再びゲルニカに対面す
22年ぶりにピカソのゲルニカを見るため、AVEに乗って日帰りでマドリードへ。朝出て、夜帰る。まるで現役時代に戻って新幹線で東京へ日帰り出張するみたい。アトーチャ駅から歩いて5分。ソフィア王妃芸術センターへ。ここは20世紀の近現代美術を中心にコレクションするとても素晴らしい美術館です。ダリやミロも、もちろんピカソも。
じつは22年前にゲルニカを見たのはこの場所ではありません。そのころプラド美術館の裏に、プラド美術館別館(ゲルニカ館)という専用の施設がありました。そこには毎日毎日ピカソが描き続けた、泣く女の、闘牛の牡牛の、闘牛士の、いななく馬の・・・、数百枚ものデッサンが展示され、それらを通路を歩きながら見てきた最後に広い部屋に出る。そこにあの大作「ゲルニカ」がドーンと見える、という仕掛けになっていました。そこはゲルニカただ一点を見るために、すべての意識を集中させる美術館。モノトーンの画面がどれだけ豊かな色彩を感じさせるられるか。それぞれの部分がいかに想像力を刺激させられるか。長い間その前に無言で立ち尽くしていました。このとき絵画の持つ本当の力を教えてもらったゲルニカが、私の中で最高の絵画作品になったのです。
スペイン内戦時代、ナチスの無差別爆撃に抗議して描かれたと言われるゲルニカ。フランコ総統が亡くなってスペインが民主体制に変わったあと、1981年にMoMAから返還されました。22年前に見た当時、まだゲルニカはプラド別館で防弾ガラスで覆われていました。内線から続く対立がおさまっていなかったのか、政治的な意味合いの強いこの作品は破壊される危険があったということでしょう。今はもうソフィア王妃芸術センターでガラス越しではなく鑑賞できる。平和になったのはいいことだけど、ゲルニカもほかのアート作品と同列になったかと思うと、ちょっと残念な気がします。でも展示方法は前ほど感動的ではないにせよ、この絵がすごいのに変わりはありません。
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