六甲ミーツ・アート2012 その4
今年のミーツ・アート、目につく作品に「透明」でくくられるものが多い。視覚に訴えるのが美術なのに、透明=見えない作品というのはどういうことか。それは透明のヒモや向こうが透けるビニールを素材に多用している作品、ということです。ひところ鏡を使った作品が多かったですよね。鏡は実像と虚像を逆転したり、実際の風景の中に虚像をもぐりこませたりして、私たちの感覚を揺さぶる新しい見え方を提示しました。
では透明(あるいは半透明)は何を表そうとしているのでしょうか。中川洋輔さんと藤原直矢さんという建築を専攻する二人が作った「霧がつくる輪郭」は、空間を透明なビニールひもで区切っただけの作品。建築とは空間を区切って別の空間を生み出す行為だと思いますが、この作品の場合は区切り方があいまいで、うっかりすると見逃しそうになる。でもそこには視覚的物理的な境界とは違って、実は精神的な境界とでも呼ぶべきものが存在する、そしてそれこそが建築空間を作る本質ではないか、と思わせる。もしかしたら作者は建築だけではなく、社会に様々な形で存在する差別や偏見を形作る「境界」も、ただ内と外を隔てる透明のヒモにすぎないと主張しているのかもしれない。
木村幸恵さんの「クリスタル・オーガン」は透明樹脂やテグスなどで作られている。階段や踊り場、廊下や室内まで使った巨大なインスタレーションです。何もないようでいて何かが幽霊のように存在している。存在しているけれど向こう側が透けて見える。見えるものこそが実態だ、思い込んでいる私たちの常識に挑戦してくる。たとえば地面を這うアリが2次元の認識しか持たないとすると、人間は時間を含めた4次元の認識を持つ。では5次元や6次元の認識を持つ生命体が私たちを見た場合、なんと幼稚ななんと進化の遅れた下等な生物、と思うかもしれない。つまり「透明」で視覚を超えたとんでもない高次の概念を表現しているのだ、と思う。見えない・・・それは存在しない、とは違って別種の世界を強く想像させる手段なのだ。
六甲ミーツ・アート
芸術散歩 2012
2012年9月15日(土)~11月25日(日)
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