました。二階は扁平した大きなドット模様が基調の、また違った雰囲気。「中庭のオープンテラスもいいですよ」と声をかけられましたが、この暑さの中、ちょっと遠慮させていただきました。秋シーズンならきっと最高でしょう。
 おっと、忘れていました。メニューはコーヒーやソフトドリンク、レモンケーキやチーズケーキなどで、普通においしいと申し上げておきましょう。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
夏:7月20日(土)~9月1日(日)
秋:10月5日(土)~11月4日(月・祝)

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2013年8月19日 (月)

バスケットとドラえもん地蔵

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 豊島の唐櫃港から7~8分。小さな公園にユニークなバスケットボールのゴールがあります。大きなバックボードはどうやら豊島のカタチ。リングは6つも! しかもコートの反対側にはゴールはありません。はて、どんなゲームをするんだろ?
 これはスペインのアーティスト、イオペット&ポンズによる作品。タイトルは「勝者はいない。・・・マルチ・バスケットボール・・・」。ふざけたゴールだと思うか、そもそもスポーツに勝ち負けは大切じゃないと考えるか、この作品はあなた自身の思想や哲学を映す鏡です。さて評価はいかに。そばにいつでもバスケを楽しめるよう、ボールが10個ほど用意してあります。熱中症にかからない程度にひと汗流してください。
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 この公園の片すみには、なぜかバスケットボールを眺めている「ドラえもん地蔵(?)」があります。大きいのと小さいの。親子かなぁ。え、ドラえもんに子供がいましたっけ? それより何故にここにあるのか。子どもたちが遊ぶ遊具ではないんですよ。なにかのご利益があるようにも見えないし・・・。謎です。Photo_6
 ここから少し歩いたところに、おもしろい鉄製の黒いものが並んでいる。よく見るとイカリでした。このあたりには漁港が多いから、と合点しかけたが、それにしては小さいし数が多すぎる。きっと養殖イカダなど大量に使う用途があるのでしょう。同じカタチが整然と並び、おまけにサビが出たり汚れたり、鉄ならではの質感が感じられ、アートのような美しさ。アートをめぐる旅を続けていると感覚が鋭敏になるのか、道端のなにげないものにも目が留まり、美を感じることができる。ちょっと得した気分です。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
夏:7月20日(土)~9月1日(日)
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2013年8月17日 (土)

遠い記憶のトンネル

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 豊島の甲生(こう)地区の旧・集会所を舞台にした塩田千春の作品「遠い記憶」。島々から使われなくなった窓や障子などの木製建具を集め、トンネルにして建物に突き刺したアート作品です。3年前の第1回芸術祭のときに制作されたそうですが、建物の老朽化によって今年が公開最後の年になるそうです。本数の少ないバスに乗って足を延ばして大正解。予想よりはるかにオモシロイこの作品を観ることができて、ホントにラッキーでした。余談ですが、この作品の受付をされていたのが、昨年の越後妻有トリエンナーレである展示のキュレーターをされていた方。またどこかでお会いする機会があると思います。
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 トンネルの中を歩くとちょうど風の通り道となり、とても涼しくて気持ちいい。屋外では建具の桟の影が美しい模様を描いている。うす暗い屋内ではむこう側の緑をガラスに反映した美しい色あいの空気に包まれます。それぞれの建具に込められた「遠い記憶」。春も、夏も、秋も、冬も、晴れた日も雨の日も・・・楽しい時間、悲しい別れをいつもそばで見てきた窓。家族の記憶も地域の歴史も、すべてここに蓄積されているように感じる。静寂のなかに含まれた饒舌。まるで過去へのタイムトンネルのような感覚は、SF映画のシーンからの連想だけではないようです。
 なおこの作品は、次回に向けて新たな記憶としてよみがえらせる計画が進行中、とのこと。期待しています。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
夏:7月20日(土)~9月1日(日)
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2013年8月15日 (木)

高所恐怖症の方、お断りアート

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 マイク+ダグ・スターンによる巨大なインスタレーション、その名も「Big Bambu」。豊島の甲生(こう)地区にあります。彼らは数千本の竹を使い、地上から15m以上の高さにツリーハウスのようなやり方で巨大な構造物を作ってしまいました。まず受付のテントで言われたのが、「足が弱い方、高所恐怖症の人はご遠慮ください」。高さ15mと言っても山の斜面の竹林の上だから、登り口から考えるとその標高は優に50mはあると思う。
 Photo_13斜面の傾きに沿って、しかも地面からだいぶん離れた竹林の中ほどに、曲がりくねって付けられた登り路も、もちろん竹でできています。すれ違いもできない狭さだから、7~8名ずつのグループになってガイドさんに引率されて登っていく。竹だから平らじゃないし滑りやすいし、生えている竹を支柱にしているので路全体がゆらゆら揺れる。登ること10分あまり。とつぜん前方が明るく開けて、そこに帆を張った船のような形状のスペースがあらわれる。竹林の梢に乗っかった展望台。涼しい風に吹かれ瀬戸内海の美しい島々を眺めていると、しばし高所の恐怖を忘れる。この構造体、くみ上げるのに釘や金具は一切使っていない。登山用のザイルで縛っているのだ。
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 これを作るのにアメリカから15人ほどがやって来て制作したそうだ。もちろんクライマーも20人ぐらいが手伝って。登山の技術なしにはとうていできない作業でしょう。
 登り始めてから地上に生還するまで、所要時間は約30分。2ほどよいスリルと素晴らしい景色を楽しみ、ちょっとした達成感も味わえる極上のエンターテインメント。だから現代アート巡りはやめられない。
 バス停に向かって歩いているときに振り返ったら、見えてるじゃないですか! 竹の海に浮かぶ船が! ここに向かうときにはまったく気が付いてなかったけれど、こうして見てみると、やっと全体像がつかめました。見えていないこの下にも、作品の一部である登り路は延々と続いているのだ。お疲れさまでした。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
夏:7月20日(土)~9月1日(日)
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2013年8月13日 (火)

豊島横尾館と豊島美術館

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 豊島の表玄関、家浦港から歩いて7分。横尾忠則の死生観をシンボリックにあらわす豊島横尾館が7月10日にオープンしました。建築家・永山祐子が民家を改修。母屋、蔵、円形の塔からなる、赤い色ガラスが効果的なユニークな建物です。ニホン庭園に配置された岩は真っ赤、鶴や亀の石像は金色。水底に砕いた陶器やタイルを貼った色鮮やかな池が母屋の床下まで続き、それらをガラス張りの床を歩きながら鑑賞する。あるいは縁が赤の畳の座敷に座って眺める。ゴクラクとはこんな感じかも、と思いました。そして円形の塔の中は鏡張りの仕掛けで、アタマがクラクラ目もくらむ。横尾ワールドのパワー全開です。
 「塔は男性原理、庭は女性原理を表し、精液が子宮に流れ込み生命が誕生する、その循環を象徴しているんです」と、横尾さんはおっしゃっているそうです。
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 この島が誇るもう一つの素晴らしい美術館が、アーティスト・内藤礼と建築家・西沢立衛によって2010年秋に完成した豊島美術館です。地上に降り立ったUFOのようなこの建物は、40m×60mの水滴のようなカタチで柱が一本もないコンクリート・シェル構造。天井にある2ヵ所の開口部からは、つねに光と音と風が入る。雨が降れば雨も入る。まさに周囲の自然と一体化だ。
 季節や時間によってさまざまに表情を変える内部空間では、靴を脱いで入った観客は座ったり寝転んだり、みんな思い思いに瞑想にふけっているようだ。しかも、微妙に凹凸がある床からは、どこからともなく水滴があらわれ、コロコロと流れて集まり大きめの水たまりを作る。そして水の動きと形は無限に変化する。何も考えず静かに呼吸するだけの自分。これこそ宇宙との一体化、無我の境地かもしれない。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
夏:7月20日(土)~9月1日(日)
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2013年8月11日 (日)

鏡の船、青への想い

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 「鏡の船」は文字通り小さな廃船を鏡張りにして、海に浮かべた作品だ。文字にするとそれだけのものなんだけど、実際に見るとこれが実にオモシロイ。揺れる波、石垣の岸壁、青空に白い雲・・・あらゆるものが映り込んで、常に色と形が変化する。それでいて実体としての船は姿をなくす。透明人間のように実像は消え失せ、見えているのは美しい虚像ばかり。
 なにやら最近の私たちの社会を見ているようではありませんか。文明化が進んで、情報化が進んで、便利で快適になったはずなのにリアリティがない。なぜなんでしょうねぇ。
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 この「鏡の船」はクレイグ・ウォルシュ&ヒロミ・タンゴの作品で、豊島(てしま)の南部にある甲生(こう)の海岸で見られる。船から5分ほど歩いた古民家では、この船が沖合を漂っている映像が液晶ディスプレイで鑑賞できる。Photo_5そしてその横には地域の人たちから提供された古布で作った畳から天井まで伸びたオブジェが。海の底から生えたサンゴのような、地の底から湧き出たこの土地の魂のような、不思議なカタチとボリュームで深い存在感を発している。作家の海への想い、青への想いが心に残る展示でした。
 そして会場になったこの家は、五右衛門風呂やカマドがそのまま残り、人が住まないのがもったいないくらい素晴らしい状態。海辺の村の懐かしい暮らしと文化がしのばれます。虚像ではない実像の文化が・・・。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
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2013年8月 9日 (金)

摩耶山&カフェ・ジャンティ(Cafe gentil)

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 毎日暑い、暑い! それでも山に行く! 我らが六甲山は、そんな神戸っ子をあたたかく迎えてくれる・・・。おっと、この季節は涼しく迎えてくれるほうがいいかな? で、今日は登山の後に、けいママが時々立ち寄るチョーお勧めのカフェを紹介します。摩耶山を下山した時にはぜひ、ぜひ!
 阪急六甲と三宮を結ぶ2系統のバス沿いに位置するカフェ・ジャンティ(Cafe gentil)。この店名、優しいとか、親切を意味するフランス語だと思うのですが、まさに優しさ溢れるお店。店内は結構広くて、お菓子やお茶の販売コーナーもあり、窓際の席からは、庭先のグリーンが風に揺れるサマを眺められます。Photo_12
 注文したメニューを待つ間に、山で疲れた体をクールダウンさせ、ほっと一息・・・ カフェタイムに訪れたなら、絶対シフォンケーキのセットを! ふわふわの食感と、控えめな甘さはホントに絶品! 心込めて作られてるって感じが伝わって来ます。定番のコーヒーもいいけれど、この季節はジンジャーエールもいいいですよ。Photo_13すりおろしたジンジャーがほどよい加減で入ってます。
 この日はランチタイムだったので、ひろパパは牛すじカレー&サラダのセット、そしてけいママはピラフ&サラダのセットをオーダー。かわいいお皿に盛られたサラダのドレッシングは胡麻の風味。そして定番メニューは奇をてらうことなく、ていねいに作られていて、それこそがこのカフェの心地よさ、魅力につながっているって感じ。Photo_14店内に置かれている雑誌や、壁にかかっている写真にも、ジャンティアという名にマッチしたオーナーの人柄がしのばれます。
 「どうぞ、ごゆっくり・・・」「あ、はい・・・」って、ホントに毎度、毎度長居してしまいます。
 チョースペシャルってわけではないのだけれど、小さな幸せをポツポツ感じる山歩き&カフェの一日。日暮れてぽっとオレンジ色の夕焼けを見上げる時、リピートを誓うんですよね。また山行くぞ! またあのカフェ行くぞ!って。

 カフェ・ジャンティ(Cafe gentil)
 〒657-0817 神戸市灘区上野通7丁目5-18
 Tel 078-767-3355
 8:30~18:30
 月曜定休

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2013年8月 7日 (水)

モダン石庭、夕焼けハウス

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 小学生のころ遠足で大阪城へ行ったとき、この石垣の大きな石は小豆島から運んできた、と教えてもらいました。そう、小豆島は醤油の島、オリーブの島、そして石の島でもあります。島内のいたるところで石垣を見かけます。石組みのデザインもさまざまで、さすが石と親しく暮らしてきた様子がうかがえます。
 三都半島の神ノ浦にあるジェームズ・ジャックの作品「夕焼けハウス:言語が宿る家」。狭い路地を登っていくと、ちょっと緑がかった薄い石を斜めにヘリンボーンのように積み上げた石垣の上に、黒い焼き板と白木の組み合わせで美しい円弧を描く建物が見えてきます。これが夕焼けハウス。なるほど、沈む夕日に見えます。
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 ここはかつて集落の人たちの休憩所や宴会の場として使われていたけれど、いまは利用されていない。この小屋を再生して、また人々が集える場にしたいという作家の思いがカタチになりました。地元で産出される白っぽい花崗岩と黒っぽい玄武岩を使った前庭もおもしろい。良く見かける日本庭園の石庭とはちょっと趣が違って、プリミティブでありながら原初的なエネルギーを強く感じます。ストーンヘンジなどヨーロッパ先史時代の謎の巨石文化のような、と言えば近いでしょうか。
 庭に敷き詰められた石の裏や建物内部の土壁の下には、集落の人たちの想い出や夢、希望や悩みが書き込まれているという。表からは見えないけれど、住民がここに集ったとき、言霊となって感応する大切なスピリチュアル・スペースとなればいいですね。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
夏:7月20日(土)~9月1日(日)
秋:10月5日(土)~11月4日(月・祝)

 

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2013年8月 5日 (月)

小豆島と言やぁオリーブじゃねーか

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 小豆島の醤油は400年の伝統で有名ですが、戦後は(もうずいぶん経ちましたが・・・)オリーブも有名になり、いろんな特産品づくりを進めています。オリーブオイルは当然のこと、化粧品や加工食品、お菓子まで多種多様。島内にはオリーブ畑が多く、一般の住宅の庭や生垣にもオリーブが植えられているほど。そこで今回はオリーブにちなんだポップでキュートなアート作品をご紹介しましょう。醤の郷のオリーブ畑の中に立っている清水久和の立体。作品名は「オリーブのリーゼント」です。
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 ご覧いただくだけで、何の説明も不要。作品名「オリーブのリーゼント」って、そのままでしょ! このバカバカしさ、突き抜けたナンセンス。あっけらかんとしたユーモアに感動さえ覚える素晴らしいアートです。顔をグリーンにしようなんて思わなくてよかった。そんなことしたら理屈っぽいだけで、この良さがなくなってしまう。
 「おとなしくしてりゃいい気になりやがって。オリーブってオメエらに使われてるだけじゃネー!」と、ツッパル可愛さ。ちょっと自意識過剰のオリーブでした。いやホント、こんな作品が現れるとは日本のアートもずいぶん進歩しましたネ。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
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2013年8月 3日 (土)

醤油の島の、醤油アート

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 小豆島は400年の伝統をもつ醤油造りで有名です。なかでも「醤の郷(ひしおのさと)」と呼ばれる一帯は13社もの醤油蔵が林立し、歩いていてもそこら中から醤油を醸造する匂いが漂ってくる。そんな特別な地域にあるシンボリックな建物、・旧醤油会館には、コミュニティデザイナーの山崎亮(studio-L)が島の人たち350人と作り上げた驚きのインスタレーションが展示されている。Photo_9お弁当に入っている赤いキャップの小さな醤油入れの容器、これをタレ瓶と呼ぶそうですが、醤油の濃度を変えて詰め、濃い色から薄い色まで規則正しく並べることによってきれいな色のグラデーションの壁面をつくっています。この色味にどこか温かみを感じるのは、我々の心の奥までしみこんでいる醤油の色だから、きっと。
 それにしてもあのチープなタレ瓶が、こんな美しく豊かなアート作品に! 使った数はなんと8万個。アクリル板にきちんと貼り付け、バックライトで裏から照明されている。とてつもない根気と労力が要ったことでしょう。「アーティストをしのぐ作品を作ろう!」をスローガンにがんばったという住民の皆さまに、心からの敬意を表します。

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 会場の旧・醤油会館には古い記憶と懐かしい道具類が詰まっています。各銘柄の商標を染め抜いた藍染の前掛けや醸造樽など、それだけで十分おもしろいやん、アートやん!と思わせるものがどっさり保存されている。建物の近所は焼き板塀の醤油蔵が続く趣のある街並み。醸造の香りをかぎながら散策していると、この独自の文化を大切に守っていかないとなぁとつくづく思う。そして、そんな地域の独自性は日本全国各地にあるはずです。
 この島に足を運んでそんなことを考えた、ということは、アートの力で地域の活性化を図りたい瀬戸内国際芸術祭の主催者の思うツボじゃないですか。まぁ、ショウユーこと。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
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2013年8月 1日 (木)

ビートたけし×ヤノベケンジ

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 ビートたけしが構想したプランをヤノベケンジがアレンジして制作した作品「ANGER from the Bottom」。坂手港から集落を抜け上り坂を歩いて約10分のところにあります。大きな古井戸の底から、とどろく音とともにゆっくりせり上がってくるのは大魔神か怪獣か、それとも邪悪な宇宙人か。ピカピカに光る金属でできた頭部にギョロリとむいた赤い眼。大きな口からは水を吐いている。しかも頭には斧が突き刺さっているではありませんか! 黒いうろこのような、あるいは海藻のようなものが体一面を覆った身の丈5~6mのおどろおどろしい化け物。
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 これが9時、10時、11時・・・と一時間に一回、姿をあらわす。出現している時間は、わずか3~4分。うまく時間を調整していかないと、暑いなかじいーっと待つことになる。そんなことをしていたら、それこそ熱中症の危険がありますよ。
 この作品は、昔からここに棲む地霊的ゾンビがときどき出現しては村人を脅かす、という物語を創造したらしい。でもこの化け物、不気味なんだけどちょっとかわいくユーモラスなところがする。特に井戸の中に戻っていくとき、すこし頭を垂れてお辞儀しているようでしおらしい。まるで「お騒がせして、失礼いたしましたー」と謝っているかのようでした。土俗的でSF的なチョイワル悪霊に、会いに行ってください。

アートをめぐる旅
瀬戸内交際芸術祭 2013
夏:7月20日(土)~9月1日(日)
秋:10月5日(土)~11月4日(月・祝)



 

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