エル・グレコより宮永愛子
エル・グレコ展を観に中之島の国立国際美術館に行ってきました。プラドでたくさんグレコの作品を観て来たばかりなので、同じようなテーマのものが多いなぁと感動はいまひとつ。でも400年前に作家の個性をこれだけ表現したということは、とてもすごいこと。まだ芸術という概念がない時代に、一足早く近代に踏み込んでいた感じがします。とはいうものの、エル・グレコは予想通りのおもしろさ、それ以上でも以下でもない、ちょっと平凡ないい展覧会という評価です。情報がいっぱいあふれるこの時代、昔の作品は損をしますね。教科書で見たことがある、テレビで見かけたぞ・・・ではビビッと電気が走る出会いの感動なんてありえません。「これがホンモノだ」と追体験するのみ。いいことなのか、悪いことなのか。
だからおもしろいと感じるのは、どうしても現代作家の展覧会になります。この日も別のフロアでやっていた宮永愛子さんの展覧会が大当たり。宮永さんは虫除けに使うナフタリンで作品を作っている若手アーティストです。靴もビンも蝶も、あるかないか存在が希薄な半透明の結晶でできています。まるでセミの抜け殻のように。そしてナフタリンは常温で昇華するので、どんどんカタチが崩れ無くなっていく。キンモクセイの葉の葉脈だけを無数に集めて作った、巨大なタペストリーのような作品も興味深い。それらには絶対的なもの、不変のものなんてない、すべては時間とともに変化していくのだ、という哲学が感じられる。人類がつくりあげた文明が行き詰まり、未来に希望が見いだせない現代。静かではかないけれど深く心にしみる展覧会です。
国立国際美術館
宮永愛子 なかそら - 空中空 -
2012年10月13日(土)〜12月24日(月)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント