塀の中のジュリアス・シーザー
兵庫県立美術館で映画「塀の中のジュリアス・シーザー」を見ました。たしかシネルーブルで上映していたと思うのですが、見逃してしまったので・・・。
これはイタリアの巨匠タヴィアーニ兄弟の脚本・監督による作品で、2012年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したそうだ。ローマ郊外にある重犯罪者の刑務所では、更生を図る一環として毎年受刑囚による演劇が行われる。そして、この年の演目はシェークスピアの「ジュリアス・シーザー」。役柄を決めるオーディションから、個々の練習、演技に対する対立、現実の人間関係との葛藤などを克服し、演じる集団へと変貌を遂げてゆく。仕上げは刑務所内の劇場に一般の観客を招待して発表し、大喝采を浴びるというもの。この構成がすごくおもしろい。
「ブルータス、おまえもか」のセリフで有名なこの芝居は、シーザーが暗殺され、ブルータスも死ぬ。演じる受刑者たちは殺人や裏切り、陰謀など、自分自身のたどった人生の重い記憶とのオーバーラップに苦しみながら、より深く役柄にのめり込んでいく。そしてさらに時代を超えて古代ローマにいるかのごとく、独裁者的リーダーに従うか自由を取るかを思索し出す。彼らに「演じること」の本質を見せてもらいました。
実際の刑務所で実際の服役囚により演じられる「ジュリアス・シーザー」。二重三重に意味や時間が錯綜する物語を、カラーとモノクロをうまく使って演出した手腕はさすがタヴィアーニ兄弟です。ちなみに主演したブルータス役の受刑者は、その後出所してホンマモノの俳優になったとエンドロールで紹介がありました。それにしてもこんなに芸達者をそろえた刑務所なんて、イタリア以外にはありえないと思います。
塀の中のジュリアス・シーザー
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