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2012年9月27日 (木)

ヒヤシンス・ブルーの少女

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 先日ご紹介した「ターバンを巻いた娘」は、まさしくフェルメールの代表作を意図して描かれた物語でした。一方今日ご紹介する「ヒヤシンス・ブルーの少女」は、フェルメールの架空の名画を題材としています。
 縫い物の途中で手をとめ、窓から外を見ている少女・・・ 真珠のような目、蜂蜜色の頬、かすかに開いた口、そして少女が着ているスモックは、咲き初めたばかりのヒヤシンスのような濃い青だった。たとえ描き手がフェルメールだと証されなかったとしても、読み手は「ああ〜」と、納得し、そのミステリアスな世界にどんどんと引き込まれて行く。
 1枚の名画は、人々の感嘆の中で輝き続けながら、さまざまな所有者の手に渡って行きます。この物語がとても魅力的である一つの所以は、物語が歴史をさかのぼってゆくという、構成の妙にあると思います。
 現在からナチスの時代へ、さらに19世紀始めへ、オランダが歴史的な洪水にみまわれた1700年代へ、さらに1670年頃のデルフトに至って、その絵が描かれる瞬間へと、息を呑むほどの展開!
 それにしても「名画を所有する」と言う行為には、どんな意味があるのでしょう? いえ、本書に登場する人々が「ヒヤシンス・ブルーの少女」を手に入れた時はまだ、それが名画なのだという固定観念は少しもなかったのです。彼らはただその絵を一目見て感嘆し、我が身のそばに置きたいと願った・・・ そこには壁に飾られた絵を鑑賞するという至福の時間と共に、災害や、戦争や貧困といった厳しい現実社会がありました。そんな人々の営みの中で1枚の絵は時を重ね、やがて全世界を魅了する名画と呼ばれるようになる。
 って、どっこい! 「ヒヤシンス・ブルーの少女」は実在する作品ではなかったんだ・・・いやいや、その生涯に30数枚しか残さなかったというフェルメールの作品を、まさしくこの物語のようにひっそりと、人知れず所有する人物が居るのでは? そしてそれは、幸せな現実なのかどうか・・・ 深いブルーの闇の世界に誘ってくれるような不思議な名著。あなたもぜひ!
 そしてもうすぐ神戸にやって来るフェルメールをご一緒に楽しみましょう。もちろん、所有は出来ない・・・ あっは!

 ヒヤシンス・ブルーの少女
 スーザン・ヴリーランド/長野きよみ(訳)
 早川書房

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